著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、韓国です。

掲載誌:Current Developments in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:何を「責任」と考え、それが食事づくりの時間とどう関わるか

家庭で用意する食事は外食に比べて健康的な傾向があるとされ、食生活を改善する手段のひとつと考えられています。しかし、買い物や調理、後片付けを含む食事の準備にはそれなりの時間がかかります。仕事や子育てなど、ほかにも欠かせない用事が多ければ、食事の準備に回せる時間は限られてしまうかもしれません。

この研究チームは、二つの問いを立てました。一つ目は、米国の成人が日常生活のどの活動を「責任」、つまり仕事や役割、法的な義務として避けられないものと考えているのかという問いです。これまでの研究は日常の活動を「必要な活動」「約束された活動」「自由な時間」などに分類してきましたが、その分類が実際の人々の感覚と合っているかは確かめられていなかったと著者らは述べています。二つ目は、食事以外の責任に使う時間が多いほど、食事の準備に使う時間が少なくなるのかという問いで、著者らはそうした関連があると予想しました。

調べたこと:独自の全国調査と、米国の生活時間調査の組み合わせ

まず研究チームは2024年秋にオンラインで全国調査を行い、3999人から回答を得ました。回答者の75%は子どものいる世帯でした。回答者には「責任」の定義を示したうえで、さまざまな日常の活動について、成人一般にとって責任にあたるかどうかを「はい・いいえ」で答えてもらいました。

次に、米国労働統計局が支援する全国規模の生活時間調査(ATUS)と、その食と健康に関する追加調査のデータを使いました。この調査では、回答者が前日の1日をどう過ごしたかを日記形式で記録します。研究チームは2014〜2016年と2022〜2023年のデータを用い、家庭の食事づくりを主に、または部分的に担っている成人を分析対象としました。食事の準備時間には、調理や盛り付け、台所の片付け、食料品の買い物とそのための移動を含めました。

「食事以外の責任」としては、全国調査で子どものいる人といない人のそれぞれ過半数が責任と答えた活動をまとめました。食事と軽食の準備も9割以上が責任と答えましたが、これは分析で調べる側の時間なので、ここからは除いています。そのうえで、食事の準備をするかどうかと、した場合にどれだけ時間をかけるかを分けて扱う統計手法を使い、年齢、収入、就労状況、世帯構成などの違いを考慮して両者の関連を推定しました。

主な結果:関連ははっきりしているが、1分あたりの差は小さい

全国調査では、95%以上の回答者が、有給の仕事、家計の支払い、家計の管理、子どもの身の回りの世話を責任と考えていました。睡眠(76.4%)や身だしなみ(93.7%)も多くの人が責任とみなした一方、宗教行事への参加(35.6%)やボランティア(36.5%)を責任とした人は少数でした。子どものいる世帯は、仕事や食事の準備、子どもの世話、室内の掃除などを責任とみなす割合が高いという違いもみられました。著者らによると、買い物や飲食を責任とした点などで、既存の分類とは異なる部分がありました。

生活時間調査の平均を世帯の種類ごとに比べると、子どものいない世帯は食事以外の責任に1日約940分、食事の準備に約75分を使っていました。10代の子どもがいる世帯はどちらも最も長く、それぞれ約1092分と約96分でした。著者らは、この「責任が多い世帯ほど食事準備も長い」という見かけの傾向について、子どもの存在そのものが両方の時間を増やしているためだと説明しています。

一方、世帯の条件をそろえて比べると、食事以外の責任に使う時間が長いほど、食事の準備をする可能性も、その時間も少ないという関連が、すべての分析で統計的に確認されました。ただし大きさは控えめで、全体では責任の時間が10分増えるごとに、食事の準備時間はおよそ30秒短いという関係でした。著者らは、子どものいない世帯と10代の子どもがいる世帯の責任時間の差(約152分)に当てはめると、食事の準備時間で約7.4分、平均の約9.3%の差になると試算しています。

この関連は子どものいる世帯で大きく、10代の子どもがいる世帯では全体の約2倍でした。また、ひとり親世帯ではふたり親世帯よりも関連が弱く、責任が増えても食事の準備時間があまり変わらない傾向がみられました。責任とみなす基準を80%に引き上げた分析や、考慮しきれていない要因の影響を見積もる検討でも、結果の傾向はおおむね変わらなかったと報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、責任が増えても食事の準備時間はわずかしか減らないことから、多くの家庭が食事づくりの時間をある程度守っている一方、それ以上削ったり増やしたりする余地は小さいのではないかと解釈しています。特にひとり親世帯は、すでに最低限に近い時間で食事を用意している可能性があるとしています。

なお、この研究は1日分の記録にもとづく関連を調べたもので、責任の時間が食事準備の時間を減らすという因果関係を確定したものではありません。また、食事の質そのものは測っていません。そのうえで著者らは、家庭での食事づくりを勧める施策を考える際には、情報提供だけでなく、家族が実際に抱える時間の制約、とりわけ子どものいる家庭の事情を踏まえることが大切だと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Katelin M Alfaro Hudak(Texas A&M AgriLife Research Center at El Paso, El Paso, TX, United States)、Pourya Valizadeh(Department of Agricultural Economics, Texas A&M University, College Station, TX, United States)、Rodolfo M Nayga(Department of Agricultural Economics, Texas A&M University, College Station, TX, United States; Korea University, Seoul, South Korea)、Elizabeth F Racine(Department of Nutrition, Texas A&M University, College Station, TX, United States; Texas A&M AgriLife Research Center at El Paso, El Paso, TX, United States)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Katelin M Alfaro Hudak, Pourya Valizadeh, Rodolfo M Nayga, et al. The Weight of Responsibilities: Time in Responsibilities and in Food Preparation. Current Developments in Nutrition 2026-08-02. DOI: 10.1016/j.cdnut.2026.109504. 原著ライセンス:CC BY.