骨粗鬆症は骨がもろくなり骨折しやすくなる病気で、特に高齢期の生活の質に大きく影響することが知られています。実は国や民族によって発症のしやすさに違いがあると報告されており、マレーシアでは中華系の人々が国内で最も骨粗鬆症性の大腿骨頸部骨折の有病率が高い集団だとされています。では、当の中華系マレーシア人自身は、骨粗鬆症についてどれくらい知っていて、カルシウムをどれくらい摂っているのでしょうか。今回紹介する研究は、この素朴だけれど重要な疑問に取り組んだものです。
研究でわかったこと
研究チームは、マレーシア・ペラ州カンパールに住む中華系成人205名を対象に横断研究を実施しました。調査には、骨粗鬆症の知識を測る「Osteoporosis Prevention and Awareness Tool(OPAAT)」を現地向けに調整したもの、健康信念(病気へのかかりやすさの認識や、対策への意欲など)を測る「Osteoporosis Health Belief Scale(OHBS)」、そして30項目からなる食物摂取頻度調査(FFQ)が用いられました。
結果として、参加者の骨粗鬆症に関する知識は平均6.84点(標準偏差2.92、満点は要旨に記載なし)と低めであることが示されました。健康信念については、「自分は骨粗鬆症になりやすい」と感じる認識(罹患性の認識)は低く(14.87±5.00)、「骨粗鬆症は深刻な病気だ」という認識(重大性の認識)は中程度(17.81±5.20)でした。一方で、「カルシウムを摂ることは体に良い」と感じる認識(利益の認識、22.73±3.75)や、健康行動への意欲(健康動機、21.26±3.84)は高い一方、カルシウムを摂る上での障壁の認識も15.61±4.15と一定程度みられました。
肝心のカルシウム摂取量は、1日平均530±353.2mgにとどまり、十分な量を摂取できていた参加者はわずか12%だったと報告されています。さらに分析を進めると、骨粗鬆症の知識は健康信念のほぼすべての領域と有意な相関を示し、健康信念の各領域どうしにも複数の有意な相関がみられました。カルシウム摂取量そのものも、年齢(r = 0.181)、骨粗鬆症の知識(r = 0.141)、カルシウム摂取の利益の認識(r = 0.177)、健康動機(r = 0.176)とはゆるやかな正の相関、カルシウム摂取の障壁の認識(r = −0.240)とは負の相関があったとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、マレーシア・ペラ州カンパールという特定の地域に住む中華系成人205名を対象とした横断研究であり、ある一時点での知識・信念・摂取状況の関連を調べたものです。横断研究の性質上、「知識が低いからカルシウム摂取が少ない」といった因果関係を直接証明するものではなく、あくまで相関関係が観察されたという点に留意が必要です。また対象が特定の地域・民族集団に限られているため、結果を他の地域や集団にそのまま当てはめられるとは限りません。一つの研究成果として、今後さらなる検証が期待される段階だと言えます。
まとめ
今回の研究では、骨粗鬆症の有病率が高いとされる中華系マレーシア人集団において、骨粗鬆症に関する知識が全般に低く、カルシウム摂取量も推奨とされる水準に届いている人がごく一部だったことが示されました。また、知識や「カルシウムは体に良い」という認識、健康への意欲が高いほど、逆に摂取の障壁を感じるほど、カルシウム摂取量と関連がみられたことも報告されています。著者らは、骨粗鬆症への理解を深め、健康への動機づけを高め、食生活上の実際的な障壁を減らすような取り組みが、カルシウム摂取行動を支える可能性があると述べています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:マレーシア(ペラ州)の中華系成人における骨粗鬆症の知識、健康信念、カルシウム摂取に関する横断研究(マカラ・ジャーナル・オブ・ヘルス・リサーチ・2026年08月)