著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Microbiology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、砂漠由来の放線菌Streptomyces rochei TRM68247が放つ揮発性有機化合物に、コルラ香梨の収穫後の病害を抑える働きがあるかを調べました。揮発性有機化合物とは、気体となって周囲に広がる有機物のことです。
このナシでは、貯蔵・輸送中にValsa pyriやAlternaria gaisenという病原菌による腐敗や黒斑病が問題になります。著者らは、化学薬剤への依存や病原菌の薬剤耐性を背景に、微生物が放つ成分を利用した、果実に直接触れないくん蒸による病害防除の可能性を検討しました。
何を、どのように調べたか
対象は、タクラマカン砂漠のギョリュウ属植物の根の周囲の土壌から分離したTRM68247株と、病気のナシ組織から分離した2種類の病原菌です。研究チームは、菌の形態や遺伝情報から菌株を同定し、全ゲノムを解析して、さまざまな物質をつくる遺伝子群を調べました。
病原菌の培養試験に加え、切り離したナシの枝と収穫果実を使ってくん蒸試験を行い、菌の増殖や病斑の広がりを評価しました。枝の試験では、密閉容器内で放線菌の培養物と枝を離して置き、空間だけを共有させました。比較には放線菌を接種していない培地を使い、抗菌成分のオイゲノールも参照用に用いました。
さらに、培養した放線菌が放つ成分を捕集し、ガスクロマトグラフィー質量分析で調べました。候補となる5種類の成分については、個別に病原菌の増殖を抑える働きを試験しました。
主な報告結果
研究チームは、TRM68247株が放つ揮発性成分によって、2種類の病原菌の増殖が抑えられたと報告しました。培養4日後の菌糸の増殖阻害率は、対照と比べてV. pyriで38.96%、A. gaisenで66.50%でした。A. gaisenの方が感受性が高く、8日後にも比較的高い抑制効果が続きました。
切り離したナシの枝では、14日間の処理後、V. pyriによる病害に対する防除効果が74.91%と報告されました。収穫後の貯蔵を模した果実試験では、表面の病斑拡大に対して78.99%、果肉内部への感染に対して69.11%の防除効果が得られました。これらは、無処理の対照に比べて病斑の直径がどれだけ小さくなったかに基づく値です。
成分分析では44種類の揮発性代謝物が同定されました。個別の成分試験で、2-エチル-1-ヘキサノールは両方の病原菌に強い増殖抑制作用を示しました。一方、3,5-ジ-tert-ブチルフェノールは、特にV. pyriに対して強い作用を示しました。著者らは、この2成分を主要な抗真菌成分と位置づけています。
この報告が示すこと
著者らは、TRM68247株とその揮発性成分を、コルラ香梨の収穫後病害を抑えるための候補資源と結論づけています。この研究は、微生物と果実を直接接触させず、放出される成分を介して病害を抑える方法を検討したものです。
評価には限界もあります。病害の測定は病斑の直径に基づいており、病斑の面積や腐敗組織の割合・体積、段階別の重症度指標は測定されていません。また、処理条件を伏せた評価も行われていません。個々の成分の抗菌作用は確認されましたが、成分同士が組み合わさったときの相互作用は未解明です。
原著論文の著者・所属:Yi Huang Chen(School of Life Sciences and Technology, Tarim University)、Chao Wen Liu(School of Life Sciences and Technology, Tarim University)、Jin Duo Zhao(School of Life Sciences and Technology, Tarim University)、Tian Cai Wang(School of Life Sciences and Technology, Tarim University)、Yu Xin Zhang(School of Life Sciences and Technology, Tarim University)、Wei Huang(School of Life Sciences and Technology, Tarim University)、XiaoXia Luo(School of Life Sciences and Technology, Tarim University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yi Huang Chen, Chao Wen Liu, Jin Duo Zhao, et al. Volatile organic compounds from Streptomyces rochei TRM68247: fumigant biocontrol against postharvest diseases of Korla fragrant pear and identification of active antifungal components. Frontiers in Microbiology 2026-10-06. DOI: 10.3389/fmicb.2026.1930527. 原著ライセンス:CC BY.