日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

豆腐は日本の食卓に長く根づいてきた大豆加工食品ですが、その豆腐づくりを支えてきた製造現場は今、静かに縮小を続けています。2025年に開催された日本食品科学工学会第72回大会の研究ワークショップ「大豆」では、この状況を踏まえたうえで、豆腐研究のとらえ方そのものを見直す議論が行われました。本記事は、その内容をまとめた総説論文を紹介するものです。

本論文は日本主導の研究として位置づけられます。著者のNakamori氏はフジ油脂株式会社(FUJI OIL CO., LTD)に所属しており、本論文は同著者単独によるものです。

豆腐づくりの現場に何が起きているのか

論文では、日本国内の豆腐製造施設の数がおよそ2000にまで減少していることが指摘されています。豆腐は日本の食文化に欠かせない存在であり続けている一方で、この製造施設数の減少は業界にとって大きな転換点であると論文は位置づけています。著者は、こうした構造的な変化が、豆腐研究における新しい方向性の必要性を示していると論じています。

『つくり方』から『設計』へという発想の転換

このワークショップで議論の軸となったのは、豆腐研究を従来の「製造技術」としての視点から、「プロセス設計」という視点へと移していく必要性です。豆腐を単なる伝統食品としてではなく、構造と機能があらかじめ明確に定義された「タンパク質ゲル素材」として改めて評価しようという考え方が示されています。

この視点の転換を実現するためには、大豆タンパク質がどのような構造を持ち、どのように凝固するのかという分子レベルのふるまいを深く理解することが欠かせないと論文は述べています。分子レベルの知見を、実際の製造工程の合理的な設計へと結びつけていくことが重要だという考え方です。ワークショップでは、豆腐が固まる仕組み(凝固メカニズム)に関する分子レベルの解析について、近年得られた知見と、それを応用していく可能性が議論されました。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この論文は、学会のワークショップで行われた議論をまとめた総説であり、新たな実験データを報告するものではありません。豆腐を材料科学の観点から捉え直し、構造設計の対象として扱うという方向性は、大豆加工に関する研究を進めるだけでなく、新しい食品としての価値を生み出すことや、国産大豆の利用拡大にもつながることが期待されると論文は述べていますが、これらはいずれも今後の研究の方向性として示されたものであり、具体的な成果や効果が実証されたものではない点に注意が必要です。

まとめ

本論文は、豆腐製造業を取り巻く構造的な変化を背景に、豆腐研究を「製造技術」から「プロセス設計」へと捉え直す視点を提示した総説です。大豆タンパク質の構造や凝固メカニズムの分子レベルでの理解を深めることが、今後の食品設計や国産大豆の利用拡大につながる可能性が示唆されていますが、これは一つの研究ワークショップの議論をまとめたものであり、結論が確定したわけではありません。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Toshihiro Nakamori. Revisiting research on soybean-based processed foods in the soybean research symposium: Advancing tofu science and expanding food design applications. 日本食品科学工学会誌 (2026). DOI: 10.3136/nskkk.nskkk-d-26-00014. 原著ライセンス: cc-by-nc-sa.