著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
脂肪肝というと『お酒の飲み過ぎ』や『食べ過ぎ』のイメージが強いかもしれません。しかし近年、飲酒がなくても代謝の乱れをともなって肝臓に脂肪がたまる状態は「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」と呼ばれ、注目されています。今回紹介する研究は、この脂肪肝と、普段の『水分の摂り方』との関係を、高齢者を対象に調べたものです。食事の中身だけでなく、水やお茶、甘い飲み物をどれだけ、どんな組み合わせで飲んでいるかという視点から脂肪肝を捉え直した点が特徴です。
研究チームは中国・三亜大学(University of Sanya)に所属しています。
どのように調べたのか
研究の対象は、地域の健康センターを通じて集められた65歳以上の地域在住高齢者876人です。参加者には平日2日と休日1日の計3日間、飲んだ飲み物の種類と量を記録してもらい、日々の水分摂取のパターンを把握しました。あわせて、起床直後の尿(早朝第一尿)の浸透圧を測定し、体の水分状態(体が水分不足気味かどうか)の指標としました。脂肪肝の有無は超音波検査による肝臓の脂肪沈着の確認と、代謝機能障害の診断基準を組み合わせて判定されています。さらに、どのような飲み物の組み合わせを好む人が多いかを統計的に分類するため、主成分分析という手法を用いて『飲み物の摂り方のパターン』を抽出しました。
研究でわかったこと
参加者の1日あたりの総水分摂取量は平均1385±355mLで、そのうち85.2%(平均1180±285mL)が水(プレーンウォーター)でした。全体の36.1%(876人中316人)がMASLDと判定されています。
年齢や性別、教育歴、身体活動量、総エネルギー摂取量、喫煙、食事性炎症指数(DII)、赤身肉・野菜・全粒穀物・果物の摂取、季節、利尿薬の使用など多くの要因を統計的に調整したうえでも、1日の水分摂取量が1500mL未満の人はMASLDのオッズが約2.31倍高いという関連がみられました。また、早朝尿の浸透圧が800mOsm/kgを超える『脱水気味』の状態にある人も、MASLDのオッズが約2.55倍高いという関連が示されています。
飲み物の摂り方のパターンとしては、主成分分析により3つの傾向が見出され、これらで摂取パターンの違いの49.9%を説明できました。その中で『甘い飲み物を好む』パターンはMASLDとの正の関連(オッズ比2.00)がみられましたが、添加糖の総摂取量を追加で調整するとオッズ比は1.76に弱まりました。一方、『基本的な水分補給(水を中心とした飲み方)』のパターンはMASLDとの負の関連(オッズ比0.67)が示されています。統計モデルとしての当てはまりも確認されており、予測の精度を示す指標(AUC)は0.782でした。
この研究の読み方・注意点
研究チームは、『甘い飲み物を好む』パターンとMASLDとの関連について、この飲み物そのものが直接脂肪肝を引き起こすというより、より広い意味での不健康な食生活や代謝リスクの目印として捉えるべきだと述べています。また、この研究はある一時点でのデータを分析する横断研究であり、水分不足がMASLDを引き起こすといった因果関係や時間的な前後関係を証明するものではありません。尿浸透圧を介した関連性を探る補助的な統計解析(5000回のブートストラップ法によるもの)についても、あくまで仮説を生み出すための探索的な分析と位置づけられており、因果関係を示すものではないと説明されています。
まとめ
今回の研究では、高齢者において水分摂取量が少ないことや、起床時の尿浸透圧が高い(体が水分不足気味である)ことが、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)とより高い頻度で同時にみられる傾向が報告されました。また、甘い飲み物を好む摂取パターンよりも、水を中心とした摂取パターンのほうがMASLDとの関連が低いことも示されています。ただしこれらはあくまで一時点の関連を示す横断研究の結果であり、水分の摂り方を変えることで脂肪肝を予防・改善できるかどうかを直接証明したものではない点に注意が必要です。
原著論文の著者・所属:Guotian Lin(School of Tourism and Health, University of Sanya, 191 Xue Yuan Road, Jiyang District, Sanya, 572022, China)、Yingzi Liang(School of Tourism and Health, University of Sanya, 191 Xue Yuan Road, Jiyang District, Sanya, 572022, China)、Qi Wang(School of Tourism and Health, University of Sanya, 191 Xue Yuan Road, Jiyang District, Sanya, 572022, China)、Miaomiao Cui(School of Tourism and Health, University of Sanya, 191 Xue Yuan Road, Jiyang District, Sanya, 572022, China)、Qingqing Wang(School of Tourism and Health, University of Sanya, 191 Xue Yuan Road, Jiyang District, Sanya, 572022, China)、Lingyun Qu(School of Tourism and Health, University of Sanya, 191 Xue Yuan Road, Jiyang District, Sanya, 572022, China. [email protected])
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Guotian Lin, Yingzi Liang, Qi Wang, et al. Associations of fluid intake patterns, hydration status, and metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease (MASLD): a cross-sectional study in older adults. サイエンティフィック・リポーツ (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-66319-1. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.