加齢に伴って腸内細菌のバランスが崩れる『dysbiosis(ディスバイオーシス)』が起こりやすくなることが知られています。この状態では、腸内細菌がつくり出す有害な代謝物が増えやすくなるとされ、高齢者の健康維持を考えるうえで、こうした物質をどう減らすかが関心を集めています。今回、レジスタントデキストリンとイヌリンという二つの食物繊維系素材を組み合わせることで、腸内細菌による有害代謝物の産生に変化が見られるかを調べた研究が、フロンティアーズ・イン・ニュートリション誌に2026年09月に掲載予定です。
研究を行ったのは、日本の森永乳業株式会社 研究本部 ヘルスケア&ニュートリション研究所に所属するYoshida氏らのグループです。
どのような方法で調べたのか
研究チームは、高齢者8名から採取した便を用いて、試験管内(in vitro)で発酵させる実験を行いました。便のサンプルは、レジスタントデキストリンを加えた条件、イヌリンを加えた条件、両者を組み合わせた条件、そして何も加えない対照条件の4通りで発酵させ、それぞれの発酵液に含まれる代謝物をメタボロミクス(代謝物を網羅的に分析する手法)によって比較しました。さらに、有害代謝物の一つであるトリメチルアミンの産生については、その前駆物質となるコリンを添加した培地を使った発酵実験でも別途確認しています。
何がわかったのか
メタボロミクス解析の結果、レジスタントデキストリンとイヌリンを組み合わせた条件では、対照条件と比べて、デオキシコール酸、キヌレニン、トリメチルアミンという3種類の代謝物の産生が減少する傾向が見られたと報告されています。
また、コリン添加培地を用いてトリメチルアミンの産生量を確認したところ、組み合わせ条件のほうが、レジスタントデキストリンまたはイヌリンをそれぞれ単独で加えた条件よりも、トリメチルアミンの産生量が低く抑えられた便サンプルの割合が高かったことが示されました(8検体中3検体)。
この研究をどう読むか
この結果は、レジスタントデキストリンとイヌリンを組み合わせることで、高齢者の腸内細菌による一部の有害代謝物の産生を抑えられる可能性を示唆するものです。ただし、この研究は試験管内での発酵実験であり、対象となった便サンプルも8名分にとどまります。実際にヒトが摂取した場合の体内での効果を直接示したものではなく、一つの研究として結論が確定したわけではない点には注意が必要です。
まとめ
今回の研究では、レジスタントデキストリンとイヌリンという二つの食物繊維系素材を組み合わせることで、高齢者の便を用いた試験管内発酵実験において、デオキシコール酸やキヌレニン、トリメチルアミンといった代謝物の産生が減少する傾向が示されたと報告されています。今後、より大規模な検証やヒトを対象とした研究が積み重ねられることで、腸内環境と加齢に関する理解がさらに深まることが期待されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Kazuma Yoshida, Takeshi Matsubara, Shunsuke Morita, et al. Combined effects of resistant dextrin and inulin on the reduction of harmful metabolites during in vitro fecal fermentation in older adults. フロンティアーズ・イン・ニュートリション (2026). DOI: 10.3389/fnut.2026.1909212.