この研究は、エジプト、シリア、スペインの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food science & nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
イチョウ葉、キバナオウギ(オウギ)の根、タンジン(丹参)の根は、それぞれ古くから利用されてきた植物として知られています。これらの植物には様々なフィトケミカル(植物由来の機能性成分)が含まれていますが、複数の植物を組み合わせることで単独よりも強い効果が得られる可能性や、環境に配慮した抽出方法をどう最適化するかは、研究が進められている分野です。今回紹介する研究では、この3種類の植物を組み合わせた抽出物について、抽出方法の最適化から抗酸化性などの機能性、さらに消化管でどれだけ成分が体に取り込まれやすい状態を保てるか(バイオアクセシビリティ)までを調べています。
研究でわかったこと
研究チームはまず、イチョウ葉・キバナオウギ根・タンジン根を様々な比率で混ぜ合わせ、総フェノール含量(ポリフェノール類の総量の指標)を比較しました。その結果、1:1:2の割合で混合したものが、単独の植物より強い相乗効果を示したと報告されています。
次に、環境負荷の少ない抽出技術として、プローブ型超音波抽出、バス型超音波抽出、マイクロウェーブ抽出の3つの方法を比較し、応答曲面法という統計手法を使って抽出条件を最適化しました。その結果、プローブ型超音波抽出が最も高い総フェノール含量を示し、最適条件下での実測値は342.73 mg GAE/gだったとされています。
この最適化された抽出物(論文中では「優勢な相乗的抽出物」と呼ばれています)をHPLC分析したところ、ロスマリン酸(249.58 μg/mL)、クロロゲン酸(135.59 μg/mL)、カテキン(36.93 μg/mL)が主なフェノール化合物として検出されたとのことです。
さらにこの抽出物について、試験管内(in vitro)でいくつかの機能性が調べられています。抗酸化活性はDPPH法・ABTS法・FRAP法・TAC法という複数の指標で確認され、いずれも比較的強い活性を示したと報告されています。また、炎症に関連するタンパク質変性を抑える働きや、糖の分解に関わる酵素であるα-アミラーゼを阻害する働きも確認されたとされています。加えて、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性(阻止円30mm)や、PC3細胞・MCF-7細胞という2種類のがん培養細胞に対する中程度の細胞毒性活性も観察されたとのことです。
最後に、人工的に消化管の環境を再現した実験(模擬消化試験)が行われ、総フェノール類・総フラボノイド類は消化の各段階を通じてある程度体に取り込まれやすい状態(バイオアクセシブル)を保っていたものの、フェノール類は腸管相に向かうにつれて徐々に減少する傾向が見られたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、細胞や試験管レベルでの実験(in vitro)や模擬的な消化実験に基づくものであり、実際にヒトや動物の体内でどのような効果があるかを直接示したものではありません。論文の著者らも、今後さらなる動物実験などによる検証や、実際の食品への配合方法についての研究が必要だと述べています。つまり、この抽出物が特定の病気の予防や治療に直接役立つと結論づけられたわけではなく、機能性食品や栄養補助食品の候補として今後の研究が期待される段階にあるといえます。
まとめ
イチョウ葉・キバナオウギ根・タンジン根を組み合わせた抽出物は、環境に配慮した抽出技術によって高いフェノール含量を得られ、抗酸化・抗炎症・酵素阻害・抗菌などの多様な機能性が試験管レベルで確認されたことが今回の研究で示されました。また、消化管内でも成分がある程度保たれることも示唆されています。今後、動物実験などによる検証が進めば、機能性食品への応用可能性についてさらに理解が深まることが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):グリーン抽出法から腸管バイオアクセシビリティまで:機能性食品応用に向けたイチョウ、キバナオウギ、タンジンのフィトケミカルの相乗的可能性(フード・サイエンス・アンド・ニュートリション・2026年06月)
著者:Mohamed Ibrahim Younis(Food Science Department, Faculty of Agriculture Cairo University Giza Egypt)、Y.I. Sallam(Food Science Department, Faculty of Agriculture Cairo University Giza Egypt)、K Mahmoud(Food Technology Department National Research Centre Giza Egypt)、Rawaa H. Tlay(Department of Food Science, College of Agricultural Engineering Damascus University Damascus Syria)、M. Ali Aboudzadeh(POLYMAT and Department of Applied Chemistry, Faculty of Chemistry University of the Basque Country UPV/EHU Donostia‐San Sebastián Spain)、Tarek Gamal Abedelmaksoud(Food Science Department, Faculty of Agriculture Cairo University Giza Egypt)