ある国の人々が何をどれだけ食べているかを知ろうとするとき、私たちは食料の供給量統計、本人への聞き取り調査、血液検査などの生体指標といった、複数の異なる種類のデータに頼ることになります。しかし、これらは本当に同じ実態を映し出しているのでしょうか。サウジアラビアで公開されている栄養関連データを対象に、この問いを検証した研究がニュートリエンツ誌に2026年09月に掲載予定です。

複数の公開データを横断的に集めて比較する

この研究は、2005年から2025年の間に公表または更新された、サウジアラビア国内および国際的な公開情報源を対象に検索を行っています。対象には、公式の統計報告書、世界的な食料データベース、WHO(世界保健機関)に準拠した調査、査読付き学術論文が含まれ、検索と更新作業は2026年6月から7月にかけて実施されました。集めた情報源は、代表性(どれだけ集団全体を反映しているか)、新しさ、測定方法の妥当性、入手しやすさ、分析上の役割という観点から分類されています。この研究が主な関心を置いたのは、特定の栄養状態がどれくらいの割合で見られるかという単一の数値を導き出すことではなく、公開されている栄養関連のエビデンスがどれだけ網羅的で、解釈可能な形になっているかという点でした。

データによって異なる姿が見えてきた

この研究で整理された情報からは、データの種類によって見えてくる姿が異なることが示されています。まず、公的な国民食事摂取調査としては今なお最も主要な位置づけにあるSHIS 2013(2013年サウジ健康情報調査)によれば、果物の摂取推奨量を満たしていた人はわずか5.2%、野菜については7.5%にとどまっていたとされています。より新しいGASTAT(サウジアラビア統計庁)の健康決定要因統計2024でも、15歳以上で1日に5皿以上の果物・野菜を摂取していた人は10.2%にすぎなかったと報告されています。

一方で、同じくGASTATの食料安全保障統計2024を見ると、米、牛乳、鶏肉、卵、赤身肉、玉ねぎ、トマト、ナツメヤシの実(デーツ)といった品目について、国民一人当たりの供給量は相当な水準にあることが示されています。つまり、食料が「どれだけ国内に出回っているか」を示す供給側の統計と、「実際に個人がどれだけ食べているか」を示す摂取側の統計との間には、単純には一致しない差が存在することになります。

さらに、WHS 2019(世界保健調査2019)の生体指標データでは、高い健康リスクを示す結果が確認されています。具体的には、WHS 2019の指標定義に基づくと、高コレステロール血症に該当する人が42.6%、ヘモグロビン値が低い人が50%にのぼったとされています。これらは血液検査などに基づく客観的な指標であり、自己申告による食事調査とは異なる角度からリスクを映し出すものです。

このほか、近年の個別研究からは、飲料や糖類の摂取、青少年の食習慣、食事の質に関する追加的なデータも得られていますが、こうした研究は国全体を代表する形での食品全般の摂取量データまでは提供していない点も指摘されています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、既存の公開データを集めて横断的に整理・比較するスコーピング研究(ある研究領域の全体像を把握するための調査)であり、著者自身が新たに人を対象とした調査を実施したものではありません。そのため、示された数値はそれぞれの元となった統計・調査に由来するものであり、この研究自体が新たな有病率を測定したわけではない点に留意が必要です。また、比較対象となったデータの多くは調査年や調査方法が異なっており、SHIS 2013のように公表から年数が経過している情報も含まれています。著者は、個人単位での摂取量データと生体指標に基づく測定を組み合わせた、統合的な栄養サーベイランス(継続的な監視体制)の必要性を今後の課題として挙げています。なお、著者はサウジアラビアの大学に所属していますが、この所属自体から研究結論を推測すべきではありません。

まとめ

この研究は、サウジアラビアで公開されている栄養関連データが、食料供給、自己申告の食習慣、生体指標という異なる側面をそれぞれ部分的に映し出しており、それらが必ずしも一致した実態を示すわけではないことを示唆しています。果物・野菜の摂取が推奨量に達していない人が多い一方で、供給量自体は多い品目もあり、さらに血液検査で見るとリスクが高い人が少なくないという、データの種類によって異なる姿が浮かび上がっています。これは一つの研究であり、栄養状態の全体像について確定的な結論を示すものではない点に留意しつつ、今後の統合的なデータ整備の議論の参考として捉えるとよいでしょう。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Reham I. Alagal. Assessment of Nutritional Risk Representations in Publicly Available Data in Saudi Arabia: A Triangulated Scoping Study. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18172888. 原著ライセンス: cc-by.