この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:食事パターン同士を同じ土俵で比べる

食事とがんの関係は、これまで主に個々の食事指標と特定のがんとの組み合わせごとに調べられてきました。そのため、異なる食事パターンを互いに直接比べることは難しいままでした。著者らは、同じ集団で同じ調整方法を用い、指標の尺度もそろえたうえで、食事パターンによって各部位のがんとの統計的な関連の向きや強さが異なるかを検討しました。

研究チームは目的を三つ挙げています。一つ目は、部位別のがんと有意に関連し、追加の検証でも安定して残る「食事指標とがんの組み合わせ」を見つけることです。二つ目は、その関連ががんへのかかりやすさを示す遺伝的リスクの違いによって変わるかを調べることです。三つ目は、同じがんについて、どの食事指標で関連がより強く見えるかを比べることです。

何を調べたか:11万人超のデータと6つの食事指標

研究には、英国の大規模な健康データベース「UKバイオバンク」の参加者のうち、24時間分の食事内容をオンラインで振り返って答える調査に2回以上有効に回答し、開始時点でがんと診断されていなかった11万8056人が含まれました。複数回の回答の平均を、ふだんの食事の目安として用いています。追跡期間の中央値は約13年でした。

評価した食事指標は6種類です。低炭水化物の食べ方への近さを示すDRLCD、地中海食への近さを示すaMED、健康的な食事全体の質を示すAHEI-2010、高血圧予防を目的とした食事法への近さを示すDASH、食事に含まれる抗酸化に関わる栄養素の量を合成したCDAI、そして食事が炎症を促す方向に働く可能性を推定するE-DIIです。E-DIIは値が高いほど炎症を促す食事とされるため、本研究では向きを反転させ、ほかの指標と同様に「値が高いほど望ましい方向」になるようにそろえました。

各指標は平均と標準偏差を用いて標準化され、指標が1標準偏差(集団内でのばらつきの目安となる幅)高いごとに、がんの発生リスクがどう変わるかを「ハザード比」で示しています。ハザード比が1より小さいほど、その指標が高い人でがんの発生が少ない方向の関連を意味します。

対象は全がんと、大腸、腎臓、肺、乳房、前立腺など部位別のがんです。症例数が少なかった子宮頸がんは解析から外されました。年齢や性別、持病、喫煙、飲酒、エネルギー摂取量、体格、社会経済状況、身体活動、睡眠などを段階的に考慮した3種類のモデルで解析しました。さらに、開始直後に見つかったがんは発症前の体調変化で食事が変わった影響を受けている可能性があるため、開始から1年、3年、5年以内のがんを除いても関連が残るかを確かめ、すべてで有意なものだけを「安定した関連」としました。

主な結果:腎臓がんで最も多くの指標が関連

この基準を満たした安定した関連は11組でした。大腸がんではAHEI-2010とDASH、腎臓がんではAHEI-2010、aMED、CDAI、DASH、反転E-DIIの5指標、肺がんではAHEI-2010、aMED、反転E-DIIが、いずれもリスクが低い方向と関連していました。全がんについては、反転E-DII(炎症を促しにくい食事)のみがリスクの低さと関連していました。一方、低炭水化物の指標であるDRLCDは、どのがんとも安定した関連を示しませんでした。

例えば、DASHが1標準偏差高いごとの大腸がんのハザード比は0.892、反転E-DIIの腎臓がんでは0.843、AHEI-2010の肺がんでは0.890と報告されています。腎臓がんでは、各指標の最も高いグループは最も低いグループと比べてリスクが有意に低く、ハザード比は0.637(CDAI)から0.703(反転E-DII)の範囲でした。

遺伝的リスクとの関係では、複数の遺伝子変異をまとめた「多遺伝子リスクスコア」で参加者を3群に分けて調べました。腎臓がんでは、AHEI-2010、aMED、DASHについて、遺伝的リスクの高さによって食事との関連の強さが変わる可能性を示す有意な交互作用が見られました。大腸がんと肺がんでは有意な交互作用は見られませんでしたが、遺伝的リスクが高い群でも、大腸がんではAHEI-2010とDASH、肺がんではAHEI-2010がリスクの低さと関連していました。

同じがんの中で指標同士を比べると、全体ではDASH(大腸がん)、反転E-DII(腎臓がん)、AHEI-2010(肺がん)で最も低いハザード比が観察されました。遺伝的リスクが高い群では、DASH(大腸がん)、AHEI-2010(腎臓がん)、反転E-DII(肺がん)でした。ただし、データを繰り返し再抽出して指標間の差を確かめる比較では、いずれの差も統計的に有意ではありませんでした。著者らは、これを特定の指標が優れていることの証拠ではなく、傾向を示すものにとどまると説明しています。

この研究が示すこと

この研究は、大規模な同一集団で6つの食事パターンを同じ基準で並べ、健康的とされる複数の食事パターンが大腸がん、腎臓がん、肺がんのリスクの低さと安定して関連していることを報告しました。一方で、指標同士の差は統計的に確かめられておらず、著者らは今回の結果を「最適な食事法」を決める根拠ではなく、仮説を生み出す段階の知見として解釈すべきだとしています。また、観察研究であるため、示されたのは関連であり、食事ががんを防ぐという因果関係を直接示したものではありません。

著者:Long Gao(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Pei Feng(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Guofeng Shi(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Yu Li(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Bochen Ma(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Chenqi Zhang(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Yu Chen(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Shaonan Li(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Jingxi Hu(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Liqiang Wang(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Xiaoting Yan(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Pengliang Shen(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、XiaoMing Cao(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)、Bo Wu(Department of Urology, First Hospital of Shanxi Medical University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Long Gao, Pei Feng, Guofeng Shi, et al. Comparative associations of six predefined dietary patterns with site-specific cancer risk in the UK Biobank. Frontiers in Nutrition 2026-10-08. DOI: 10.3389/fnut.2026.1976233. 原著ライセンス:CC BY.