スーパーやコンビニで手軽に買える調理済み料理は便利な一方、塩分の多さが気になるという方も多いのではないでしょうか。長期的に塩分(ナトリウム)を摂りすぎる食生活は、様々な病気につながる可能性があるとされ、食品業界では減塩の工夫が求められています。しかし、単純に塩を減らすと「物足りない」味になってしまうのが悩ましいところです。今回紹介する論文は、こうした調理済み料理における減塩の戦略と、塩味の感じ方(知覚)を保つための仕組みについてまとめたレビュー論文です。

調理済み料理の減塩、何が難しいのか

この論文によると、現在の主な減塩方法は、食塩(塩化ナトリウム、NaCl)の一部をナトリウムを含まない塩、たとえば塩化カリウム(KCl)などに置き換える方法だとされています。ただし、こうした代替塩には好ましくない風味(雑味や苦みなど)が生じる問題があり、さらにKClを過剰に使用すること自体も健康に影響を及ぼしうると指摘されています。つまり「塩を減らす」ことと「おいしい塩味を保つ」ことの両立が、業界にとっての大きな課題だというわけです。

そこで論文では、風味を持つペプチド(アミノ酸が連なった小さなたんぱく質の断片)の活用と、新しい環境負荷の低い技術(グリーンテクノロジー)を組み合わせることが、塩味を落とさずに減塩する有望な戦略になりうると論じています。

塩味の感じ方に関わる様々な要因

このレビューでは、減塩戦略そのものに加えて、私たちが「塩味」をどう感じるかに影響する要因についても整理されています。具体的には、食品の組成(食品マトリックス)、塩基性アミノ酸、他の味やにおいが塩味の感じ方に与える影響が取り上げられているとのことです。さらに、塩味を感知する受容体の構造や、その情報が伝わる仕組み(伝達機構)についても解説されているとされています。

加えて、塩味をどのように評価・測定するかという方法論も紹介されており、「塩味を減らさずに減塩する」という目標を実現する上で現状どのような課題があるかについても議論されています。

論文では、天然の食品由来の「塩味を持つペプチド」や「塩味を増強するペプチド」を調製し、それらを新しいグリーン技術と組み合わせることが、食品産業における減塩の効果的な方法となりうる可能性が示唆されています。

この記事を読むうえでの注意点

この論文は、個別の実験によって新しい発見を報告するものではなく、これまでの研究知見を整理・総括した「レビュー(総説)」論文です。そのため、ここで紹介されている減塩ペプチドや新技術の組み合わせは、著者らが有望とみなす理論的な方向性として提示されているものであり、実際の調理済み料理でどの程度の効果が得られるかを示す具体的な実験結果ではない点に注意が必要です。今後、こうした戦略が実用化に向けてさらに検証されていくものと考えられます。

まとめ

調理済み料理の塩分は健康上の関心事である一方、単純な減塩は味の物足りなさにつながりかねません。この論文では、代替塩の課題を踏まえたうえで、風味ペプチドと新しい技術を組み合わせることが、塩味を保ちながら減塩する有効な戦略になりうると論じられています。食品業界が「おいしさ」と「健康」を両立させる方法を模索する上で、理論的な手がかりを与える一本といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:調理済み料理における減塩戦略と塩味増強知覚メカニズム:レビュー(フード・セーフティ・アンド・ヘルス・2024年07月)