富山湾に夏の便りが立つと、透き通った薄紅色の小えびが漁港に並ぶ。富山白えび(シロエビ)と呼ばれるこの小えびは、殻がやわらかく丸ごと食べられるのが持ち味で、刺身にすればほんのり透けるほど繊細な身をしている。小さな一尾ではあるが、殻ごと余さず食べられることは、この食材の持ち味の一つといえるだろう。

成分表には「富山白えび」という個別の項目はなく、ここでは近縁の小えびである一般的なさくらえび 生の値で見ていく。可食部100gあたりのエネルギーは78kcalと軽やかで、たんぱく質は16.6g。これは女性30〜49歳の推奨量50g/日の33%にあたり、小さな体のわりに主要な栄養がしっかり詰まっていることがわかる。

殻ごとだから届く、二つのミネラル

この食品で際立つのが、カルシウムヨウ素だ。カルシウム含有量は可食部100gあたり630mgで、女性30〜49歳の推奨量650mg/日の97%に達する。カルシウムは骨や歯をつくる主要な材料であり、細胞の働きにも欠かせない成分とされる。ゆでる・揚げるなど調理法によっても違いはあるが、殻までやわらかく丸ごと食べられる食材である点は、この数値の高さと重なり合う特徴といえるだろう。ただし97%という割合はあくまで可食部100gあたりで一日の推奨量と比べた値であり、耐容上限量の話ではない。さくらえびを一度に100g食べることはまずなく、料理に使う量の目安は大さじ1杯(約3g)ほどだ。上の数値は食材同士を同じ土俵で比べるための100gあたりの値であって、一食でこれだけ摂れるという意味ではない。

もう一つの主役がヨウ素で、可食部100gあたり110µg。これは同じく女性30〜49歳の推奨量140µg/日の79%にあたる。ヨウ素は甲状腺ホルモンを構成する成分で、成長・発達やエネルギー代謝に関わるとされる。カルシウムとヨウ素、性格の異なる二つのミネラルが、同じ一尾の中にそろって高い値で現れているのは面白い一致だ。海のミネラルを殻ごと閉じ込めた小さな体が、そのまま栄養の詰め合わせになっている、と考えると小えびの見え方が少し変わってくる。

一尾からはじまる食卓

富山の白えびそのものは、生の刺身や、殻ごと衣にまとわせるかき揚げが定番で、噛むほどに広がる甘みと磯の香りが夏の食欲をそそる。さくらえびもまた、殻つきのまま釜揚げにしたものが親しまれ、卵焼きに散らす、炊き込みご飯に混ぜる、冷奴やサラダにひとつまみ加えるなど、少量でも殻の香ばしさで存在感を発揮してくれる。殻ごと食べられる小えびは、日々の一皿にそっと栄養を添えてくれる。

カルシウムはビタミンDと一緒にとると吸収されやすくなるとされる。日々の食卓では、小えびや小魚を使う料理に卵や乳製品を軽く添えるくらいの感覚で十分だろう。難しく考えず、殻ごと食べられる食材を選ぶこと自体が、すでに一つの工夫になっている。

まるごと食べる、という価値

富山白えびが小さな体にカルシウムとヨウ素を高い割合で蓄えているのは、殻も身も丸ごと口にできるからこそのことだ。殻まで、一尾を余さずいただく夏の味覚は、見た目以上に働き者だと言っていい。透き通る一尾を眺めながら、その小ささの中身に思いを馳せてみると、夏の食卓がまた少し豊かに感じられるはずだ。

参考:日本人の食事摂取基準

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「カルシウム」(厚生労働省)

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。