慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、気道が慢性的に狭くなり呼吸がしづらくなる病気で、さまざまな合併症を伴いやすいことが知られています。中でも頻度が高い合併症のひとつが低栄養で、COPD患者の約20%が体重減少を経験し、それが骨格筋量や呼吸機能、生活の質の低下につながるとされています。今回紹介するのは、そうしたCOPDに伴う低栄養の実態と対応を、インドネシアの病院での一例を通して記録した症例報告です。著者はHusada病院(インドネシア)の総合診療医と臨床栄養専門医です。
どのような患者だったのか
報告されたのは49歳の男性で、呼吸困難、咳、みぞおちの痛み、発熱、食欲低下を訴えて受診しました。この患者にはCOPDに加えて肺結核の既往があり、結核の治療自体は2024年9月に完了していました。
栄養状態を調べたところ、身長185cmに対して体重はわずか42kg、体格指数(BMI)は12.27kg/m²、上腕周囲径(MUAC)は18cmで、著者らはこれを「重度の低栄養」と評価しています。一般的な成人のBMI標準値(18.5前後以上)と比べても、この数値がかなり低いことがわかります。
行われた栄養介入の中身
この患者に対しては、1日あたり1,500kcal(体重1kgあたり38kcal)のエネルギーと、1日70g(体重1kgあたり1.7g)のたんぱく質を目標とした栄養療法が開始されました。具体的には、軟らかいご飯を主食に、細かく刻んだ高炭水化物・高たんぱく(論文中でTKTPと表記)のおかずを組み合わせ、卵を1日3個追加し、亜鉛の錠剤を1日2回1錠ずつ服用する内容だったと記されています。
著者らは、こうした高エネルギー・高たんぱくの栄養療法によって栄養状態を整え、失われた筋肉量の回復を助けることを狙ったと説明しています。また、食事を軟らかい形態にしたのは、食後に呼吸が苦しくなるのを軽減し、少量ですぐお腹がいっぱいになってしまう状態を防ぎ、食事を続けやすくするためだったとしています。
この報告をどう読むか
この論文はあくまで一人の患者を対象とした症例報告であり、栄養介入の効果を統計的に検証した研究ではありません。著者らが強調しているのは、COPDに低栄養が合併した場合、早期に栄養状態をスクリーニングし、タイミングを逃さず栄養介入を行うことが、包括的な管理の重要な一部になるという点です。あわせて、体重や栄養状態、食事の摂取状況を長期的に見守っていくことが、患者のリハビリテーションや治療成績の改善を支えるために必要だとも述べられています。
1件の症例から得られた知見であるため、他の患者にそのまま当てはまるとは限らず、今回の栄養療法によって実際に体重や呼吸機能がどう変化したかについての追跡データも、この要旨・本文の範囲では示されていません。
まとめ
今回の症例は、COPDという呼吸器の病気が、気づかれにくい形で深刻な低栄養につながりうることを示しています。185cmで42kgという極端な低体重の背景には、呼吸のしづらさによる食欲低下や摂取量の減少が関わっていた可能性があり、著者らは高エネルギー・高たんぱくの食事と亜鉛補給、食べやすい形態の工夫を組み合わせた栄養管理の重要性を報告しています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Agatha Nadya Lianto, Imelda Wiradarma. Case Report: Malnutrition in an Adult Patient with Chronic Obstructive Pulmonary Disease. ジャーナル・ラ・メディヘルティコ (2026). DOI: 10.37899/journallamedihealtico.v7i4.5082.