魚を三枚におろした後のアラや内臓、ムール貝の割れた身、イカやタコの茹で汁。水産加工の現場では、こうした副産物が大量に発生しています。近年は資源の有効活用として、これらを飼料や肥料、さらには食品原料へ再利用する動きが広がっていますが、その安全性を検証した研究は多くありませんでした。背景には、こうした非従来型の副産物に対する安全基準の整備が追いついていないという事情があるといいます。この研究は、南西ヨーロッパの大西洋沿岸で得られた魚類・ムール貝・頭足類(イカ・タコの仲間)の副産物、合計24種類のサンプルを対象に、生物毒素と重金属の含有量、そして細胞への毒性影響を調べたものです。

何を、どうやって調べたのか

対象となったのは、魚、ムール貝、イカ・タコ類から得られた24種類の副産物サンプルです。研究チームはまず、貝毒として知られる海洋生物毒素の含有量を分析しました。加えて、水銀(Hg)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ヒ素(As)という4種類の重金属について、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)という手法で濃度を測定しています。さらに、ヒト肝がん由来のHepG2細胞とヒト大腸がん由来のCaco2細胞という2種類の培養細胞を用いて、細胞毒性の評価も行われました。

研究でわかったこと

すべてのサンプルは、海洋生物毒素について定められた法的な基準値の範囲内にとどまっていました。ただし、ムール貝の割れた身とイカの内臓からは、脂溶性の海洋毒素、主にオカダ酸(OA)が低濃度ながら検出されたと報告されています。

重金属については、水銀は全サンプルで0.75mg/kg未満、鉛は0.90mg/kg未満と、いずれも安全域にとどまりました。一方でカドミウムは、カツオの内臓(9.574mg/kg)、キハダマグロの内臓(14.8mg/kg)、イカの内臓(59.8mg/kg)の3サンプルで高い値を示しました。ヒ素については、イカとタコの茹で汁でそれぞれ13.66mg/kg、92.91mg/kgと特に高く、イカの内臓でも22.85mg/kgに達していたといいます。

研究チームは、これらの副産物は最終的に他の製品へ加工・希釈される形で利用されるため、実際に消費者の口に入る最終製品の段階で改めて重金属を分析する必要があると指摘しています。その上で、こうした汚染物質を継続的に監視し、関連法規を整えることが消費者の安全確保に不可欠だとしています。なお、要旨によれば、イカの副産物からオカダ酸が報告されたのはこの研究が初めてだとされています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、南西ヨーロッパの大西洋沿岸で得られた特定のサンプルを対象にした調査であり、水産副産物全般に一般化できるかどうかは今後の検証が必要です。また、著者ら自身が述べている通り、ここで示された重金属濃度は副産物そのものの値であり、実際に飼料や食品として利用される際には加工・希釈された最終製品での再分析が求められます。細胞毒性試験の具体的な結果の数値については、要旨の範囲では示されていません。

まとめ

水産加工の副産物を無駄にせず活用しようという動きが広がる中、この研究は生物毒素と重金属という2つの観点から安全性データを提供するものです。ムール貝やイカの副産物に含まれる脂溶性毒素、そしてイカ・タコの内臓や茹で汁に見られたカドミウムやヒ素の高濃度は、副産物の用途を検討する上で考慮すべき材料になると考えられます。研究チームは、こうした知見が水産副産物に関する法規制の改善につながることを期待しているとしています。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Celia Costas, Paz Otero, Carla Cameselle, et al. Levels of biotoxins, heavy metals, and cytotoxicity of underutilized seafood by-products from the Atlantic Coast of Southwest Europe. 農業食品研究ジャーナル (2026). DOI: 10.1016/j.jafr.2026.103157.