この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

肥満やそれに関連する脂質異常症、インスリン抵抗性などの代謝の問題は、世界的な健康課題として続いています。こうした状態は過剰なカロリー摂取やエネルギーバランスの乱れ、内臓脂肪の蓄積と結びつくことが多く、食事による介入が体重管理と代謝改善の中心的な方法として位置づけられてきました。

著者らが注目したのは、タンパク質の割合を高めた食事(高タンパク食)と、プロバイオティクスの組み合わせです。プロバイオティクスとは、適切な量を摂取したときに健康上の利点をもたらしうる生きた微生物のことで、腸内環境や免疫のはたらき、宿主の代謝を介して作用すると考えられています。論文では、高タンパク食は満腹感を高めたり食事による熱産生を増やしたりする可能性が指摘されている一方、抗酸化能力や酸化還元反応に関わる分子への影響はまだ検討途上であり、プロバイオティクスとの相互作用も十分に解明されていないと述べられています。

そこで研究チームは、高タンパク食を単独で、あるいは2種類のプロバイオティクス(ラクトバチルス・アシドフィルスとビフィドバクテリウム・ラクティス)と組み合わせて与えたとき、ラットの体組成、血中の脂質、酸化ストレス、ミトコンドリアのはたらき、血中アミノ酸がどう変化するかを調べました。これらの菌株は、抗酸化作用や抗炎症作用、腸に関わる効果が報告されていることを理由に選ばれています。

何をどのように調べたか

実験には8週齢のオスのウィスターラット32匹が用いられ、4つのグループに分けられました。標準食のみのグループ、標準食にプロバイオティクスを加えたグループ、高タンパク食のみのグループ、高タンパク食にプロバイオティクスを加えたグループです。標準食はエネルギーの26%がタンパク質由来、高タンパク食は52.7%がタンパク質由来という構成でした。プロバイオティクスは水に混ぜた形で、週3回、10週間にわたって経口投与され、投与しないグループには同量の水が与えられました。

評価の中心に置かれたのは体重増加と内臓脂肪の蓄積で、これに加えて血中の脂質、酸化ストレスの指標、ミトコンドリアのはたらき、血中アミノ酸が二次的な項目として測定されました。摂取した餌の量は飼育ケージ単位で記録され、内臓脂肪(精巣周囲と腸間膜の脂肪)と大腿の骨格筋が採取されて分析に用いられました。

酸化ストレスの指標としては、脂質の酸化を反映するTBARS、タンパク質の酸化を示すカルボニル、抗酸化にはたらくスルフヒドリル基(チオール基)、抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性が測定されました。SODは反応性の高い活性酸素をより穏やかな物質へ変える酵素です。また、細胞のエネルギー産生を担うミトコンドリアについては、電子伝達系と呼ばれる仕組みを構成する複合体I〜IVの酵素活性が調べられました。なお著者らは、これらの測定が組織の破砕液を用いたものであり、ミトコンドリア全体としての呼吸やATP産生を測ったものではないと明記しています。

報告された主な結果

餌とエネルギーの摂取量はグループ間で差がありませんでしたが、高タンパク食のグループは標準食のグループより体重増加が少なく、高タンパク食にプロバイオティクスを加えたグループも標準食にプロバイオティクスを加えたグループより増加が少なかったと報告されています。内臓脂肪の総量は高タンパク食で標準食より少なく、腸間膜脂肪は標準食にプロバイオティクスを加えたグループと高タンパク食のグループの両方で標準食より減少していました。一方、精巣周囲の脂肪や、顕微鏡で観察した脂肪細胞の大きさ・数には差が見られませんでした。

血液の分析では、血糖値に差はなかったものの、高タンパク食のグループでは総コレステロールと中性脂肪(トリグリセリド)が低い値を示しました。また、糖代謝の副産物であるメチルグリオキサールは、食事とプロバイオティクスの間に統計的な交互作用が認められ、標準食にプロバイオティクスを加えたグループと高タンパク食のグループで標準食より低い値でしたが、高タンパク食にプロバイオティクスを加えても高タンパク食単独と比べたさらなる低下は認められませんでした。

酸化ストレスに関しては、組織による違いが報告されています。脂肪組織では高タンパク食とプロバイオティクスを併用したグループのスルフヒドリル基が、標準食とプロバイオティクスのグループより高い値でした。対照的に骨格筋では、標準食にプロバイオティクスを加えたグループと高タンパク食のグループで、スルフヒドリル基とSOD活性がいずれも標準食より低い値となりました。ミトコンドリアについては、脂肪組織で複合体Iの活性が標準食にプロバイオティクスを加えたグループと高タンパク食のグループで高く、複合体IIIの活性は高タンパク食で低く、骨格筋では高タンパク食で複合体Iの活性が高いという結果でした。血中アミノ酸では、高タンパク食でグルタミン酸とメチオニンが低く、ロイシンが高いなどの変化が認められました。

この研究が示すこと

著者らは、高タンパク食がプロバイオティクスの有無にかかわらず、ラットの体重増加、内臓脂肪、脂質の状態、酸化還元の状態、ミトコンドリアの酵素活性、血中アミノ酸を変化させたとまとめています。摂取カロリーに差がなかったことから、体重増加の抑制はカロリー摂取の減少だけでは説明できず、熱産生や満腹感などの関与が考えられると論じられています。

同時に著者らは解釈の範囲を慎重に限定しています。実験に用いた高タンパク食は、タンパク質の割合だけでなく炭水化物の割合やエネルギー密度も標準食と異なっていたため、結果はタンパク質の増加単独の効果ではなく、その食事全体の構成による効果として読むべきだとしています。また、動物モデルであることやオスのラットのみを用いたこと、介入期間や個体数の制約から、ヒトやメスへ直接当てはめることはできないとも述べられています。

この研究が伝えるのは、同じ食事の変更でも脂肪組織と骨格筋では酸化還元やエネルギー代謝の応答が異なりうる、という組織ごとの違いの存在です。著者らは、観察された代謝・酸化還元・ミトコンドリアの変化の背後にある仕組みについては、さらなる検討が必要だと結論づけています。

著者:Luiza Ferracini Cunha(Programa de Pós-Graduação em Ciências da Saúde, Universidade Federal de Ciências da Saúde de Porto Alegre (UFCSPA), Avenida Sarmento Leite 245, Porto Alegre 90050-170, Brazil)、Isabella Pompeu de Mattos Almeida(Laboratório de Análises Clínicas, Universidade Federal de Ciências da Saúde de Porto Alegre (UFCSPA), Avenida Sarmento Leite 245, Porto Alegre 90050-170, Brazil)、Andrew Oliveira Silva(Laboratório de Células, Tecidos e Genes, Centro de Pesquisas Experimentais, Hospital de Clínicas de Porto Alegre, Rua Ramiro Barcelos 2350, Porto Alegre 90035-903, Brazil)、Náthali Silva Paiva(Laboratório de Células, Tecidos e Genes, Centro de Pesquisas Experimentais, Hospital de Clínicas de Porto Alegre, Rua Ramiro Barcelos 2350, Porto Alegre 90035-903, Brazil)、Carmen Regla Vargas(Serviço de Genética Médica, Hospital de Clínicas de Porto Alegre, Rua Ramiro Barcelos 2350, Porto Alegre 90035-903, Brazil)、Adriana Fernanda K. Vizuete(Departamento de Ciências Básicas da Saúde, Universidade Federal de Ciências da Saúde de Porto Alegre (UFCSPA), Avenida Sarmento Leite 245, Porto Alegre 90050-170, Brazil)、Márcia Giovenardi(Programa de Pós-Graduação em Ciências da Saúde, Universidade Federal de Ciências da Saúde de Porto Alegre (UFCSPA), Avenida Sarmento Leite 245, Porto Alegre 90050-170, Brazil)、Alethéa Gatto Barschak(Departamento de Ciências Básicas da Saúde, Universidade Federal de Ciências da Saúde de Porto Alegre (UFCSPA), Avenida Sarmento Leite 245, Porto Alegre 90050-170, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luiza Ferracini Cunha, Isabella Pompeu de Mattos Almeida, Andrew Oliveira Silva, et al. Impact of a High-Protein Diet Associated with Probiotics on Lipid Profile, Oxidative Stress, and Mitochondrial Activity in Adipose and Muscle Tissues of Wistar Rats. Nutrients 2026-09-20. DOI: 10.3390/nu18183070. 原著ライセンス:CC BY.