この研究は、ベトナムの研究機関の研究論文です。

掲載誌:International Journal of Secondary Metabolite

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ほとんど調べられてこなかった薬用植物

ショウガ科のアルピニア属(ハナミョウガ属)には230種を超える植物が知られており、その多くはアジアの熱帯・亜熱帯地域に分布しています。ナンキョウ(A. galanga)のように香辛料や薬草として利用される種もあり、各国の伝統医療でさまざまな不調の手当てに使われてきました。

この研究が取り上げたAlpinia menghaiensis(アルピニア・メンハイエンシス)は、ベトナムでは1998年に初めて報告された種で、民間療法では湿疹やぜんそくの手当てに用いられてきたと記録されています。ただし、これまでの研究は果実や茎、葉などから採れる精油(揮発性成分)に限られており、精油以外の成分、とりわけポリフェノール類の内容や、抽出物がどのような働きを示すかについての報告はありませんでした。

そこで研究チームは、この植物の根茎(地下の太い茎)を対象に、ポリフェノール類の組成を定量し、あわせて抗酸化の働きと、でんぷんを分解する消化酵素であるα-アミラーゼを阻害する働きを評価しました。ポリフェノールとは植物が作る一群の成分で、体内で生じる反応性の高い分子(ラジカル)を抑える性質が知られています。

5種類の溶媒で抽出し、成分と働きを比べる

著者らは2023年5月にベトナム・フート省で採取した新鮮な根茎を用い、乾燥・粉砕したうえで、メタノール、エタノール、酢酸エチル、メタノール/アセトン混合、ヘキサンという5種類の溶媒にそれぞれ72時間浸し、5種類の抽出物を用意しました。溶媒は成分を溶かし出す液体で、水になじみやすいもの(極性が高いもの)から油になじみやすいもの(極性が低いもの)まで性質が異なります。

成分の分析には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、個々のポリフェノールを分離して量を測りました。あわせて、フォリン・チオカルト法で総ポリフェノール量を、アルミニウム試薬を使う比色法で総フラボノイド量を求めています。抗酸化の働きはDPPHとABTSという2種類のラジカルを消す試験管内の試験で、酵素阻害の働きはα-アミラーゼの反応を用いた試験で調べ、いずれも効果が半分になる濃度(IC50)で表しました。IC50は値が小さいほど働きが強いことを意味します。比較の基準として、抗酸化ではアスコルビン酸(ビタミンC)、酵素阻害では糖尿病治療薬として知られるアカルボースを陽性対照に用いています。すべての実験は3回ずつ行われました。

報告された主な結果

研究チームは、根茎の抽出物から9種類のフェノール酸・フラボノイドを同定・定量したと報告しています。もっとも多くの成分を効率よく引き出したのはメタノール/アセトン抽出物で、カテキンが9.22 ± 0.27 mg/g、p-クマル酸が1.38 ± 0.02 mg/g、ケルセチンが1.74 ± 0.18 mg/gと、いずれも他の抽出物を上回りました。総ポリフェノール量も86.75 ± 5.89 mg/gでもっとも高い値でした。一方、極性の低いヘキサンではポリフェノールがほとんど得られず、これは極性をもつポリフェノールの性質から予想される結果だと著者らは説明しています。

論文は、どの抽出物でもカテキンが他の測定成分より際立って多く、この植物の根茎の主要なポリフェノールであると述べています。ただし、カテキンが豊富な資源として知られるツバキ属(茶など)の抽出物と比べると含有量はかなり低いことも、あわせて記されています。

抗酸化の働きでも、メタノール/アセトン抽出物がもっとも強く、DPPHではIC50が257.83 ± 13.02 µg/mL、ABTSでは497.20 ± 14.18 µg/mLでした。5種類の抽出物の順位は両方の試験で一致し、ヘキサン抽出物がもっとも弱い結果でした。なお、いずれの抽出物もアスコルビン酸より働きは弱く、報告済みの他のアルピニア属の抽出物と比べても弱かったと論文は記しています。

これに対してα-アミラーゼ阻害では、傾向が異なりました。もっとも強かったのは酢酸エチル抽出物(IC50 = 394.03 ± 13.09 µg/mL)で、次いでヘキサン抽出物でした。メタノール/アセトン抽出物とエタノール抽出物の阻害はそれより弱く、メタノール抽出物にいたってはIC50が1000 µg/mLを超え、もっとも弱い結果でした。著者らは、メタノール抽出物が抗酸化の試験では有効性を示していたことと対照的だと述べています。陽性対照のアカルボース(IC50 = 142.43 ± 4.79 µg/mL)はすべての抽出物を上回っており、著者らは今回の阻害作用を控えめなものと位置づけています。

総ポリフェノール量と抗酸化の働きのあいだには強い正の相関が認められ、相関係数はDPPHで0.958、ABTSで0.956でした。一方、総フラボノイド量とは中程度の負の相関、α-アミラーゼ阻害と総ポリフェノール量とは弱い負の相関が示されています。ここでいう相関は数値どうしの関連の強さを表すもので、原因と結果を示すものではありません。

この研究が示すこと

この研究は、これまで精油しか調べられていなかったAlpinia menghaiensisの根茎について、ポリフェノールの組成と抽出物の働きを初めて示したものです。著者らは、どの溶媒を使うかが得られる成分の顔ぶれを大きく左右すること、カテキン類がこの根茎の主要なポリフェノールであること、そして抗酸化の強さがポリフェノール量とよく対応することを報告しています。

興味深いのは、抗酸化に優れた抽出物とα-アミラーゼ阻害に優れた抽出物が一致しなかった点です。著者らはここから、酵素阻害には極性の高いポリフェノールとは別の、極性の低い、あるいは中程度の極性をもつ成分が関わっている可能性を指摘しています。試験管内の評価という枠のなかではありますが、この植物の根茎が複数の性質を持つ成分を併せ持つことを、具体的な数値とともに描き出した報告だといえます。

著者:Trang Thi Nguyen(Industrial University of Ho Chi Minh City)、Nguyễn Thị Thanh Ngân(Industrial University of Ho Chi Minh City)、Nguyen Tat Son(Industrial University of Ho Chi Minh City)、Tran Thi Thu Hang(Department of Chemistry, Vinh University)、Hoang Van Trung(School of Chemistry, Biology and Environment, Vinh University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Trang Thi Nguyen, Nguyễn Thị Thanh Ngân, Nguyen Tat Son, et al. Phenolics, antioxidant activity, and α-amylase inhibitory effect of Alpinia menghaiensis rhizome extracts. International Journal of Secondary Metabolite 2026-09-02. DOI: 10.21448/ijsm.1779764. 原著ライセンス:CC BY.