豆を発酵させて作る「淡豆豉(たんとうし)」は、中国などで古くから利用されてきた発酵黒豆の加工品です。発酵食品にはさまざまな機能性成分が含まれることが知られていますが、その中でも「多糖類」と呼ばれる糖の集合体は、抗酸化作用や血糖にかかわる働きなど、健康との関連が研究されている成分の一つです。今回紹介する研究では、この発酵黒豆由来の多糖類を、従来よりも効率的に取り出すための抽出方法が検討され、得られた多糖の構造や機能が調べられました。

研究でわかったこと

研究チームは、多糖類を取り出す際の溶媒として「深共晶溶媒(DES)」という、環境負荷が少ないとされる溶媒に注目しました。塩化コリン・酒石酸・エチレングリコールを2:1:1の割合で混ぜた三元系の深共晶溶媒(UD)を用い、さらに超音波を併用することで抽出効率を高める方法(超音波支援抽出)が検討されています。抽出条件は応答曲面法という統計的手法によって最適化され、最終的に「79分間、含水率35%、溶媒量30 mL/g、温度65℃」という条件が導き出されました。

この条件で得られた多糖(SSPP-UDと呼ばれています)の収率は115.37±1.1 mg/gに達し、これは従来の熱水抽出法の4.8倍、超音波支援水抽出法の3.0倍に相当したと報告されています。

構造解析の結果、SSPP-UDは分子量約1.50×10³ダルトンの低分子量成分を主体(全体の55.73%)としつつ、高分子量の成分も含む、幅広い分子量分布を持つことが示されました。また、ウロン酸やアラビノース、キシロースといった糖成分が豊富に含まれていることも確認されています。赤外分光分析(FT-IR)では水酸基やカルボキシ基が多く検出され、これは酸性多糖であることを示す特徴とされています。さらに、水溶液中では負に帯電した安定な会合体(粒子径の目安として直径約31.8マイクロメートル)を形成することも確認されました。

機能性の評価では、濃度3 mg/mLにおいてDPPHラジカル消去能27.4%、ABTSラジカル消去能20.6%、ヒドロキシルラジカル消去能33.3%という抗酸化活性が報告されています。また、糖の分解にかかわる酵素であるα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼに対する阻害活性も確認され、それぞれ96.8%、93.7%の阻害率(IC50はそれぞれ0.77 mg/mL、0.68 mg/mL)が示されました。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、発酵黒豆由来の多糖類を効率よく、かつ環境に配慮した方法で抽出する技術の可能性を示したものであり、抗酸化作用や酵素阻害作用については、あくまで実験室レベルでの評価結果です。ヒトが摂取した場合の効果や安全性を直接示すものではなく、糖尿病の予防・改善といった臨床的な効果を証明したものでもありません。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意が必要です。

まとめ

本研究では、超音波支援三元深共晶溶媒抽出という手法により、発酵黒豆(淡豆豉)から従来法より高い収率で多糖類を得ることに成功し、その多糖が酸性糖を豊富に含む構造的特徴を持つこと、また抗酸化活性やα-アミラーゼ・α-グルコシダーゼ阻害活性を示すことが報告されました。研究チームは、この抽出法が機能性食品分野における生理活性多糖の取得に役立つ環境調和型の戦略になりうると述べています。今後、さらなる研究の進展が期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:発酵黒豆(淡豆豉)由来多糖類の超音波支援三元深共晶溶媒抽出:構造的特徴、抗酸化・血糖降下活性(フード・ケミストリー:エックス・2026年07月)