西アフリカの一部地域では、米粉を発酵させて焼く円形のパンケーキ「シナシル」が親しまれています。ナイジェリアなどで日常的に食べられている軽食ですが、原料が米粉に偏っているため、たんぱく質やビタミン・ミネラルが少なくなりがちだという課題があります。今回、フェデラル・ダットシンマ大学食品科学技術学部などの研究グループが、未熟な緑色のプランテン(バナナに似た調理用の品種)とゴマの粉を米粉に混ぜ合わせることで、シナシルの栄養価をどこまで高められるかを調べた研究が、FUDMAサイエンスジャーナルに掲載予定です。

米粉にプランテンとゴマを混ぜて焼いてみる

研究チームは、ナイジェリア・カノ州のヤンクラ市場で米、未熟な熟していない緑色のプランテン、ゴマ(Sesamum indicum)を調達しました。米は洗浄・乾燥後に製粉し、プランテンは皮をむいて薄切りにしたのち80度で3〜5分蒸し煮(ブランチング)してから乾燥・製粉、ゴマは種皮を除いたうえで60度で焙煎してから製粉するという工程で、それぞれの粉を用意しています。

この3種の粉を、米:プランテン:ゴマの比率が100対0対0(RSA、対照区)、94対5対1(RSB)、88対10対2(RSC)、82対15対3(RSD)、76対20対4(RSE)となるよう5パターンに配合しました。各配合粉に砂糖・塩・酵母(サッカロミセス・セレビシエ)・ベーキングパウダーと水を加えてどろりとした生地を作り、45〜50分発酵させたのち、油を薄く引いた鍋で片面ずつ低火力で焼き上げてシナシルに仕上げています。

配合を変えると何が変わったのか

できあがった粉の成分を分析したところ、プランテンとゴマの配合割合を増やすほど、水分(9.05〜10.05%)、灰分(0.83〜1.88%)、脂質(0.58〜2.06%)、粗たんぱく質(6.30〜7.24%)、粗繊維(1.39〜1.50%の範囲で、むしろ対照区が最も高く配合を増やすほど減少)が変化し、炭水化物の割合は81.76%から77.38%へと減っていったと報告されています。たんぱく質の増加は、米や乾燥プランテンよりもゴマの方がたんぱく質を多く含むことによると考察されています。

ビタミンについては、ビタミンA・ビタミンB(チアミン)は配合割合が増えるほど増加した一方、ビタミンCは対照区の0.014mg/100gから最も配合量が多いRSEの0.003mg/100gへと減少しました。研究チームは、未熟なプランテン自体は本来ビタミンCを豊富に含む食材だが、水溶性で熱に弱いビタミンCが、洗浄・蒸し煮・加熱調理といった一連の加工工程で分解されてしまった可能性を指摘しています。またミネラルについても、リン、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウムのいずれもが、プランテンとゴマの配合割合が増えるほど増加する傾向が確認されました。

膨潤力などの機能特性も配合によって有意に変化したことに加え、9段階の評点法(「非常に好き」から「非常に嫌い」まで)を用いた官能評価では、味・色・食感・香り・総合的な好ましさのいずれについても配合間で統計的に有意な差が見られました。その結果、米82%・未熟プランテン15%・ゴマ3%の配合であるRSDが、最も総合評価が高い組み合わせとして報告されています。

この研究の位置づけ

この研究は、実験室レベルで配合と加工条件を変えてシナシルの成分・官能特性を比較したものであり、ヒトを対象にした健康影響の検証を行ったものではありません。ビタミンCが加工によって減少した点からもわかるように、栄養強化の効果は原料の栄養価だけでなく、蒸し煮や加熱といった調理工程の影響も受けることが示唆されています。一つの研究で得られた結果であり、他の米の品種や加工条件でも同様の傾向が得られるかは今後の検証が必要です。

まとめ

米粉だけで作るシナシルに未熟なプランテン粉とゴマ粉を組み合わせることで、たんぱく質やミネラル、一部のビタミンの含有量を高めつつ、消費者の受容性も損なわれない配合があり得ることが、この研究の結果から示唆されました。特に米82%・プランテン15%・ゴマ3%の配合が、栄養面と嗜好性のバランスが取れた組み合わせとして報告されています。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Ladidi I. Zubairu, Adebayo Quadri, Suleman I. Zubairu. Quality Evaluation of Rice-Based Sinasir Enriched with Plantain and Sesame Flour Blends. FUDMAサイエンスジャーナル (2026). DOI: 10.33003/fjs-2026-1013-5786. 原著ライセンス: cc-by.