オレンジやライムを食べたり搾ったりしたあと、種は多くの場合そのまま廃棄されます。しかし柑橘の種には油分が含まれており、農産業の副産物としてどの程度活用できる可能性があるのかは、種の種類によってあまり整理されてきませんでした。今回紹介する研究では、同じイランの気候条件で栽培された6種類の柑橘、すなわちスイートオレンジ(Citrus sinensis)、メキシカンライム(Citrus aurantifolia)、スイートライム(Citrus limettioides)、大果のシトロン(Citrus medica var. macrocarpa)、小果のシトロン(Citrus medica var. medica)、サワーオレンジ(Citrus aurantium)の種子を対象に、種の大きさや重さといった形態的特徴、油の含有量、脂肪酸の構成、フェノール化合物、そして抗酸化力の指標であるDPPHラジカル消去能を比較しています。
種によって油の量も中身も違っていた
まず種子の大きさ・重さ・油の蓄積量には、種間で明確な差が見られました。油の含有量はサワーオレンジの25.00±0.42%からスイートライムの39.65±0.55%まで幅があり、同じ「柑橘の種」でもこれだけの違いがあることが示されています。
脂肪酸の組成を見ると、いずれの種でも不飽和脂肪酸であるリノール酸(32.27±0.09~39.27±0.39%)とオレイン酸(20.52±0.03~29.36±0.14%)が主成分となっており、飽和脂肪酸としてはパルミチン酸(25.33±0.26~28.56±0.35%)とステアリン酸(3.13±0.10~5.62±0.24%)が中心でした。
フェノール化合物についても種ごとの違いが確認され、総フェノール含量は2.11±0.04~3.66±0.06 mg GAE/g(乾燥重量あたり)、総フラボノイド含量は0.92±0.02~1.50±0.03 mg QE/g、縮合タンニンは0.12±0.01~0.23±0.01 mg CE/gの範囲でした。抗酸化力の指標であるDPPHラジカル消去能は、種子抽出物では39.76±0.38~65.86±0.42%、種子油では39.67±0.36~94.15±0.55%という結果でした。
さらに主成分分析や階層クラスタリングといった多変量解析により、形態・生化学的特徴・脂肪酸組成に基づいて6種の柑橘は互いに異なるグループとして分かれることが示されました。中でも小果のシトロン、スイートライム、スイートオレンジは、油の含有量や不飽和脂肪酸の割合、DPPHラジカル消去能といった指標で比較的高い値を示す傾向がありました。
この結果をどう受け止めるか
研究チームは、こうした傾向はあくまで今回調べた材料と栽培条件に特有のものであると述べており、他の産地や品種、栽培環境でも同じ結果になるとは限らない点に注意を促しています。また、この研究で明らかになったのは油の収量や脂肪酸組成、フェノール関連成分、抗酸化力の測定値までであり、実際に食品・栄養補助食品・化粧品・工業用途などに使えるかどうかを判断するには、酸化安定性や保存中の変化、安全性、栄養面での効果、加工適性、コストや採算性といった応用面の検証が今後必要になるとされています。
まとめ
本研究は、廃棄されがちな柑橘の種子に含まれる油とフェノール化合物について、6種の柑橘を横並びで比較したものであり、種によって油の量や成分組成に相応の違いがあることを示しました。これは柑橘種子油の有効利用を考えるうえでの基礎的なデータを提供するものであり、特定の健康効果や実用化を裏づけるものではありません。一つの研究として得られた知見であり、今後のさらなる検証を通じて理解が深まっていくものと位置づけられます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Saeideh Mohtashami, Askar Ghani, Mohammad‐Taghi Ebadi, et al. Citrus seed oil as an agro-industrial waste: fatty acid profile, phenolic compounds, and valorization potential. サイエンティフィック・リポーツ (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-67589-5. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.