著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Food Chemistry X

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

蜂蜜の品質を評価する国際的な基準のひとつに「ジアスターゼ活性」があります。ジアスターゼは、でんぷんを分解する酵素の働きを指します。この値は、蜂蜜が新鮮であることや、過度に加熱されていないことの目安とされています。

研究チームは、植物Triadica cochinchinensisの花から集められた蜂蜜(以下、TCH)のジアスターゼ活性が、他の蜂蜜と比べて際立って低いことに着目しました。そのうえで、なぜ低いのかを、蜂蜜に含まれるフラボノイドという植物由来の成分に焦点を当てて調べました。フラボノイドには、この酵素の働きを抑える作用があるとこれまでに報告されています。

何を調べたか

著者らの報告では、TCHのジアスターゼ活性は3.45でした。比較した一般的な蜂蜜11種類は9.96〜23.06の範囲にあり、TCHはそれらより有意に低い値でした。さらにTCHでは、蜂蜜が熟成していく過程でジアスターゼ活性が通常とは異なり低下していくことも確認されました。

研究チームは、成分を細かく分離・同定する分析法(LC-MS/MS)でTCHに特徴的なフラボノイドを調べました。その結果、TCHに特有の(−)-ガロカテキンガレート(GCG)と、含有量の多いナリンゲニンカルコン(NGC)の2つを特定しました。この2成分について、試験管内の実験と、ミツバチを使った生体での実験の両面から、酵素への影響を検討しました。

主な結果

試験管内の酵素実験では、GCGとNGCのいずれも、でんぷん分解酵素であるα-アミラーゼの働きを抑えました。抑え方は「混合型」と呼ばれるタイプでした。また、蛍光の変化を測る方法と、コンピューター上で分子の結合を予測する分子ドッキングによって、2つの成分がα-アミラーゼに結合する様子も調べられました。

ミツバチを使った実験では、餌にGCGやNGCを加えると、ハチの下咽頭腺(頭部にあり、酵素などを分泌する腺)でα-アミラーゼをつくる遺伝子の働きが弱まりました。蜂蜜の熟成を担う15日齢のハチでは、GCGで78.92%、NGCで67.71%の抑制が報告されています。外で花蜜を集める25日齢の採餌バチでは、GCGで91.14%、NGCで56.48%の抑制でした。

さらに、成分と生体内の分子の関係を網羅的に推定するネットワーク薬理学という解析では、この抑制がα-アミラーゼに関わる4つの経路への干渉と結びつけられました。

研究が示すこと

この研究は、TCHのジアスターゼ活性が低い背景に、蜂蜜に含まれるフラボノイドが関わっている可能性を示しました。著者らによれば、その仕組みは二つです。一つは、成分が酵素そのものの働きを直接抑えること。もう一つは、ミツバチの体内で酵素をつくる遺伝子の働きを弱めることです。ジアスターゼ活性は品質の目安とされますが、蜂蜜の種類によっては、花に由来する成分の影響で本来的に低くなりうることを示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Huizhi Jiang(Jiangxi Province Key Laboratory of Honeybee Biology and Beekeeping, Honeybee Research Institute, Jiangxi Agricultural University, Nanchang, Jiangxi 330045, China)、Zhen Li(College of Life Science and Resources and Environment, Yichun University, Yichun, Jiangxi 336000, China)、Tianyu Xu(Jiangxi Province Key Laboratory of Honeybee Biology and Beekeeping, Honeybee Research Institute, Jiangxi Agricultural University, Nanchang, Jiangxi 330045, China)、Min Xu(Jiangxi Province Key Laboratory of Honeybee Biology and Beekeeping, Honeybee Research Institute, Jiangxi Agricultural University, Nanchang, Jiangxi 330045, China)、Weixuan Chen(Jiangxi Province Key Laboratory of Honeybee Biology and Beekeeping, Honeybee Research Institute, Jiangxi Agricultural University, Nanchang, Jiangxi 330045, China)、Shengyang He(Jiangxi Province Key Laboratory of Honeybee Biology and Beekeeping, Honeybee Research Institute, Jiangxi Agricultural University, Nanchang, Jiangxi 330045, China)、Xiaobo Wu(Jiangxi Province Key Laboratory of Honeybee Biology and Beekeeping, Honeybee Research Institute, Jiangxi Agricultural University, Nanchang, Jiangxi 330045, China)、Weiyu Yan(Jiangxi Province Key Laboratory of Honeybee Biology and Beekeeping, Honeybee Research Institute, Jiangxi Agricultural University, Nanchang, Jiangxi 330045, China)、Qingfeng Zhang(Jiangxi Key Laboratory of Natural Product and Functional Food, College of Food Science and Engineering, Jiangxi Agricultural University, Nanchang 330045, China)、Zhijiang Zeng(Jiangxi Province Key Laboratory of Honeybee Biology and Beekeeping, Honeybee Research Institute, Jiangxi Agricultural University, Nanchang, Jiangxi 330045, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Huizhi Jiang, Zhen Li, Tianyu Xu, et al. Flavonoid constituents contribute to the low diastase activity of Triadica cochinchinensis honey through in vitro enzyme inhibition and in vivo transcriptional regulation. Food Chemistry X 2026-09-12. DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104452. 原著ライセンス:CC BY.