掲載誌:JOSAR (Journal of Students Academic Research)

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドネシアでは、食べ物から十分なエネルギーを得られていない人の割合が州によって大きく異なります。著者らは、この割合を示す「栄養不足蔓延率(PoU)」をもとに、国内38州を似た状況の州どうしでグループに分けることを目指しました。PoUは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標2「飢餓をゼロに」で使われる公式指標です。ただし、測っているのは食事から摂るエネルギーが足りているかどうかで、ビタミンやミネラルなど栄養の質は含まれません。

論文によると、インドネシアのこれまでの地域分類研究は、貧困率や子どもの発育阻害(スタンティング)、幸福度などの関連指標を使うものが中心でした。公式のPoUデータで全州を分類した例は限られていたといいます。研究チームは、食料安全保障政策で優先すべき地域を根拠に基づいて判断するための材料を示すことを目的に掲げています。

データの点検と分析の方法

研究チームは、2018〜2024年の州別PoUを公式統計から集め、分析の前にデータを丁寧に点検しました。この期間には、パプア州が5つの州に分割され、州の数が34から38に増えています。点検の結果、州コードの付け方が年によって一貫していないことが分かったため、州コードではなく、表記をそろえた州名で各州を特定しました。また、2024年のデータでジャンビ州が「ジャンビ市」と記録されていたため、表記を「ジャンビ」に統一しました。著者らは、こうした行政区画の変更に伴うデータの不整合への対処手順も、この研究の貢献の一つに挙げています。

分析では、年ごとの細かな変動ではなく、各州の中期的な傾向をとらえるため、州ごとに期間中のPoUの平均値を求めました。新しく設けられたパプアの各州は2024年の1年分しか値がありませんが、政策上の判断に役立つ情報として分析に含めています。

グループ分けには「K平均法(K-Means)」を使いました。あらかじめ決めた数のグループについて、それぞれのグループの中心となる値を求め、各州を最も近い中心に割り当てる手法です。グループの数は、グループを増やしても州の散らばりがあまり減らなくなる点を探す「エルボー法」と、グループのまとまりと分かれ具合を評価する2つの指標(シルエット係数とデイビス・ボルディン指数)を組み合わせて決めました。

主な結果

38州の平均PoUは13.15%で、最も低いジャカルタ首都特別州の2.37%から、最も高い中部パプア州の37.69%まで大きな開きがありました。多くの州は低めから中程度の値に集まり、ごく一部の州だけが非常に高い値を示す分布でした。

評価指標のうち、シルエット係数が最も高かったのはグループ数を2とした場合(0.755)でした。しかし、「高い」「低い」の二分類では政策の使い分けに十分な情報にならないと著者らは判断しました。エルボー法で区切りが3に見られたこと、3グループでもシルエット係数が0.593と良好な構造を示したことから、最終的に3グループを採用しています。

その結果、PoUの中心値が7.85%の低リスク群に26州、17.16%の中リスク群に6州、32.13%の高リスク群に6州が分類されました。高リスク群は中部パプア、パプア、マルク、北マルク、南パプア、高地パプアで、パプア地域とマルク地域が占めています。中リスク群には西パプア、南西パプア、西カリマンタン、北カリマンタン、ゴロンタロ、東ヌサ・トゥンガラが入りました。低リスク群には、ジャワ、バリ、スマトラやスラウェシの一部の州が含まれます。

高リスク群にパプアとマルクが並ぶ構図は、貧困率に基づいて州を分類した先行研究の結果とよく似ていると論文は述べています。著者らは、高リスク群の州に島しょ部や山岳地帯が多いことから、PoUの高さには食料輸送などのインフラの制約といった長期的な要因が関わっていると解釈しています。

研究が示すこと

この研究は、インドネシアの栄養不足が一部の極端な州だけの問題ではなく、州ごとに段階的な差として現れていることを、公式指標を使った州の分類で示しました。著者らは、高リスク群には長期的・構造的な対策、中リスク群には予防的な対策、低リスク群には現状の維持と弱い立場の人々への配慮というように、全国一律ではなく州の状況に応じて優先度を考える材料になるとしています。

一方で、分類に使った変数はPoU一つだけで、論文自身もこの点を限界として挙げています。この研究の成果は、栄養不足の地域差の大きさと、その差がどの地域に集中しているかを整理して示したところにあるといえます。

著者:Lana Astria(Universitas Ngudi Waluyo)、Santi Meliani(Universitas Ngudi Waluyo)、Ade Pratama(Universitas Ngudi Waluyo)、Abdul Rohman(Universitas Ngudi Waluyo)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lana Astria, Santi Meliani, Ade Pratama, Abdul Rohman Cluster Analysis of Provinces Based on the Prevalence of Undernourishment Using the K-Means Algorithm. JOSAR (Journal of Students Academic Research) 2026-09-30. DOI: 10.35457/9wjmrq51. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。