この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Edutik Jurnal Pendidikan Teknologi Informasi dan Komunikasi

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

手書きの記録が生む見落としを減らしたい

発育阻害(スタンティング)は、慢性的な栄養不足により、幼い子どもの身長が年齢の基準より低くなる状態です。研究チームは、体や知的な発達にも影響しうるこの問題の早期発見に向けて、インドネシアの「ポシャンドゥ」で使う測定・記録システムを設計しました。ポシャンドゥは村などの単位で開かれる、母子のための地域保健サービスです。対象はポシャンドゥ・ブーゲンヴィレで、論文によると、ここでは新たな発育阻害を出さないことを目指すプログラムが進められています。

著者らが現場で観察したところ、測定器の値を読み取り、登録簿や子どもの健康カードに何度も手で書き写していました。転記のたびに数字の書き間違いや不適切な丸めが起こりえます。健康カードを紛失すると、成長の記録が途切れるおそれもあります。さらに、栄養状態の判定に使う「Zスコア」は、WHOの参照表と測定値を一つずつ照らし合わせて求めていました。Zスコアは、子どもの測定値が同じ年齢・性別の標準からどれだけ離れているかを示す指標です。この照合は手間がかかり、本来は注意が必要な子どもを「正常」と誤って判定するリスクがあると論文は指摘しています。

センサー、サーバー、WhatsAppをつなぐ仕組み

開発したシステムでは、体重を荷重センサー(ロードセル)とその信号を増幅する部品で測ります。身長は、光が反射して戻るまでの時間から距離を求めるセンサーで測ります。測定値は小型のマイコンからWi-Fi経由でサーバーへ直接送られます。サーバーはWHO基準に沿ってZスコアを計算し、栄養状態を分類したうえで、成長の履歴を保存します。結果は測定器の小型画面とウェブ画面に表示されます。また、WhatsAppのボットが保護者へ測定結果の要約とポシャンドゥの日程リマインダーを送ります。

開発は、試作品をつくって利用者に試してもらい、意見をもとに直していく「プロトタイプ型」の手法で進めました。現場の観察と、ポシャンドゥのボランティア代表への聞き取りで必要な機能を洗い出しています。

技術的な試験の結果

ログイン、自動測定、データ送信、履歴の保存、Zスコアの計算、報告書の出力、WhatsApp通知など10の必要機能をすべて試験し、すべてが期待どおりに動いたと報告されています。誤った入力を受け付けず、エラーを表示することも確認されました。

測定の正確さは、36か月、48か月、60か月の幼児3人で確かめました。各児を3回ずつ測り、標準的な測定器の値と比べています。平均の正確さは、体重が99.15%(平均誤差0.117キロ)、身長が99.78%(平均誤差0.2センチ)でした。

データ送信にかかる時間は、通信状態が良い場合と普通の場合に5秒未満で、送信はすべて成功しました。通信状態が悪い場合は4.82秒かかり、成功率は95%でしたが、それでも著者らが目標とした5秒以内に収まりました。同時に50人分の利用を想定した負荷試験では、要求の処理がすべて成功しました。500人分という極端な負荷でも、成功率は97%を上回りました。WhatsAppによるリマインダーと結果要約の送信は、それぞれ5回の試行ですべて成功しています。

この研究が示すこと

著者らは、測定から記録、栄養状態の判定、保護者への連絡までを一つの流れにまとめた点を、手作業に頼る従来の記録との違いとして挙げています。転記をなくし、記録をデジタルで継続して残すことで、地域の保健現場で子どもの成長を見守る作業を支えられるという結論です。なお、今回の試験は機器とシステムの動作を確かめたもので、精度試験の対象は幼児3人でした。著者ら自身も、Wi-Fi接続への依存、子どもの姿勢による身長測定のずれ、センサーを定期的に調整する必要があることを課題に挙げています。

著者:David Pakpahan(Universitas Bina Insani)、Nadya Safitri(Universitas Bina Insani)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):David Pakpahan, Nadya Safitri Sistem Monitoring Deteksi Risiko Stunting bagi Balita dengan IoT pada Posyandu Bougenvelle. Edutik Jurnal Pendidikan Teknologi Informasi dan Komunikasi 2026-10-05. DOI: 10.67142/edutik.v6i5.618. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。