この研究は、シンガポールの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食事調査では、人がどれだけの量を食べたかを正しく見積もることが欠かせません。この目安を助ける道具のひとつが「食品写真アトラス」です。これは、さまざまな量の食品を撮影した写真を集めた冊子のようなもので、回答者が自分の食べた量に最も近い写真を選ぶことで、分量の推定を支援します。
研究チームによると、既存の食品写真アトラスはシンガポールでの利用に限界がありました。多民族の食文化に根ざした料理や独自の食習慣が反映されていないためです。そこで著者らは、シンガポールのために設計された初めての包括的な食品写真アトラスを開発し、その精度を検証することを目的としました。
どのように作り、どう確かめたか
アトラスの作成には、2021年の保健増進局(Health Promotion Board)によるエネルギー・栄養素組成データベースと、シンガポール第1回トータルダイエットスタディの24時間食事思い出し調査という2つの資料が用いられました。24時間食事思い出し調査とは、前日の24時間に食べたものを聞き取る方法です。これらを用いることで、日常的によく食べられている食品が代表されるようにしたと論文は説明しています。
体系的な除外基準を適用した結果、298件の項目がアトラスに収載されました。各項目は、特定の形状や盛り付けの食品を表しています。このうち67件は量の異なる写真を並べた「シリーズ写真」、231件は「ガイド写真」でした。
検証には、食品科学の国立基準検査機関から便宜的抽出で集められた成人41人が参加しました。参加者は、シリーズ写真として提示された14項目について、あらかじめ重量を量っておいた実際の食品の分量に最も近い写真を選びました。各項目につき2つの異なる分量が試されました。選ばれた写真番号と実際の写真番号との差を用いて、平均差や標準偏差、二次重み付けカッパ係数、スピアマン係数によって正確さが評価されました。カッパ係数やスピアマン係数は、選択と正解がどれだけ一致しているか、順序関係がどれだけ対応しているかを示す指標です。あわせて、使いやすさの評価と参加者の意見も集められました。
報告された主な結果
著者らの報告によれば、検証した14項目のうち11項目(78.6%)が、あらかじめ定めた基準(平均差が絶対値0.3未満、標準偏差が1未満)を満たしました。一方、牛肉、ピーナッツ、魚の3項目では過小評価がみられました。
二次重み付けカッパ係数は0.23から0.96、スピアマン係数は0.44から0.96の範囲でした。多くの項目で良好な一致と強い順序関係が示されたと報告されています。また、正答の割合は分量が大きくなるほど低下し、小さい分量では96.7%だったのに対し、特に大きい分量では42.4%でした。
使いやすさについては、代表性を好意的に評価した参加者が76%、分量設定の適切さについては73%、このアトラスを分量推定に使うことへの自信については71%でした。
この研究が示すこと
論文は、シンガポール向けとしては初となる包括的な食品写真アトラスが、日常的に食べられている298項目で構成されたと結論づけています。選定した14のシリーズ項目についての予備的な検証では満足できる正確さが示された一方、特定の項目の提示方法など、今後改良すべき点も明らかになったとされています。
著者らは全体として、このアトラスが研究や政策における食事調査を支える、地域に根ざした実用的な道具として役立ちうることを示したとまとめています。食事の量をどう見積もるかという地味に見える課題が、その土地の食文化に合わせて整えられて初めて機能するという点を、この研究は具体的な形で示しています。
著者:Shu Jin Ong(National Centre for Food Science, Singapore Food Agency)、Geraldine Songlen Lim(National Centre for Food Science, Singapore Food Agency)、Jia En Valerie Sin(National Centre for Food Science, Singapore Food Agency)、Joanna Khoo(National Centre for Food Science, Singapore Food Agency)、Joanne Sheot Harn Chan(Department of Food Science & Technology, Faculty of Science, National University of Singapore)、Kyaw Thu Aung(National Centre for Food Science, Singapore Food Agency)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shu Jin Ong, Geraldine Songlen Lim, Jia En Valerie Sin, et al. Development and validation of a photographic food atlas for portion size estimation in Singapore. Frontiers in Nutrition 2026-09-18. DOI: 10.3389/fnut.2026.1930409. 原著ライセンス:CC BY.