著者の所属・活動拠点の国は、オランダです。

掲載誌:Food Hydrocolloids

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

植物性タンパク質は、複雑で硬い構造のために、油と水、空気と水の境界でまとまりのある膜をつくりにくいことがあります。研究チームは、レンズ豆の主要なタンパク質の一つであるレグミンに着目し、その構造を支えるジスルフィド結合を切ることで、境界への集まり方や膜の性質がどう変わるかを調べました。さらに、その変化が、水中に油滴を分散させたエマルションの安定性に影響するかを確かめました。

何を、どのように調べたか

研究チームは赤レンズ豆から、レグミンと別のタンパク質であるビシリンの比率が76対24の、レグミンに富む画分を抽出しました。ジスルフィド結合を切る還元剤のジチオトレイトール(DTT)を5、50、100 mMの濃度で用いて処理し、未処理の試料と比較しました。実験には、大きな凝集物を遠心分離とろ過で除いた、水に溶けるタンパク質の画分を使い、濃度をそろえました。

結合が切れたことを確認したうえで、粒子の大きさ、表面の電荷、水になじみにくい部分が表面にどれほど現れているかを測定しました。また、油滴や気泡をタンパク質溶液中につくり、油と水、空気と水の境界にタンパク質が集まる速さや、できた膜を伸縮させたときの変形への抵抗を調べました。空気と水の境界の膜は顕微鏡でも観察し、エマルションについては4℃で14日間保存して油滴の状態を追跡しました。

主な報告結果

DTTで処理したレグミンは、未処理のものより油と水、空気と水の両方の境界で変形しにくい膜をつくりました。この違いは、空気と水の境界でより顕著でした。研究チームは、油と水の境界では主にタンパク質がより密に詰まったことが、空気と水の境界では密度の増加に加えて膜内のタンパク質同士の相互作用が強まったことが、膜の硬さにつながったと解釈しています。空気と水の境界の顕微鏡観察でも、処理した試料は、より密でつながりのよい網目構造を形成していました。

処理後には、タンパク質表面の水になじみにくい性質が強まり、境界に集まる速度も速くなりました。一方、粒子の大きさと表面の電荷には有意な変化がありませんでした。表面の水になじみにくさは5 mMのDTT処理ですでに増加し、さらに濃度を上げてもほぼ頭打ちでした。

ただし、境界での変化は、今回のエマルションの安定性向上には結びつきませんでした。処理の有無によらず、作製直後の油滴の大きさは同程度で、14日間の保存中も油滴同士が融合して大きくなることは認められませんでした。研究チームは、いずれの試料でも油滴の表面に十分な電荷があり、油滴同士が離れた状態を保てたと説明しています。

この報告が示すこと

この報告は、レグミンの内部を支える結合を切ることで、境界にできる膜の性質を変えられる一方、その変化がエマルション全体の安定性向上に直結するとは限らないことを示しています。また、膜が硬くなる仕組みは、相手が油か空気かによって異なると著者らは考察しています。

解釈上の留意点として、著者らは、測定結果にはDTTによる構造変化だけでなく、試料に残った小さな凝集体の量や、少量のビシリンも影響した可能性を挙げています。

原著論文の著者・所属:Chaya Chutinara(Laboratory of Physics and Physical Chemistry of Foods, Wageningen University, Bornse Weilanden 9, 6708 WG, Wageningen, the Netherlands)、Jasper Landman(Laboratory of Physics and Physical Chemistry of Foods, Wageningen University, Bornse Weilanden 9, 6708 WG, Wageningen, the Netherlands)、Leonard M.C. Sagis(Laboratory of Physics and Physical Chemistry of Foods, Wageningen University, Bornse Weilanden 9, 6708 WG, Wageningen, the Netherlands)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chaya Chutinara, Jasper Landman, Leonard M.C. Sagis. Disulfide bond cleavage in lentil legumin enhances interfacial properties at liquid interfaces. Food Hydrocolloids(出版社:Elsevier BV) 2026-10-20. DOI: 10.1016/j.foodhyd.2026.113520. 原著ライセンス:CC BY.