著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、カナダです。

掲載誌:International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

子どもの食習慣は幼いうちから形づくられ、家庭での親の関わり方が大きく影響すると考えられています。ただし、親の食の関わりについての研究はこれまで母親を中心に進められ、父親の役割についての知見は限られていました。

この研究チームは、父親が子どもを持つ前、特に思春期にどのような食生活を送っていたかが、のちに生まれた子どもの果物・野菜の摂取と関連するのかを調べました。あわせて、その関連が家庭の食環境を通じて生じているのかも検討しました。家庭の食環境として注目したのは、父親が子どもの食べるものに一定の枠組みを設ける関わり方(論文では「構造に基づく食の子育て実践」と呼んでいます)と、家族そろっての食事の頻度の二つです。

前者は具体的には、子どもの前で健康的な食べ物を食べるよう心がける、子どもが食べるお菓子やスナック菓子を把握する、家にお菓子やスナック菓子を多く置かない、といった行動を指します。

どのように調べたか

研究には、米国で父親に焦点を当てて追跡している研究集団のデータが使われました。分析対象は、1996年から続く長期追跡調査に思春期から参加していた男性のうち、2〜6歳の子どもを持ち、2021〜2022年と2022〜2023年の2回の調査に回答した父親478人です。参加者の多くは白人で、大学卒業以上の学歴を持つ人が大半でした。

父親の思春期(10〜18歳)の食生活は、当時くり返し回答した食物摂取頻度の質問票をもとに、米国の食事指針に沿った食事の質の指標で評価されています。著者らの先行研究では、この評価をもとに父親を、思春期を通して食事の質が低いままだった「低い」型、初めは比較的よかったが後半に下がった「低下」型、時間とともに改善した「上昇」型の三つに分けていました。

1回目の調査では父親が食の子育て実践と家族の食事頻度を、2回目の調査では父親が子どもの果物と野菜の摂取頻度を回答しました。研究チームは、子どもが果物・野菜をそれぞれ1日2回以上食べているかどうかに注目し、思春期の食生活の型との関連のうち、家庭の食環境を経由する部分(間接的な関連)とそれ以外の部分(直接的な関連)に分けて統計的に推定しました。2回目の調査に参加しなかった人がいることによる偏りを補正する重み付けも行っています。

主な結果

「上昇」型の父親の子どもは、「低い」型の父親の子どもと比べて、野菜を1日2回以上食べている割合が22.03ポイント高いと推定されました。このうち、父親が構造に基づく食の子育て実践をより多く行っていたことを経由する部分は2.86ポイントで、残りの19.78ポイントは今回測った家庭の食環境を経由しない直接的な関連として推定されました。

果物については、「上昇」型と「低い」型の間で全体としての明確な差は確認されませんでしたが、構造に基づく食の子育て実践を経由する間接的な関連が3.47ポイント認められました。一方、「低下」型の父親は、果物・野菜のどちらについても「低い」型の父親と明確な差がありませんでした。

家族そろっての食事の頻度は、思春期の食生活の型と子どもの摂取をつなぐ経路にはなっていませんでした。ただし、家族の食事が多い家庭ほど子どもが果物・野菜を1日2回以上食べている傾向が、それとは別に見られました。摂取頻度を2回以上かどうかで区切らずに分析し直しても、結果の全体的な傾向は変わらなかったと報告されています。

なお著者らは、「上昇」型に当てはまる父親が比較的少なく推定の精度が低いため、この群の結果は慎重に解釈し、より大きな集団で確かめる必要があると述べています。また、野菜摂取では直接的な関連が間接的な関連よりかなり大きかったことから、買い物や調理への関わりなど、今回測っていない別の要因も関わっている可能性を指摘しています。

この研究が示すこと

この研究は、父親が思春期に身につけた食生活のあり方が、父親になってからの家庭での食の関わり方と結びつき、子どもの野菜や果物の食べ方とも関連していることを示しました。研究チームは、若いころの経験がその後の人生や次の世代にまで影響しうるという考え方を支持する結果だと位置づけ、思春期に健康的な食生活を促すことが、将来の子どもの食事にも良い影響をもたらしうると考察しています。これまで見過ごされがちだった父親の役割に光を当てた点も、この研究の特徴です。

原著論文の著者・所属:Mariane Helen de Oliveira(Boston College, School of Social Work, Chestnut Hill, Boston, Massachusetts, USA)、Brian K. Lo(Department of Family Relations and Applied Nutrition, University of Guelph, Guelph, Ontario, Canada)、Natalie Grafft(Boston College, School of Social Work, Chestnut Hill, Boston, Massachusetts, USA)、Rebekah Levine Coley(Boston College, Lynch School of Education and Human Development, Chestnut Hill, Boston, Massachusetts, USA)、Jess Haines(Department of Family Relations and Applied Nutrition, University of Guelph, Guelph, Ontario, Canada)、Kirsten Krahnstoever Davison(Boston College, School of Social Work, Chestnut Hill, Boston, Massachusetts, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mariane Helen de Oliveira, Brian K. Lo, Natalie Grafft, et al. Fathers’ preconception diet quality and their children’s fruit and vegetable intake: longitudinal mediation through the home food environment. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity 2026-10-12. DOI: 10.1186/s12966-026-01996-9. 原著ライセンス:CC BY.