この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
プリンは幅広い年齢層に親しまれている乳製品デザートですが、一般的な材料である小麦粉は、セリアック病や小麦アレルギーなど小麦に関連する不調を抱える人にとっては避けなければならない成分です。研究チームは、この課題に対応する新しいプリンをつくるため、小麦粉に代わる素材としてホソバグミ(オレアスター、Elaeagnus angustifolia L.)の果実からつくった粉に着目しました。
著者らによれば、この果実の粉は食物繊維やポリフェノール(植物に含まれる抗酸化成分)を豊富に含むことがすでに知られており、クッキーやアイスクリーム、パン、ケフィアなどさまざまな食品に使われてきました。しかしプリンへの利用を検討した研究はこれまでなかったと論文は述べています。また、プリンは加熱温度が中程度にとどまるため、パンやクッキーのような高温で焼く食品よりも、こうした有効成分の担い手として適している可能性があるとも指摘しています。
どのように調べたか
研究チームは果実を手作業で皮・果肉・種に分け、皮と果肉をそれぞれ40℃で乾燥・粉砕して二種類の粉を用意しました。市販のバナナプリンの粘度を基準に配合を探った結果、小麦粉・果実粉ともに5%(重量比)を採用しています。
果実の多くはとろみのもとになるデンプンが少なく、果実粉だけで安定したプリンをつくるのは難しいため、ゲル化剤としてアルギン酸ナトリウムを1%加えました。論文はこの素材について、食品の風味を変えず、加熱に安定で無毒である点から選んだと説明しています。
比較対象として、小麦粉のみのプリン(C1)と、小麦粉にアルギン酸ナトリウムを加えたプリン(C2)を用意し、果肉粉入り(OF)、皮粉入り(OP)と並べました。いずれも85℃で5分間加熱したのち4℃で保存し、1日目と10日目に成分、離水、色、食感、微生物、そしてポリフェノール量と抗酸化活性を調べています。官能評価は44名の半訓練パネルが5段階で色・外観・食感・味・においを評価し、大学の倫理委員会の承認を得て実施されました。
報告された主な結果
原料の段階で、果肉粉と皮粉は小麦粉に比べて食物繊維がそれぞれ4.9倍・6.8倍、総ポリフェノールが4.2倍・4.5倍多いと報告されています。小麦粉の抗酸化活性は測定条件下では検出できなかった一方、果肉粉と皮粉では値が得られました。
プリンでは、果実粉入りの二種類が対照区のおよそ2倍の食物繊維を含んだと著者らは述べています。市販プリンの平均的な一食分70gで換算すると、米食品医薬品局(FDA)が示す一日の摂取目安に対して皮粉入りで7.8%、果肉粉入りで8.2%に相当し、デザート類としては良好な水準だとしています。
総ポリフェノール量と抗酸化活性はいずれも果肉粉入り、皮粉入り、小麦粉のみ、小麦粉+アルギン酸ナトリウムの順に高く、果実粉を加えたプリンが対照区を上回りました。特に果肉粉のほうが抗酸化活性を高める効果が大きかったと報告されています。なお、原料の粉では果肉粉と皮粉のポリフェノール量に統計的な差がなかったのに対し、プリンでは果肉粉入りのほうが高くなりました。著者らはその理由として、部位による結合型ポリフェノールの割合の違いや、乳タンパク質など他の成分との相互作用の可能性を挙げています。
食感については、アルギン酸ナトリウムを含む三種類が小麦粉のみのプリンより硬く、稠度や粘度指標も高い値を示しました。離水(水分がにじみ出る現象)はアルギン酸ナトリウムを加えた試料で少なく、外観の品質に関わる点として評価されています。色は保存にともなってやや暗く赤みを帯びる変化がみられ、著者らはメイラード反応による軽度の褐変で説明できるとしています。微生物検査では保存期間中に酵母・カビの発生はなく、一般生菌数はいずれも基準の範囲内で、安全に喫食できる状態だったと報告されています。
この研究が示すこと
この研究は、これまでプリンには使われてこなかった果実の粉を、ゲル化剤と組み合わせることで、小麦粉を使わない乳製品デザートとして成り立たせられることを具体的な数値とともに示しました。小麦を避ける必要がある人に向けた選択肢を広げると同時に、デザートでありながら食物繊維や抗酸化成分を上乗せできる配合のあり方を、著者らは一つの実例として提示しています。
著者:İrem Uzunsoy(Çaycuma Vocational School of Food and Agriculture Zonguldak Bülent Ecevit University Zonguldak Türkiye)、Fundagül Erem(Department of Food Engineering, Faculty of Engineering Zonguldak Bülent Ecevit University Zonguldak Türkiye)、Elif Ayşe Anlı(Department of Dairy Technology, Faculty of Agriculture Ankara University Ankara Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):İrem Uzunsoy, Fundagül Erem, Elif Ayşe Anlı. Development of a Dairy Product Enriched With Oleaster Flour: A Novel Gluten‐Free Functional Pudding. Food Science & Nutrition 2026-08-31. DOI: 10.1002/fsn3.72282. 原著ライセンス:CC BY.