著者の所属・活動拠点の国は、イギリス、ノルウェーです。

掲載誌:Journal of Human Nutrition and Dietetics

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

抗がん剤などの全身的ながん薬物療法を受けている患者では、栄養不良がよく見られます。栄養不良は、治療に耐えにくくなること、生活の質の低下、死亡の増加と関連することが知られています。それでも、外来での栄養状態のチェック(栄養スクリーニング)は推奨されているにもかかわらず、実施は医療現場によってまちまちです。また、確立されたスクリーニング票で見つかった栄養リスクが、その後の経過をどの程度予測するのかは、はっきりしていませんでした。

この研究で著者らは、薬物療法を受ける外来患者のうち栄養リスクのある人がどれくらいいるか、その人たちが栄養士による支援を受けられているかを調べました。あわせて、栄養リスクと、治療の副作用(毒性)、薬の減量、入院、全体の生存期間との関連を検討しました。

どのように調べたか

研究チームは、全身的ながん薬物療法を受けている成人の外来患者を対象に、参加者を一定期間追跡する前向きの観察研究を行いました。参加者には、患者自身が記入する栄養スクリーニング票「PG-SGA SF(患者記入式主観的包括的栄養評価の短縮版)」に回答してもらいました。点数が高いほど栄養面のリスクが高いことを示します。

そのうえで、点数と、治療の副作用、薬の減量、入院との関係を統計的に分析しました。生存期間についても、時間の経過に沿って死亡のしやすさを比べる手法で分析しています。いずれの分析も、年齢、性別、がんの転移の有無、日常生活の活動度を示す全身状態の影響を差し引いて評価しました。

主な結果

参加者169人のうち、24.9%が栄養リスクあり(点数4〜8点)、10.7%が高リスク(9点以上)と判定されました。一方で、栄養士による栄養ケアを受けていたのは5.3%にとどまりました。著者らは、3分の1を超える人が栄養介入の基準に当てはまっていたのに対し、実際にケアを受けていた人はごく一部だったと報告しています。

PG-SGA SFの点数が高いほど、治療の副作用が多く(オッズ比1.2、95%信頼区間1.1〜1.3)、薬の減量も多い(オッズ比1.2、95%信頼区間1.0〜1.3)という関連が、ほかの要因を考慮しても認められました。オッズ比は、ある出来事の起こりやすさを比べる指標で、1より大きいほど起こりやすいことを示します。

30日以内の入院については、栄養リスクとの統計的に意味のある関連は見られませんでした。一方、全体の生存期間とは独立した関連があり、ハザード比は1.1(95%信頼区間1.0〜1.2)でした。ハザード比は、時間の経過の中で死亡が起こりやすいかどうかを表す指標です。

この研究が示すこと

著者らは、PG-SGA SFで見つかった栄養リスクが、治療の副作用、薬の減量、生存期間を独立して予測していたと結論づけています。同時に、栄養支援が必要な人の多さと、実際に提供されている支援との間に大きな隔たりがあることも示されました。研究チームはこの結果を、がんの外来診療に、定期的な栄養スクリーニング、栄養士への紹介の流れ、専任の栄養支援体制を組み込むことを後押しするものと位置づけています。

著者:Amy McLuskie(Institute of Genetics and Cancer University of Edinburgh Edinburgh UK)、Miss Karen Angel(Western General Hospital Edinburgh UK)、Matthew M Maddocks(Cicely Saunders Institute of Palliative Care Policy and Rehabilitation, King's College London London UK)、Anne Finucane(Clinical Psychology, Health in Social Science University of Edinburgh Edinburgh UK)、Marie Fallon(Institute of Genetics and Cancer University of Edinburgh Edinburgh UK)、Barry J. A. Laird(Department of Oncology, European Palliative Care Research Centre (PRC) Radium Hospital, Oslo University Hospital Oslo Norway)、Michael S. Yule(Institute of Genetics and Cancer University of Edinburgh Edinburgh UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amy McLuskie, Miss Karen Angel, Matthew M Maddocks, et al. Nutritional Risk and Unmet Nutritional Need in Ambulatory Patients Undergoing Systemic Anti‐Cancer Therapies. Journal of Human Nutrition and Dietetics 2026-10-01. DOI: 10.1111/jhn.70359. 原著ライセンス:CC BY.