著者の所属・活動拠点の国は、コロンビアです。
掲載誌:Polymers
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜヤムイモのでんぷんを調べたのか
ヤムイモ(ヤマノイモ属)は熱帯・亜熱帯の多くの国で食料を支える重要な作物で、でんぷんを多く含みます。ただし研究チームによると、その利用は主に、粉やでんぷんなどに加工せず、収穫したイモを生鮮品のまま食材として消費することにとどまり、でんぷんの供給源としてはまだ十分に活用されていません。世界のでんぷん生産はトウモロコシ、キャッサバ、小麦、ジャガイモが大半を占めています。
でんぷんは食品にとろみをつけたり、ゲル状に固めたり、状態を安定させたりする材料として使われます。こうした働きは、でんぷんの粒の大きさや形、でんぷんを構成する2種類の成分であるアミロース(比較的まっすぐな鎖状の分子)とアミロペクチン(枝分かれの多い分子)の割合などに左右されます。著者らは、コロンビア・ボリバル県で栽培されたダイオスコレア・アラタ、ダイオスコレア・ロツンダタ、ダイオスコレア・カイエネンシスの3種について、でんぷんの性質をまとめて比べた情報は限られているとして、これらを食品用のでんぷん源として評価するための比較研究を行いました。
何をどのように調べたのか
研究チームは、地元の生産者団体を通じて入手した3種のイモから、すりつぶしてこし、沈殿させる方法ででんぷんを取り出し、乾燥させました。そのうえで、電子顕微鏡による粒の形の観察、粒の大きさの分布、pHや酸度、色、成分組成、アミロース含量を調べました。
さらに、水や油をどれだけ抱え込めるか、加熱したときにどれだけ膨らむか(膨潤力)、加熱して糊状になるときの粘り方、でんぷんが糊化(加熱で粒が水を吸って崩れ、糊になる変化)する温度、そして糊にしたときの流れやすさや弾力も測定し、3種の間で差があるかを統計的に比べました。
主な結果
でんぷんの粒は3種とも楕円形や丸みを帯びた形で、表面はなめらかでした。粒の大きさの中央値はカイエネンシスが約29マイクロメートルで最も大きく、アラタが約27、ロツンダタが約24マイクロメートルで最も小さいと報告されています。タンパク質、脂質、灰分、繊維はいずれも1%未満で、著者らは純度の高いでんぷんが得られたとしています。
アミロース含量はアラタが37.76%、ロツンダタが38.71%、カイエネンシスが32.58%と比較的高く、ヤムイモのでんぷんで一般に報告されている範囲を上回りました。水や油を保持する力、膨潤力には種による差があり、カイエネンシスは高温でよく膨らむ傾向を示しました。
加熱して糊にする試験では、ロツンダタが最も高い最大粘度を示し、加熱を続けても粘りが崩れにくい安定した糊になりました。冷ました後の最終的な粘度もロツンダタが最も高くなりました。一方、アラタは糊になり始める温度が最も高く、加熱中に粘りが落ちる度合いも最も大きいという結果でした。冷却時に粘度が戻る度合い(セットバック)には種による有意な差はみられませんでした。糊化温度はいずれも70℃を超えていました。
糊状にしたでんぷんは、3種ともかき混ぜる力が強いほど流れやすくなる性質(擬塑性)を示し、液体のように流れる性質よりも、ゴムのように元に戻ろうとする弾性的な性質が優勢でした。中でもロツンダタは、流れ始めるのに必要な力が最も大きく、構造がよりしっかりしていることが示されました。
この研究が示すこと
研究チームは、3種のヤムイモのでんぷんがそれぞれ異なる物理化学的・機能的・熱的・流動的な性質を持っていることを示し、いずれも付加価値のある食品用でんぷん源となりうると結論づけています。同じヤムイモでも種によって粘りや膨らみ方、糊の硬さが異なり、それぞれ異なる技術的特徴を持つでんぷん源になりうるという点が、この研究の要点です。なお著者らは、同じ種でも栽培地域の条件によってでんぷんの性質が変わりうる点にも注意を促しています。
原著論文の著者・所属:Katherine Paternina-Sierra(Engineering, Business Administration Program, Agricultural and Agroindustrial Innovation and Development Research Group, Faculty of Economics, University of Cartagena, Cartagena de Indias 130015, Bolívar, Colombia)、Piedad Montero-Castillo(Agricultural and Agroindustrial Innovation and Development Research Group, University of Cartagena, Cartagena de Indias 130015, Bolívar, Colombia)、Diofanor Acevedo-Correa(Tourism Administration Program, Innovation, Management and Engineering Research Group, University of Cartagena, Cartagena de Indias 130015, Bolívar, Colombia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Katherine Paternina-Sierra, Piedad Montero-Castillo, Diofanor Acevedo-Correa. Unlocking the Potential of Three Yam Species (Dioscorea spp.) as Starch Sources: Physicochemical, Functional, Morphological, Thermal, and Rheological Characterization. Polymers 2026-10-06. DOI: 10.3390/polym18192433. 原著ライセンス:CC BY.