著者の所属・活動拠点の国は、コンゴ民主共和国、ナイジェリアです。
掲載誌:Applied Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ヤムイモはアフリカ、アジア、南北アメリカの熱帯・亜熱帯で栽培されるイモ類で、世界の生産量の98%以上をアフリカが占めます。研究チームによると、コンゴ民主共和国東部ではヤムイモは十分に活用されていない作物とされ、消費や生産を促す取り組みも思うように進んでいません。その主な理由として著者らは、付加価値のある商品を生み出す選択肢が乏しい点を挙げています。食べ方が伝統的な料理に限られていること、加工法が標準化されていないこと、品質が一定しないことも課題とされています。
これまでの研究は、特定の品種や加工法、特定の食品だけを扱ったものが多く、品種と加工法の組み合わせがさまざまな食品の品質にどう影響するかは十分に分かっていませんでした。そこで研究チームは、品種と加工法が組み合わさって、ヤムイモ食品の物理的・化学的な性質や、見た目・味などの官能特性に影響するという仮説を立てて調べました。
何をどのように調べたか
研究には、同国東部の南キブ州で広く親しまれている在来の3品種を使いました。Kasakuraは「ダイオスコレア・ドゥメトルム」という種に属します。Kitende MauveとBigejaは「ダイオスコレア・アラタ」という種の品種で、果肉はそれぞれ紫色と黄色です。
加工法は3種類です。1つ目は煮る方法で、洗ったイモを約100グラムずつに切って水で煮ました。煮る時間は地元の調理習慣に合わせ、2品種は1時間、Kasakuraは4時間としました。2つ目はブランチングで、薄切りにしたイモを78℃で10分間加熱する短時間の湯通しです。3つ目は浸漬で、薄切りを常温の水に4日間浸けました。ブランチングまたは浸漬したイモは、乾燥・製粉して粉にしました。この粉からは、湯で練り上げて作る主食のフフと、パンを作りました。比較対照として、フフにはキャッサバ粉とモロコシ粉、パンには精製小麦粉と全粒小麦粉を用いました。
分析では、粉が水や油をどれだけ吸うか、水を含んでどれだけ膨らむかといった加工上の性質を測りました。あわせて、デンプンとその成分であるアミロースとアミロペクチンの量を測定しました。ポリフェノールやフラボノイド、アルカロイドといった植物由来の成分と、タンパク質・脂質・炭水化物・繊維などの栄養組成も調べています。食べやすさの評価には、日頃からヤムイモを食べている20〜40歳の一般消費者30人が参加しました。参加者は、煮たイモ、フフ、パンの色・香り・食感・味・総合的な好ましさを5段階で採点しました。
主な結果
品種と加工法はいずれも、調べた性質に有意な差をもたらしました。ブランチングした粉は水や油をよく吸い、よく膨らむ傾向を示しました。特にKasakuraのブランチング粉は、吸水性が308%、膨潤力が1グラム当たり8.72グラム、吸油性が1グラム当たり3.08グラムに達しました。ブランチングはデンプンも最もよく保ち、Kasakuraでは100グラム当たり総デンプン91.43グラム、アミロペクチン74.52グラムでした。一方、煮たイモでは品種にかかわらず、総デンプンが74.8%、アミロペクチンが78.8%、アミロースが73.6%減少したと報告されています。
植物由来の成分は、どの加工でも減少しました。そのなかで浸漬は最も多くの量を残し、特にBigejaで多く保たれていました。栄養組成では、煮る加工でタンパク質、脂質、繊維の減少が最も大きく、浸漬では炭水化物とエネルギーの減少が最も大きいという結果でした。
官能評価では、煮たイモのなかでKasakuraの総合的な好ましさが最も高く、Bigejaはすべての項目で最も低い評価でした。ヤムイモ由来のフフとパンでは、Kitende Mauveから作ったものが最も高い受容性を示しました。ただし、フフについては、味・食感・後味・総合評価の点で、対照のキャッサバのフフがヤムイモのフフを上回ったことも報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、ヤムイモから作る食品の品質が、品種と加工法の組み合わせによって大きく変わることを示しました。官能評価では、煮て食べる場合はKasakura、フフやパンにする場合はKitende Mauveが好まれました。この結果は、用途によって向く品種と加工法が異なることを示しています。研究チームはこの結果を、品種に応じた加工法を選ぶことで、コンゴ民主共和国東部においてヤムイモの付加価値を高める機会があることを示すものと位置づけています。
原著論文の著者・所属:Justine Asifiwe Lwaboshi(Faculty of Agriculture and Environmental Sciences, Université Évangélique en Afrique (UEA), Bukavu, Democratic Republic of the Congo)、Jean Mubalama Mondo(Department of Agronomy, Université Officielle de Bukavu (UOB), Bukavu, Democratic Republic of the Congo; Faculty of Agriculture and Environmental Sciences, Université Évangélique en Afrique (UEA), Bukavu, Democratic Republic of the Congo)、Caroline Sibomana Imani(Faculty of Agriculture and Environmental Sciences, Université Évangélique en Afrique (UEA), Bukavu, Democratic Republic of the Congo)、Rodrigue Basengere Ayagirwe(Faculty of Agriculture and Environmental Sciences, Université Évangélique en Afrique (UEA), Bukavu, Democratic Republic of the Congo)、Dominique Aganze Mulume(Faculty of Agriculture and Environmental Sciences, Université Évangélique en Afrique (UEA), Bukavu, Democratic Republic of the Congo)、Esther Rehema Matendo(Department of Agronomy, Université Officielle de Bukavu (UOB), Bukavu, Democratic Republic of the Congo; Faculty of Agriculture and Environmental Sciences, Université Évangélique en Afrique (UEA), Bukavu, Democratic Republic of the Congo)、Serge Shakanye Ndjadi(Faculty of Agriculture and Environmental Sciences, Université Évangélique en Afrique (UEA), Bukavu, Democratic Republic of the Congo)、Paterne A. Agre(International Institute of Tropical Agriculture (IITA), Ibadan, Nigeria)、Asrat Asfaw(International Institute of Tropical Agriculture (IITA), Ibadan, Nigeria)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Justine Asifiwe Lwaboshi, Jean Mubalama Mondo, Caroline Sibomana Imani, et al. Effects of cultivar and processing methods on physicochemical properties and sensory attributes of yam-based food products. Applied Food Research 2026-09-19. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102596. 原著ライセンス:CC BY.