果物や野菜を積極的にとることは健康的な食生活の基本とされていますが、家庭にどのような果物・野菜が置かれているかは、所得によって差があるのではないかという見方があります。ただし、果物・野菜には生鮮だけでなく、冷凍、缶詰、乾燥といった複数の形態があり、これらを一括りに『家にあるかどうか』だけで捉えると、実態を見誤る可能性があります。今回紹介する研究は、この点に着目し、家庭内にある果物・野菜の形態別の入手可能性と、親・子どものナトリウム(食塩相当量に関わる成分)および添加糖の摂取量との関連を、所得層ごとに調べたものです。研究は米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校に所属するLeslie A Lytle氏らのグループによってまとめられ、2026年9月に公表される予定です。
どのように調べたのか
この研究は横断的なデータ分析で、4つの研究から集められた合計960組の親子ペアを対象としています。研究チームは『家庭内食品在庫調査(ホームフードインベントリー)』という手法を用い、各家庭にある果物・野菜を「生鮮」「冷凍」「缶詰」「乾燥」という形態別に記録しました。それと合わせて、親と子それぞれのナトリウム摂取量および添加糖摂取量も評価しています。所得の代理指標としては、給食費の無償・減額の対象になっているかどうか(フリー・リデュースト・ランチの利用資格)が用いられ、この基準で世帯を所得層別に分けたうえで、各形態の果物・野菜の入手可能性と栄養素摂取量との相関係数が算出されました。
研究でわかったこと
分析の結果、野菜全体の数(形態を問わない合計)、生鮮の果物・野菜、そして缶詰の果物については、所得層による有意な差は見られなかったと報告されています。一方で、冷凍の果物・野菜については、低所得世帯のほうが高所得世帯よりも数が少ない傾向が示されました。また、缶詰の野菜に限っては、低所得世帯のほうが有意に多いという結果が得られています。もっとも、この缶詰野菜の多さは、低所得世帯の親・子どものナトリウム摂取量とは関連が見られなかったとされており、『缶詰野菜が多い家庭ほど食塩摂取が多い』といった単純な図式は、この研究データからは支持されなかった形です。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
著者らは、低所得世帯の食環境について語られがちな『こうであるはずだ』という想定は、実際にはその対象となる地域社会の中で確かめる必要があると述べています。今回の結果が示すように、所得層による差が予想と異なる形態で現れたり、差があっても栄養素摂取との関連が伴わなかったりするケースがあるため、地域や集団ごとの実情を踏まえた評価が、より正確なリスク把握や効果的な支援策の設計につながるという考え方が示されています。この研究は横断的なデータに基づく一つの分析であり、所得と食品入手可能性・栄養素摂取の関係について確定的な結論を出すものではない点には留意が必要です。
まとめ
果物・野菜の『量』だけでなく『形態』に着目したこの研究は、所得による食環境の違いを単純化して捉えることの難しさを示唆しています。冷凍品の少なさや缶詰野菜の多さなど、所得層ごとに異なる傾向は見られたものの、それが必ずしもナトリウムや添加糖の摂取量の差に直結するわけではないという結果は、家庭の食品環境を評価する際に、思い込みではなく実際のデータを地域ごとに確認することの重要性を後押しするものといえそうです。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Leslie A Lytle, Mary O. Hearst, Ziou Jiang, et al. Home Availability of Different Forms of Fruits and Vegetables and Parent/Child Diet by Income: Findings from 4 Studies.. ノースカロライナ大学図書館 (2026). DOI: 10.17615/g6gs-ak54.