肉や卵、大豆製品などタンパク質を多く含む食品は、ダイエットや体重管理の文脈でしばしば話題になります。しかし「タンパク質を多く摂ると体重にどう影響するのか」という問いは、実は一筋縄ではいきません。人によって普段からタンパク質を多く摂る傾向がある場合と、ある時期だけ一時的に摂取量が増減する場合とでは、体格への影響が異なる可能性があるからです。今回紹介する研究は、中国の成人を対象に、この「習慣的な摂取量の違い」と「個人内での摂取量の変動」を区別しながら、タンパク質摂取量とBMI(体格指数)の関係を長期にわたって調べたものです。
どのように調べたのか
研究チームは、1993年から2011年にかけて実施された中国健康栄養調査(China Health and Nutrition Survey)の7回分の調査データを用いました。対象は22,634人の成人で、複数回の調査から得られた62,980件の観測データが解析に使われています。中国はこの期間、急速な栄養転換と都市化を経験しており、その中でタンパク質摂取と体格の関係がどう変化してきたかを追える点が特徴です。
解析には三水準の「栄養素密度モデル」という統計手法が用いられました。これは、ある人が長期的に見て平均的にどれくらいのエネルギー比率をタンパク質から摂っているか(習慣的な between-person、つまり人と人の差にあたる部分)と、その人自身が調査ごとにどれだけ摂取量を変動させているか(within-person、個人内変動にあたる部分)とを、数式的に切り分けて評価する方法です。あわせて、別の計算方法(代替の栄養素密度モデルおよびエネルギー残差モデル)でも結果が確認され、性別や省ごとの違い、都市化の程度、身体活動や余暇の座位時間なども調整要因として検討されています。
研究でわかったこと
まず、習慣的なタンパク質摂取比率が高い人ほど、BMIが高い傾向が確認されました。具体的には、総エネルギーに占めるタンパク質の割合が5パーセントポイント高い人は、BMIが平均0.361 kg/m²高いという関連が示されています(95%信頼区間0.275〜0.447、統計的に有意)。一方で、同じ人が調査ごとにタンパク質摂取比率を変動させた場合の関連(個人内変動)については、主要な解析モデルでは統計的に有意な関連は見られませんでした(推定値0.028、95%信頼区間−0.003〜0.059、p=0.090)。つまり、この研究の枠組みでは「その人がもともとどれくらいタンパク質を摂る食生活をしているか」という長期的な傾向の方が、「一時的に多く/少なく摂った」ことよりもBMIとの関連がはっきり見られたことになります。
さらに、この習慣的な関連の強さには男女差があり、男性(推定値0.618)の方が女性(推定値0.148)よりも関連が強いという結果でした(交互作用について統計的に有意)。また、この関連は省や長期的な都市化の状況によっても異なっていたと報告されています。身体活動や余暇の座位時間を追加で調整すると、女性の推定値は5.8%、男性の推定値は1.3%減弱したとされ、性別による違いの一部は生活活動の差でも部分的に説明されうることが示唆されています。個人内変動については、主要モデルおよび代替の栄養素密度モデルでは一貫して有意な関連が見られなかった一方、エネルギー残差モデルで見られたわずかな関連は、性別との交互作用項を含めるかどうかで結果が変わりやすいものだったとも述べられています。
この研究の読み方・注意点
この研究は、あくまで中国の成人を対象とした観察データに基づく分析であり、タンパク質摂取がBMIを直接的に変化させることを証明するものではありません。著者らは、肥満対策を考えるうえで、一律にタンパク質摂取を制限するような画一的なアプローチよりも、長期的な食事の質や、性別・地域といった集団ごとの背景を踏まえた対策の重要性を指摘しています。なお、この論文にはイギリスのブリストル大学、中国の同済大学、南昌航空大学に所属する著者が名を連ねていますが、日本の研究機関や日本の食習慣への言及は要旨・本文からは確認できませんでした。
まとめ
今回の研究では、中国の成人約2万2千人以上を対象にした長期データから、普段からタンパク質摂取比率が高い人ほどBMIも高い傾向にあることが示された一方、一時的な摂取量の変動とBMIとの関連ははっきりしませんでした。この関連は性別や地域によっても異なっており、一つの研究結果として、今後さらに検証が重ねられていく段階にあるといえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Yunqi Zhou, Fengwei Wang, Shijian Zhou. Longitudinal associations of habitual and within-person protein intake with BMI in Chinese adults. サイエンティフィック・リポーツ (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-69760-4. 原著ライセンス: cc-by.