著者の所属・活動拠点の国は、カザフスタンです。

掲載誌:Processes

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ヨーグルトやチーズなどの乳製品に、ビタミンや抗酸化成分を含むハーブ由来の素材を加えて栄養価を高める試みが世界各地で研究されています。しかし、こうした成分をそのまま混ぜると、製品の風味や食感を損なったり、保存中に成分が分解してしまったりする課題があります。今回紹介する研究では、ハーブ由来の生理活性物質を保護膜で包む『カプセル化』という技術を使い、カッテージチーズを原料にしたスプレッド(塗り広げるタイプの食品)に加える方法とその品質への影響が調べられました。研究はカザフスタンのShakarim大学食品工学研究科などの研究者らによって行われました。

ローズヒップ・エキナセア・レブゼアをアルギン酸とプルランで包む

この研究では、ローズヒップ、エキナセア、レブゼアという3種類のハーブ抽出物を、アルギン酸とプルランという2種類の食品用素材でカプセル状に包み込みました。このカプセルをカッテージチーズスプレッドに0〜5%の割合で加えたサンプルを複数作り、物理化学的な性質、ビタミンCやポリフェノール・フラボノイドといった機能性成分の含有量、抗酸化活性(DPPH法という測定方法を使用)、粘りや硬さといったレオロジー特性(流動・変形の性質)、カプセルが崩れずに保たれているかという構造的な健全性、そして食べたときの好ましさ(官能評価)や安全性を総合的に評価しています。

3%配合がバランスの良い結果に

評価の結果、カプセルを3%配合したものが、栄養面の強化と製品としての品質のバランスが最も良い配合とされました。この3%配合のスプレッドは、100gあたりビタミンC 0.94mg、ポリフェノール6.75mg、フラボノイド4.50mgを含み、DPPHによる抗酸化活性は6.0%、5点満点の官能評価では平均4.69点という結果でした。一方、カプセルを4%や5%まで増やすと機能性成分の量はさらに増えましたが、カプセルの粒が目立つようになり、味や食感の評価が下がって官能評価は4.11点、3.71点まで低下したと報告されています。

冷蔵保存中の変化も7日間にわたって調べられました。水分含量や水分活性(食品中の水の状態を示す指標)は統計的に安定して保たれ、乳酸菌数もおよそ7 log10 CFU/g前後を維持していたとされています。一方でpHは低下し、滴定酸度(酸の量を示す指標)とシネレシス(離水、水分がにじみ出る現象)は増加する傾向が見られ、官能評価上の品質低下は保存3日目以降に目立つようになったとのことです。それでも7日目の時点で、ビタミンCは初期値の92.6%、ポリフェノールは95.6%、抗酸化活性は94.0%が保たれていたと報告されています。また、保存期間を通じて病原微生物は検出されず、調べられた安全性の指標はいずれも許容範囲内にとどまっていたとされています。

この研究を読むうえでの留意点

この研究は、特定の配合と保存条件のもとで行われた一つの実験結果であり、他の乳製品や異なる保存環境でも同様の結果になるとは限りません。また、健康への効果を直接検証したものではなく、あくまで食品としての成分含有量や品質保持の観点からの評価である点にも留意が必要です。研究チームは、カプセルの配合量を増やすほど機能性成分は増える一方で、食感や風味への影響とのトレードオフがあることを示しており、今回のデータでは3%という配合が両者のバランス点として位置づけられています。

まとめ

この研究は、ハーブ由来の生理活性物質をアルギン酸とプルランでカプセル化し、カッテージチーズスプレッドに加えることで、風味や食感を大きく損なわずに機能性成分を補える可能性を示したものです。3%程度の配合が品質と栄養強化のバランスとして報告されていますが、これは一つの研究による知見であり、今後さらなる検証が期待される段階にあると言えます。

著者:Аlibek Muratbayev(Research School of Food Engineering, Shakarim University, Semey 071412, Kazakhstan)、Sandugash Toleubekova(Research School of Food Engineering, Shakarim University, Semey 071412, Kazakhstan)、Айтбек Какимов(Research School of Food Engineering, Shakarim University, Semey 071412, Kazakhstan)、Aigerim Bepeyeva(Research School of Food Engineering, Shakarim University, Semey 071412, Kazakhstan)、Gulmira Zhumadilova(Research School of Food Engineering, Shakarim University, Semey 071412, Kazakhstan)、Madina Jumazhanova(Research School of Food Engineering, Shakarim University, Semey 071412, Kazakhstan)、Zhadyra Imangaliyeva(Department of Food Technology, Almaty Technological University, Almaty 050000, Kazakhstan)、Nazerke Muratzhankyzy(Research School of Food Engineering, Shakarim University, Semey 071412, Kazakhstan)、M. M. Tashybayeva(Research School of Food Engineering, Shakarim University, Semey 071412, Kazakhstan)、Aslan Sovetkanov(Research School of Food Engineering, Shakarim University, Semey 071412, Kazakhstan)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Аlibek Muratbayev, Sandugash Toleubekova, Айтбек Какимов, et al. Processing and Quality Evaluation of Cottage Cheese Spread Enriched with Alginate–Pullulan-Encapsulated Herbal Bioactives. プロセッシズ (2026). DOI: 10.3390/pr14152483. 原著ライセンス: cc-by.