ヨーグルトは乳酸菌やカルシウム、たんぱく質を含む発酵乳製品として世界中で親しまれていますが、プレーンなヨーグルトそのものには、ポリフェノールやフラボノイド、アントシアニン、鉄分といった機能性成分はあまり含まれていません。そこで注目されているのが、野菜や香辛料由来の成分を加えて栄養価を高めた「機能性ヨーグルト」です。今回紹介する研究では、赤キャベツの成分をカプセル化したもの、天然の香り付け素材としてメキシカンコリアンダー(別名カルチャン)、そしてパールミレット(真珠のような形の穀物、日本ではトウジンビエと呼ばれる雑穀の一種)を組み合わせ、栄養面と食べやすさの両方を高めたヨーグルトの開発が試みられました。
この研究を行ったのは、インドのアッサム大学トリグナ・セン工科大学院農業工学科の研究者らと、ナイジェリアのデルタ州立科学技術大学の研究者による共同チームです。赤キャベツにはアントシアニンという色素成分が豊富に含まれていることが知られており、これをカプセルに閉じ込めてヨーグルトに配合することで、色合いや栄養面の変化を狙ったと考えられます。
どのように味や香りを評価したのか
研究チームは、赤キャベツカプセルの配合量を変えた5種類のヨーグルトを試作しました。これらを、訓練を受けた18名の評価者(パネル)が、見た目・色・味・香りの4つの観点から評価しています。
ここで使われたのが「ファジー論理」という数理的な手法です。人が「まあまあ美味しい」「かなり良い香り」といった言葉で感想を述べるとき、その表現には個人差やあいまいさがつきものです。ファジー論理は、こうした言葉による評価を数値に変換して扱うための枠組みで、人の感覚評価が持つ主観性やばらつきを、より体系的に処理できるようにする狙いがあると説明されています。
わかったこと
この手法を用いて解析した結果、赤キャベツカプセルを加えた5種類のヨーグルトはすべて「良い(good)」という評価区分に分類されました。また、4つの評価項目のうち、味が最も重要な品質要素として位置づけられ、次いで香り、色、見た目の順で重要度が高いという結果が示されています。
これらの結果から、研究チームは、赤キャベツカプセルを配合したヨーグルトが栄養面で優れているだけでなく、消費者に受け入れられやすい製品になり得ると述べています。ただし、これはあくまで今回のパネル評価に基づく結果であり、より幅広い商品化を進めるためには、他の機能性素材についてもさらに検討を重ねる必要があると研究チームは指摘しています。
この研究を読むうえでの注意点
今回の評価は18名という限られた人数のパネルによるものであり、味覚の感じ方には個人差や文化的背景による違いもあります。また、ここで「良い」と分類されたのはファジー論理という特定の解析手法を用いた結果であり、健康効果や栄養効果そのものを直接証明したものではありません。一つの研究として、今後さらに他の機能性素材との比較や、より大規模な検証が求められる段階にあると理解しておくとよいでしょう。
まとめ
この研究は、赤キャベツカプセルやパールミレットなどを組み合わせることで、ヨーグルトの栄養価と官能的な魅力を両立できる可能性を示したものです。味の評価が特に重視されるという結果は、今後の機能性食品開発において味づくりの重要性を改めて示していると言えるでしょう。今後、さらなる素材の検討を経て、実際の商品化につながるかどうかが注目されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Kasturi Pusty, Mriganka Shekhar Borah, Nani Gopal Mudoi, et al. Application of fuzzy logic in sensory evaluation of functional yoghurt from red cabbage encapsulates. アプライド・フード・リサーチ (2026). DOI: 10.1016/j.afres.2026.102462. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.