この研究は、ペルーの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ハチミツは糖のほかにポリフェノール(植物由来の抗酸化成分)や酵素、ビタミン、ミネラルなどを含む複雑な天然物で、その成分は花の種類や産地、養蜂の管理条件によって変わることが知られています。研究チームは、こうした違いが実際にどの程度現れるのかを確かめるため、ペルー北東部のアマソナス地方で採れたハチミツを対象に、化学組成と抗酸化活性、そして赤外線分光によるスペクトルの特徴を調べました。

著者らは本研究を探索的な予備調査と位置づけており、この地方のハチミツ生産全体を代表するものではなく、あくまで試料間の化学的なばらつきを初めて把握するための基礎情報だと述べています。

何をどう調べたか

調査対象は、アマソナス地方の4つの県にある異なる地区の独立した養蜂家から集めた8点のハチミツです。いずれも複数の花に由来する百花蜜で、1点が1つの養蜂場・1回の採蜜分に対応します。採蜜後3〜4日以内に大学の研究室へ運ばれ、加熱処理などを加えずに分析されました。

測定したのは、色を数値で表す指標、総ポリフェノール量、そして抗酸化活性です。抗酸化活性については、はたらき方の異なる三つの試験法(ABTS、DPPH、FRAP)を併用しました。糖の量はUHPLCという分離・定量装置でブドウ糖・果糖・ショ糖を測り、さらにフーリエ変換赤外分光法(FTIR)で試料に含まれる成分の特徴を反映したスペクトルを取得しました。得られたスペクトルには主成分分析(PCA)と階層的クラスター分析(HCA)という、多数のデータからパターンを取り出す統計手法を適用しています。

報告された主な結果

著者らは、試料間に統計的に意味のある違い(p<0.05)が認められたと報告しています。色については一様ではなく、CHSOやCHBAのように明度が低く暗い色調の試料がある一方、LUPRやRMSAのように明るく黄金色に近い試料もありました。

色の濃いハチミツはポリフェノール量が高く(634〜643 μmol TE/100 g)、色の薄いハチミツは抗酸化に関わる値が低く(300 μmol TE/100 g未満)なる傾向が示されました。総ポリフェノール量と抗酸化活性の間には正の相関(r=0.92〜0.94、p<0.001)が見られ、著者らはこれを両者の関連を示すものとしています。ただし個々の成分を詳しく特定する分析は行っていないため、因果関係までは言えないと注意を添えています。

糖については、すべての試料でブドウ糖と果糖が主成分でした。ブドウ糖は40.20〜46.50 g/100 g、果糖は25.10〜36.50 g/100 gの範囲で、一般にハチミツでは果糖のほうが多いとされるのに対し、今回はすべての試料でブドウ糖が果糖を上回りました。著者らは、花の由来を花粉分析で調べておらず酵素活性も測っていないため、この理由は特定できないとしています。ショ糖は3.16〜12.60 g/100 gと幅があり、国際的な基準であるコーデックス規格の5 g/100 g未満を満たしたのはLUOC、LUPR、RMSAの3点で、残る5点はこれを上回りました。

FTIRのスペクトルには、糖類や水、微量成分に対応する特徴的な吸収が確認されました。多変量解析により試料は組成の違いに基づいていくつかのグループに分けられ、主成分分析では全体のばらつきの最大84.0%を説明できたと報告されています。

この研究が示すこと

同じアマソナス地方の中でも、産地が異なれば色・ポリフェノール量・抗酸化活性・糖組成が大きく異なりうることが、実際の測定値として示されました。とくに色の濃さがポリフェノール量や抗酸化活性と並行して変化した点は、外観という分かりやすい手がかりが、他の分析値と合わせて読むことでハチミツの特徴づけに役立つ可能性を示唆しています。

同時にこの研究は、ショ糖が基準値を超える試料が複数あったことも記録しており、品質評価には複数の指標を組み合わせる必要があることを浮かび上がらせました。著者らは試料数が8点にとどまる点を限界として明示し、得られた関係は予備的なものだと繰り返し述べています。地域のハチミツの多様性を数値で捉えた出発点として読むのがふさわしい報告です。

著者:Katherine Reyna-Gonzales(Facultad de Ingeniería y Ciencias Agrarias, Instituto de Investigación, Innovación y Desarrollo para el Sector Agrario y Agroindustrial, Universidad Nacional Toribio Rodríguez de Mendoza de Amazonas)、Juan Carlos Altamirano-Oporto(Facultad de Ingeniería Ambiental, Biosistemas y de la Energía, Universidad Nacional Toribio Rodríguez de Mendoza de Amazonas)、Alexa J. Pajuelo-Muñoz(Facultad de Ingeniería y Ciencias Agrarias, Instituto de Investigación, Innovación y Desarrollo para el Sector Agrario y Agroindustrial, Universidad Nacional Toribio Rodríguez de Mendoza de Amazonas)、Frank Fernández-Rosillo(Instituto de Investigación de Ciencia de Datos, Universidad Nacional de Jaén)、Efraín M. Castro-Alayo(Facultad de Ingeniería y Ciencias Agrarias, Instituto de Investigación, Innovación y Desarrollo para el Sector Agrario y Agroindustrial, Universidad Nacional Toribio Rodríguez de Mendoza de Amazonas)、Ilse S. Cayo-Colca(Facultad de Ingeniería y Ciencias Agrarias, Instituto de Investigación, Innovación y Desarrollo para el Sector Agrario y Agroindustrial, Universidad Nacional Toribio Rodríguez de Mendoza de Amazonas)、Miguel Barrena(Facultad de Ingeniería Ambiental, Biosistemas y de la Energía, Universidad Nacional Toribio Rodríguez de Mendoza de Amazonas)、César R. Balcázar-Zumaeta(Facultad de Ingeniería y Ciencias Agrarias, Instituto de Investigación, Innovación y Desarrollo para el Sector Agrario y Agroindustrial, Universidad Nacional Toribio Rodríguez de Mendoza de Amazonas)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Katherine Reyna-Gonzales, Juan Carlos Altamirano-Oporto, Alexa J. Pajuelo-Muñoz, et al. Chemical profile, antioxidant activity, and FTIR-based multivariate analysis of honey from northeastern Peru. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-09-10. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1929136. 原著ライセンス:CC BY.