みかんやレモンの皮は、食べたあとにそのまま捨てられることがほとんどです。しかし近年、こうした果物の皮には食物繊維やポリフェノールなどが含まれていることに注目が集まり、食品廃棄物を減らしながら栄養価の高い食品を作る試みが世界各地で進められています。今回紹介する研究は、柑橘の一種であるガルガル(Citrus pseudolimon)の皮を粉末にし、小麦粉パンに混ぜ込むことで、パンの栄養や抗酸化能を高められるかを調べたものです。
研究でわかったこと
研究チームは、ガルガルの皮を乾燥させて粉末にした「GPP(galgal peel powder)」を、小麦粉に対して2%、5%、7%、10%という異なる割合で混ぜ込んだパン(バン)を作成しました。そのうえで、パンの物理化学的性質、食感、栄養成分、総ポリフェノール量(TPC)、抗酸化活性、そして人による官能評価という複数の観点から特性を比較しています。
官能評価は12名の準訓練パネリストによって行われ、その結果、GPPを5%まで配合したパンは味や食感などの点で許容できる範囲にとどまることが示されました。一方で、GPPの配合量を増やすほど、パンの硬さ(hardness)や噛みごたえ(chewiness)、かさ密度(bulk density)は有意に増加し、逆にまとまりやすさ(cohesiveness)、弾力性(springiness)、比容積(specific volume)は減少する傾向が見られました。つまり、皮の粉末を多く加えるほど、パンはより硬く、密で、ふわふわ感が少なくなる方向に変化したということです。
栄養成分の分析(近似分析)では、GPPの配合量が増えるにつれて食物繊維の含有量が増加した一方、粗タンパク質、粗脂肪、そして水分活性(aw)は減少することが確認されました。また、総ポリフェノール量(TPC、mg GAE/100 gで表示)は配合量の増加とともに有意に上昇し、ポリフェノール濃度がより高くなっていることが示唆されています。抗酸化活性についても、DPPH法およびFRAP法という2種類の測定方法によって評価されたところ、いずれもGPPの配合量が増えるほど有意に高くなることが報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ガルガルの皮という通常は廃棄されがちな部位を、パンという身近な食品に活用することで、食物繊維や抗酸化成分を補いつつ、食品廃棄の削減にもつなげられる可能性を示したものと位置づけられます。ただし、官能評価で許容範囲とされたのはGPP配合量が5%までであり、それを超える配合(7%や10%)では食感などの変化がより大きくなることも示されています。今回の結果はあくまで一つの研究によって得られたものであり、特定の健康効果を保証するものではありません。今後、他の条件下での検証や、より大規模な評価が積み重ねられることで、理解がさらに深まっていくものと考えられます。
まとめ
本研究は、柑橘の一種ガルガルの皮を粉末化して小麦粉パンに配合することで、食物繊維や総ポリフェノール量、抗酸化活性を高められる可能性を示しました。一方で、配合量が増えるほどパンの硬さや密度といった食感面の変化も大きくなり、官能的に許容される範囲は5%程度までとされています。食品廃棄物の削減と栄養価向上を両立させる工夫の一例として、今後の関連研究の広がりが注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ガルガルの皮粉末を強化した小麦粉パンの理化学的・官能的・食感的・栄養的・抗酸化特性(フード・セーフティ・アンド・ヘルス・2025年10月)