掲載誌:Journal of Accounting Research Utility Finance and Digital Assets

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的と背景

インドネシア・北スマトラ州の中心都市メダンでは、飲食業を営む零細・中小企業(MSMEs)の競争が激しくなっています。一方で、デジタルマーケティングは十分に活用されていないと論文は指摘しています。著者らはこうした状況を背景に、デジタルマーケティング、起業家としての能力、市場志向の3つが、事業者のマーケティング成果とどう関係するかを分析しました。

論文によると、メダン市でソーシャルメディアを使っていない飲食系事業者の割合は、2023年の58%から2025年には32%に減りました。それでも、デジタルリテラシーの低さ、インフラや費用の制約、店頭の顧客への依存が課題として残っています。また、この3つの要因について、先行研究の結果は一致していませんでした。

ここでいう「起業家能力」は、市場の動向を読み取り、工夫し、計算されたリスクを取りながら、事業を体系的に運営する力を指します。「市場志向」は、顧客のニーズの変化や競合の動きを把握し、それを経営判断に生かす姿勢のことです。分析は、企業が持つ独自の資源が競争力の源になるという「資源ベース理論」を枠組みにしています。

何を調べたか

調査は2026年2月から7月にかけて行われました。対象は、メダン市の協同組合・中小企業担当機関が支援する飲食系事業者1,284事業者です。そこから100事業者を選び、1事業者につき1人、事業の状況に詳しい経営者または管理者が回答しました。

著者らは、回答から得た4つの指標について、質問項目が妥当で回答が安定していることを確認しました。そのうえで、統計手法の一つである重回帰分析を使い、3つの要因のそれぞれがマーケティング成果とどの程度結びつくかを調べました。

主な結果

3つの要因のうち、個別に統計的に意味のある関係が確認されたのは市場志向だけでした。市場志向が高い事業者ほど、マーケティング成果も高い傾向が見られました。

デジタルマーケティングと起業家能力には、単独では統計的に意味のある関係が認められませんでした。起業家能力の係数はわずかにマイナスでした。ただし統計的に意味がないため、著者らは「起業家能力が高まると成果が下がる」ことの証拠にはならないと説明しています。

3つの要因を同時にモデルへ入れた場合、全体としては成果を有意に説明できました。それでも説明できたのは成果のばらつきの約20.5%で、調整後の値では約18%でした。著者らはこの結果から、マーケティング成果には製品の品質、価格、立地、資金、顧客との関係など、モデルに含まれていない多くの要因が関わっていると述べています。

研究が示すこと

著者らは、事業者の支援を「デジタル化を進めること」だけに集中させても成果にはつながりにくいと述べています。顧客の声や競合の動きを理解し、それを活用する市場志向を軸にすることが大切だという考えです。

提言として、デジタル技術の研修と起業家能力の研修を別々に行うのではなく、組み合わせて行う方法を示しています。具体的には、まず顧客と競合を把握し、次に機会を見つけて商品を磨き、そのうえで適したデジタル経路を選ぶという流れです。この研究は、支援を受ける飲食系事業者にとって、市場を理解する姿勢がマーケティング成果と最も一貫して結びついていたことを示しています。

原著論文の著者・所属:Lola Dwi Antika(Universitas Potensi Utama)、Austin Alexander Parhusip(Universitas Potensi Utama)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lola Dwi Antika, Austin Alexander Parhusip. THE ROLE OF DIGITAL MARKETING, ENTREPRENEURIAL COMPETENCE AND MARKET ORIENTATION IN ENHANCING MARKETING PERFORMANCE DEVELOPMENT AMONG MSMES IN MEDAN CITY (A CASE STUDY OF MSMES ASSISTED BY THE MEDAN CITY COOPERATIVE). Journal of Accounting Research Utility Finance and Digital Assets 2026-10-06. DOI: . 原著ライセンス:CC BY.