著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Journal of Accounting Research Utility Finance and Digital Assets
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシア・北スマトラ州の中心都市メダンには、多数の零細・中小事業者(MSME)が登録されています。論文によると、市の協同組合・中小企業関連部局のデータシステムには38,343事業者が登録されていますが、2025年末までに部局から直接の指導を受けたのは1,346事業者にとどまっていました。著者らはこの差を、事業者数の増加に対して財務管理を含む経営の質が追いついていない状況の表れとみています。
著者らが飲食業の事業者を対象に事前調査を行ったところ、73%が事業予算計画を立てておらず、77%が現金の出入りを管理していないなど、事業資金の計画が十分でない実態が示されました。研究チームは、金融に関する知識や判断力を指す「金融リテラシー」、スマートフォンなどで支払いを受け取る「電子ウォレット」の利用、そして事業資金の計画という三つの要素が、飲食系事業者の財務管理とどう関わるのかを調べました。三つの要素を同時に扱った先行研究が少ないことも、研究の動機に挙げられています。
調べ方
調査は2026年3月下旬から7月にかけて、メダン市の部局の支援を受ける飲食系事業者を対象に行われました。2025年時点で、この対象となる事業者は1,284ありました。著者らはこの数をもとに標本の大きさを計算し、約93という値を得たうえで、回答者を100人としました。
回答者は、条件を満たす人を意図的に選ぶ方法で選ばれました。条件は、メダン市で飲食業を営んでいること、開業から1年以上たっていること、事業の取引に電子ウォレットを使っていること、そして質問票に正直にすべて回答する意思があることです。研究チームは質問票の回答から各要素の得点を求め、複数の要素が同時に財務管理の得点とどう結びつくかを調べる重回帰分析を行いました。質問項目が測りたい内容を適切にとらえているか、回答が安定しているかも事前に確認されています。
主な結果
分析の結果、金融リテラシー、電子ウォレットの利用、事業資金の計画の三つは、いずれも財務管理と統計的に有意な正の関係を示しました。論文はこれを、三つの要素がそれぞれ財務管理に正の影響を与えるという仮説が支持された結果として報告しています。
要素どうしの強さを比べる標準化係数は、事業資金の計画が0.480、金融リテラシーが0.263、電子ウォレットの利用が0.192でした。著者らが計算した各要素の寄与の割合も、事業資金の計画が35.9%、金融リテラシーが17.5%、電子ウォレットの利用が11%でした。このため著者らは、三つの中で事業資金の計画が最も大きく関わっていると結論づけています。
三つの要素を合わせると、財務管理の得点のばらつきのうち約63.3%を説明できるという結果も示されました(自由度調整済み決定係数)。残りの約36.7%は、この研究で扱っていない別の要因によるものとされています。
研究が示すこと
この研究は、メダン市の飲食系事業者にとって、知識や電子決済の活用に加えて、予算や資金の見通しを立てる計画づくりが財務管理と特に強く結びついていることを示しました。著者らは、利益を体系的に計算し、収入・支出・利益を日常的に記録して分けること、電子ウォレットを支払い手段にとどめず取引記録にも活用すること、目標や資金需要を計画し、予算と実績を定期的に比べることを事業者に勧めています。対象は電子ウォレットを使う市内の飲食系事業者100人であり、結果はこの範囲で得られたものとして読む必要があります。
原著論文の著者・所属:Ahmad Rivaldo Tarigan(Management Study Program / Universitas Potensi Utama, Medan, Indonesia)、Austin Alexander Parhusip(Management Study Program / Universitas Potensi Utama, Medan, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ahmad Rivaldo Tarigan, Austin Alexander Parhusip. THE EFFECT OF FINANCIAL LITERACY, E-WALLET USAGE AND BUSINESS FINANCIAL PLANNING ON MSME FINANCIAL MANAGEMENT IN MEDAN CITY. Journal of Accounting Research Utility Finance and Digital Assets 2026-10-06. DOI: . 原著ライセンス:CC BY.