掲載誌:JURNAL BIOLOGI TROPIS
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシアでは卵の需要が伸びるにつれて採卵養鶏が拡大し、産卵期間を終えた「廃鶏(はいけい)」も増えています。廃鶏の肉は動物性たんぱく質の供給源として使える余地がありますが、食肉用に育てられた鶏に比べて質が劣るとされ、十分に活用されていません。年齢を重ねた鶏の肉には、筋肉どうしをつなぐ結合組織、特にコラーゲンが多く、肉が硬く筋っぽくなりやすいためです。
肉を柔らかくする方法の一つに、有機酸を含む天然素材に漬け込む「マリネ」があります。ライム(Citrus aurantifolia)の果汁はクエン酸を多く含みます。研究チームは、その酸が肉のpHを下げて結合組織のたんぱく質に作用し、柔らかさにつながる可能性があると考えました。そこで、インドネシアの味付け乾燥肉「デンデン」を廃鶏肉で作り、漬け込みに使うライム果汁の濃度によって、物理的な品質と食べた人の好みがどう変わるかを調べました。
どのように調べたか
研究チームは、骨と脂肪を取り除いた廃鶏肉を厚さ約0.5センチに切り、150グラムずつに分けました。これを、ライム果汁を含まない対照(0%)と、2%、4%、6%、8%、10%の計6段階の濃度のライム果汁に30分間漬けました。各条件は3回ずつ繰り返しています。その後、ニンニク、コリアンダー、こしょう、塩、ヤシ砂糖、甘口醤油、タマリンド水などの調味料をなじませて肉をたたき、乾燥機で100℃、約2時間乾燥させました。
物理的な品質としては、針状の器具を押し当てて測る「ペネトロメーター」で柔らかさを調べ、加熱による重量の減少(加熱損失)も測りました。加えて、20人のパネリスト(試食評価者)に色、食感、香り、味を1〜5点で評価してもらい、好ましさを比べました。
主な結果
論文によると、ライム果汁の濃度を上げると柔らかさが統計的に明確に向上しました。0〜4%では対照とほとんど差がありませんでしたが、6%と8%で変化がはっきり現れ、10%で最も柔らかくなりました。研究チームは、果汁のクエン酸が肉の酸性度を高め、たんぱく質の変性やコラーゲンの分解を促したためだと考察しています。
一方で、加熱損失も濃度とともに増える傾向がありました。報告では、対照の約25.3%に対し、10%では約35.2%でした。著者らは、酸によってたんぱく質の構造が変わって水を保つ力が弱まり、加熱中に水分などが多く失われたためだと推測しています。
試食評価では、濃度が高いほど食感、香り、味の点数が上がりました。香りは対照の1.00点から10%の4.12点へ、味は1.00点から4.28点へ、食感は1.67点から3.52点へと高まりました。著者らは、ライムの香り成分が廃鶏肉特有の生臭さを和らげ、酸味が甘く香ばしい味付けを引き立てた可能性を挙げています。色の評価には、濃度による明確な差はみられませんでした。研究チームは、色がヤシ砂糖や甘口醤油、加熱による褐色化の影響を強く受けるためだと説明しています。
研究が示すこと
著者らは、調べた範囲では10%のライム果汁で漬け込む条件が最も良い結果をもたらしたと結論づけています。その根拠は、柔らかさが最も高く、食感・香り・味の評価も最も好まれたことです。ただし、同じ条件では加熱による重量の減少も大きくなっていました。この研究は、身近な果汁を使った簡単な下処理によって、硬さが課題とされる廃鶏肉をより好まれる加工食品に近づけられる可能性を示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Muhammad Husen Haiqal、Ludfia Windyasmara(Universitas Veteran Bangun Nusantara)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muhammad Husen Haiqal, Ludfia Windyasmara. The Effect of Lime Juice (Citrus aurantifolia) Concentration on the Physical and Sensory Quality of Dried Chicken from Culling Laying Hens. JURNAL BIOLOGI TROPIS 2026-09-11. DOI: 10.29303/jbt.v26i4.12623. 原著ライセンス:CC BY.