著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリア、ドイツ、南アフリカです。
掲載誌:Food Bioscience
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
オールドマン・ソルトブッシュ(学名 Atriplex nummularia)は、塩分の多い土地でも育つ「塩生植物」の一種です。研究チームによると、この植物は健康に役立つ働きが期待される「機能性食品」の候補とされています。一方で、調理法の違いが、葉に含まれる植物由来の化学成分や栄養の質にどう影響するかは分かっていませんでした。
そこで研究チームは、ゆでる、焼く(ロースト)、蒸す、炒めるという4つの調理法が、葉の二次代謝物、栄養素、抗酸化活性に与える影響を調べました。二次代謝物とは、植物が生育に直接必要な成分とは別につくる化合物で、ポリフェノールやテルペノイドなどが含まれます。
調べた方法
研究チームは「ノンターゲット・メタボロミクス」という手法を使いました。これは、あらかじめ特定の成分に絞らず、試料に含まれる多数の代謝物を網羅的に測定し、その全体像を比べる方法です。あわせて、たんぱく質、食物繊維、カロテノイド、ミネラルなどの栄養成分と、抗酸化活性も測定しました。抗酸化活性は、FRAP法とABTS法という2種類の代表的な測定法で評価されています。
この分析で、テルペノイド、ポリフェノール、脂質、ヌクレオシド、糖質の誘導体、アミノ酸の誘導体、クロロフィル(葉緑素)の誘導体など、90種類の代謝物が推定的に同定されました。「推定的」とは、測定データから候補となる成分名を割り当てた段階であることを意味します。
主な結果
論文によると、調理法ごとに異なる特徴が見られました。焼いた場合は、調理によって量が変化した代謝物のうち半数以上が増加する方向に変化し、フラボノイド(ポリフェノールの一種)の減少も比較的小さかったと報告されています。
炒めた場合は、食物繊維の含有量が最も高く、乾燥重量100グラムあたり48.76グラムでした。また、ミネラルの吸収を妨げることがある成分として知られるフィチン酸が、有意に減少したとされています。
ゆでた場合は、たんぱく質が最も多く、乾燥重量100グラムあたり21.77グラムでした。カロテノイドの損失も最も小さく、乾燥重量100グラムあたりの値は、シス型β-カロテンが143.77ミリグラム、トランス型β-カロテンが959.65ミリグラム、ルテインが121.02ミリグラムと報告されています。
蒸した場合と焼いた場合は、調理法の中で鉄と亜鉛が多く含まれていました。乾燥重量1キログラムあたりの値は、鉄が蒸しで60.93ミリグラム、焼きで64.04ミリグラム、亜鉛が蒸しで33.73ミリグラム、焼きで38.51ミリグラムです。抗酸化活性もこの2つの調理法で高く、FRAP法では乾燥重量1グラムあたり104.87および103.32マイクロモル(鉄イオン換算)、ABTS法では42.70および46.79マイクロモル(トロロックス換算)と報告されています。
さらに、焼いた場合と炒めた場合には、核酸の構成成分にかかわるプリン類が増え、ゆでた場合には減っていました。
研究が示すこと
この研究は、同じソルトブッシュの葉でも、調理法によって残りやすい成分や増える成分が異なることを示しています。たんぱく質やカロテノイド、食物繊維、ミネラル、抗酸化活性など、どの成分に注目するかによって、相対的に有利な調理法が変わるということです。研究チームは、葉の代謝物の全体像を調べたこの結果が、調理法の影響を理解する手がかりになるとしています。
原著論文の著者・所属:Yanlin Sun(ARC Industrial Transformation Training Centre for Uniquely Australian Foods, Queensland Alliance for Agriculture and Food Innovation, The University of Queensland, Indooroopilly, QLD 4068, Australia)、Laura Grünberg(Analytical Food Chemistry, Technical University of Munich, Freising, Germany)、Michael E. Netzel(ARC Industrial Transformation Training Centre for Uniquely Australian Foods, Queensland Alliance for Agriculture and Food Innovation, The University of Queensland, Indooroopilly, QLD 4068, Australia)、Chidinma Ezeofor(Phytochemical Food Network, Department of Crop Sciences, Tshwane University of Technology, Pretoria 0183, South Africa)、Dharini Sivakumar(ARC Industrial Transformation Training Centre for Uniquely Australian Foods, Queensland Alliance for Agriculture and Food Innovation, The University of Queensland, Indooroopilly, QLD 4068, Australia; Phytochemical Food Network, Department of Crop Sciences, Tshwane University of Technology, Pretoria 0183, South Africa)、Yasmina Sultanbawa(ARC Industrial Transformation Training Centre for Uniquely Australian Foods, Queensland Alliance for Agriculture and Food Innovation, The University of Queensland, Indooroopilly, QLD 4068, Australia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yanlin Sun, Laura Grünberg, Michael E. Netzel, et al. Insights into the thermal processing of Saltbush (Atriplex nummularia): Untargeted metabolomics and nutritional profiling. Food Bioscience 2026-09-11. DOI: 10.1016/j.fbio.2026.109971. 原著ライセンス:CC BY.