乳がんの罹患率と死亡率は2050年にかけてさらに上昇すると見込まれており、治療と並行して生活習慣を整えることへの関心が世界的に高まっています。そのなかで「体重や体型が食習慣とどう結びついているのか」を乳がん患者に絞って調べた研究が、2026年6月に医学誌『フロンティアーズ・イン・オンコロジー』に発表されました。
研究でわかってきたこと
この研究はポーランドの大学病院で乳がんと診断された31〜65歳の女性108人を対象に行われました。参加者をBMI(体格指数:身長と体重から算出する体格の目安)が「標準範囲内」のグループと「標準を超える」グループに分け、食習慣と健康行動を比較しています。
結果として、BMIが標準を超えるグループでは、体脂肪率や内臓脂肪が高く、睡眠時間が短く、喫煙率も高い傾向が報告されました。食事の面では、野菜・果物・発酵乳製品の摂取量が標準グループより少なく、食事の規則性も低い傾向が見られたとされています。一方、栄養知識については、両グループとも実際には不十分であるにもかかわらず、多くの女性が「自分の知識は十分だ」と自己評価していた点が注目されます。
研究者たちは、こうした結果をふまえ、体重超過の乳がん患者に対して食事教育・身体活動・睡眠衛生を組み合わせた支援を標準的なケアに組み込む必要性を強調しています。ただし、これはあくまでも観察された傾向であり、特定の食品や行動が疾患の経過を直接変えることを示すものではありません。
研究が注目した「野菜・果物・発酵乳製品」を食卓で見てみると
特定の食品が乳がんを予防したりリスクを下げたりするものではありません。ここでは、研究で摂取量の差が見られた「野菜・果物・発酵乳製品」の代表として、身近な食品の実測データを紹介します。
キャベツは小1枚(約50g)あたりエネルギー約12kcalと低く、食物繊維は100gあたり1.8g含まれています。日本人の食事摂取基準における女性(30〜49歳)の食物繊維の1日の目標量18gに対して100gあたり10%にあたります。食物繊維は野菜から手軽に摂れる成分の一つです。
赤色トマトは中1個(約150g)あたりエネルギー約30kcalで、水分が100gあたり94gと豊富なみずみずしい野菜です。そのまま食べても加熱しても使いやすく、食事に彩りを添えながら低カロリーで取り入れやすい一品です。
りんご(皮つき)は中1個(約250g)あたりエネルギー約140kcalで、食物繊維は100gあたり1.9g含まれています。ふじ・つがる・王林・千秋など多くの品種が対象の実測値です。皮ごと食べることで食物繊維をそのまま摂れます。
発酵乳製品の代表として、ヨーグルト(全脂無糖)はカップ1杯(約210g)あたりエネルギー約118kcalで、たんぱく質は100gあたり3.6gです。カルシウムは100gあたり120mg含まれており、朝食や間食にそのまま食べやすい発酵乳製品です。
毎日の食事に取り入れるヒント
今回の研究が示した「野菜・果物・発酵乳製品」は、どれも特別なものではなく、日常の食卓に比較的取り入れやすいものばかりです。キャベツやトマトをもう一品添える、食後のデザートにりんごを選ぶ、朝食にヨーグルトを組み合わせる——こうした小さな選択の積み重ねが、食事の質を底上げするきっかけになります。
研究では、栄養知識の自己評価が実態よりも高くなりがちであることも指摘されていました。「なんとなく食べている」から「なぜこれを食べるのか」に意識が向くだけで、日々の選択は変わってきます。
また、研究は食事だけでなく睡眠や身体活動との関連も示しています。食習慣は単独ではなく、生活全体のリズムと組み合わさって機能するものです。
バランスの良い食生活を、毎日の積み重ねで
今回の研究は、乳がん患者を対象としたポーランドでの観察研究であり、日本人の一般集団にそのまま当てはまるものではありません。しかし「野菜・果物・発酵乳製品を意識して取る」という方向性は、幅広い年代の女性にとっても参考になる視点です。
食事の「質」と「規則性」は、特別な食品を探すことよりも、毎日の選択の習慣として積み上げるもの。今日の一皿が、明日の自分の土台をつくっていきます。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:Impact of body mass index on dietary habits and health behaviors in breast cancer patients(フロンティアーズ・イン・オンコロジー(2026-06-01))
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・食品安全委員会・文部科学省 食品成分データベース