著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Current Developments in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

果物と果汁を分けて見る理由

果物は世界各地の食事指針で勧められている食品です。米国の食事指針では、1日2000キロカロリーの食事の場合、果物を1日2カップ相当とることを目安としています。しかし論文によると、米国では2歳以上の人のおよそ8割がこの目安に届いていません。

米国の指針では、果汁100%のジュースも果物の一部に数えられます。ただし、推奨量の少なくとも半分は果汁ではなく丸ごとの果物からとるよう求めています。新しい指針では、果汁は控えめにし、薄めて飲むことを明確に勧めています。果汁を果物に含めるかどうかは国によって扱いが分かれ、その理由の一つに果汁の糖分の多さがあります。

著者らは、果物と果汁の成分の違いにも注目しています。果汁にする過程で食物繊維の大部分が失われます。論文が示す例では、オレンジ1カップ分の食物繊維が3.6グラムなのに対し、オレンジ果汁1カップでは0.5グラムです。また、ポリフェノールと呼ばれる植物由来の成分の種類も、丸ごとの果物と果汁では異なるといいます。

果物をよく食べることと心血管疾患(心臓や血管の病気)のリスクが低いこととの関連は、すでによく知られています。一方で、果汁が丸ごとの果物と比べてどう関わるのかは、まだ十分に解明されていません。また、心血管疾患のある人とない人で、果物や果汁のとり方がどう違うのかも、あまり調べられてきませんでした。そこで研究チームは、心血管疾患やその危険因子の有無によって、丸ごとの果物と果汁100%ジュースをとる頻度が異なるかを調べました。

37万人あまりの回答を比較

研究チームが用いたのは、米国疾病対策センター(CDC)が実施する電話調査「行動危険因子監視システム(BRFSS)」の2019年データです。この調査は、施設に入所していない米国の成人を対象に、病気や生活習慣について尋ねるものです。2019年版には、血圧、コレステロール、果物と野菜の摂取に関する質問がそろっていました。

分析では、果物の摂取頻度のデータが欠けている人、極端に多い頻度を報告した人、妊娠中の人を除きました。その結果、37万1038人の回答が対象となりました。

比べたのは、本人が「ある」と答えた5つの項目です。心血管疾患の危険因子として高血圧と高コレステロールを、病気そのものとして心筋梗塞(心臓発作)、狭心症または冠動脈性心疾患、脳卒中を取り上げました。研究チームは、それぞれについて「ある」群と「ない」群で、丸ごとの果物と果汁を1日に何回とるかの平均を比べました。さらに、年齢層、人種・民族、学歴、所得、喫煙状況の影響を考慮した分析も行いました。

なお、この調査で分かるのは「1日に何回とるか」という頻度で、1回にどれだけの量をとったかは分かりません。

丸ごとの果物は一貫して少なく、果汁は項目によって異なる

対象者全体の平均は、丸ごとの果物が1日1.06回、果汁が1日0.30回でした。

丸ごとの果物を食べる頻度は、5項目のどれについても「ある」群のほうが低い結果でした。年齢や学歴、所得、喫煙状況などを考慮した後も、高血圧、高コレステロール、心筋梗塞、冠動脈性心疾患の4項目では、この差が残りました。脳卒中については、これらの要因を考慮すると明確な差は見られなくなりました。

果汁については、単純な比較では、高血圧、心筋梗塞、狭心症・冠動脈性心疾患、脳卒中のある群で飲む頻度が高めでした。一方、高コレステロールのある群では逆に低めでした。年齢などを考慮した後も差が残ったのは、高コレステロール(頻度が低い)と心筋梗塞(頻度が高い)の2項目だけでした。

研究チームは当初、心血管の状態が良くない人ほど果物は少なく、果汁は多いと予想していました。高コレステロールの群で果汁が少なかったことは、この予想に当てはまらない結果です。著者らは、診断を受けた人が食生活を変えた可能性や、他の要因が影響した可能性を挙げています。脳卒中で差が見えにくくなった点については、深刻な病気を経験した後に食習慣を改める人がいる可能性を指摘しています。

結果の読み方と意味

この研究は、ある時点の調査結果を比べた横断研究です。そのため、果物を食べないことが病気を招いたのか、病気になった後で食習慣が変わったのかといった因果関係は判断できません。また、データはすべて本人の申告に基づいています。食べた量は分からず、身体活動や体格、野菜や甘い飲み物の摂取といった要因も考慮されていません。著者らは、こうした点を限界として挙げています。

それでも、37万人を超える成人のデータから、高血圧や高コレステロール、心臓の病気がある人では、丸ごとの果物を食べる頻度が低いという傾向が示されました。この傾向は、年齢などを考慮した後も残りました。一方、果汁との関係は項目によってまちまちでした。果物と果汁を同じ「果物」として扱うだけでは見えにくい違いがあることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Brendan J Kesler(Department of Nutrition and Dietetics, University of North Dakota, Grand Forks, ND, United States)、Julie M Hess(United States Department of Agriculture, Agriculture Research Service, Grand Forks Human Nutrition Research Center, Grand Forks, ND, United States)、Anne Bodensteiner(Department of Nutrition and Dietetics, University of North Dakota, Grand Forks, ND, United States)、Daniel G Palmer(United States Department of Agriculture, Agriculture Research Service, Grand Forks Human Nutrition Research Center, Grand Forks, ND, United States; University of North Dakota, Grand Forks, ND, United States)、Desiree Tande(Department of Nutrition and Dietetics, University of North Dakota, Grand Forks, ND, United States)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Brendan J Kesler, Julie M Hess, Anne Bodensteiner, et al. Examining the Differences in Frequency of Whole Fruit or 100% Fruit Juice Intake among United States Adults With and Without Cardiovascular Disease Risk Factors: Analysis of 2019 Behavioral Risk Factor Surveillance System Data. Current Developments in Nutrition 2026-08-19. DOI: 10.1016/j.cdnut.2026.109517. 原著ライセンス:CC BY.