写真: Nesnad / Wikimedia Commons / CC BY 4.0
甘酒は、お正月の初詣や桃の節句など、多くの神事や祭りでふるまわれてきた飲み物です。江戸の町では、甘酒売りが「あまざけぇー」と声をかけながら売り歩く姿が、夏の風物詩になっていたそうです。いま店に並ぶ甘酒には、米麹から造るものと酒粕から造るものがあり、両方を使ったものもあります。2つは生まれも、甘さのもとも、アルコールの量も違います。
米麹の甘酒は、米が麹の働きで甘くなったもの
米麹の甘酒の甘さは、米から生まれます。米麹は、蒸した米に麹菌を育てたものです。麹菌(ニホンコウジカビ)は醤油や味噌、日本酒、みりんにも使われてきた菌で、日本醸造学会は「国菌」に定めています。甘酒は、ごはんと水に米麹を混ぜ、50〜60℃で半日から1日ほど温かく保って造ります。この間に、米麹の酵素が米のでんぷんをぶどう糖に、たんぱく質をアミノ酸に分けるので、砂糖を加えなくても甘さとうま味が出ます。米麹の甘酒はアルコールをほとんど含まず、子どもから高齢者まで楽しめる飲み物で、店には「アルコール分0.00%」と表示したものもあります。
米麹で造る甘い酒は、古くからあった
米麹で造る甘い酒の歴史は古く、『日本書紀』には、応神天皇に醴酒(こざけ)が献上されたという記載があります。この醴酒は、一夜酒、つまり甘酒であろうとされています。中世の京都では、北野天満宮に仕える神人(じんにん)たちの麹座(麹を造る人たちの組合)が、酒だけでなく醤油や味噌、甘酒を造る麹まで取り仕切っていたことが、多くの古文書に記されています。
酒粕と、酒どころの冬
酒粕は、日本酒のもろみを搾って、清酒と分けたあとに残るものです。江戸時代には、冬に酒を仕込む「寒造り」へ酒造りが集まっていったと考えられています。酒蔵は冬の農閑期や漁のできない時期に、農村や漁村から働き手を集め、これが杜氏の始まりにつながりました。兵庫県では、寒い内陸から酒どころへ働きに出た人たちが酒粕を土産に持ち帰り、山あいの村に粕汁が広まったと伝わります。粕汁は、お正月の締めくくりの1月20日「二十日正月」に食べる料理でもあります。
酒粕の甘酒は、砂糖で甘みをつけたもの
酒粕の甘酒は、細かくした酒粕を湯で溶かし、砂糖と塩で味を調えて作ります。甘さは、加えた砂糖の甘さです。酒粕は100gのうち8.2gがアルコールで、ビール(100gに3.7g)の2倍あまりにあたります。湯で薄めるぶん、飲むときのアルコールは酒粕そのものよりずっと少なくなりますが、酒粕の甘酒には微量のアルコールが含まれます。市販品には「アルコール分1%未満」と表示したものがあり、お酒に弱い人や子ども、妊娠・授乳中の人に注意を呼びかけている製造元もあります。
甘酒は、料理の甘みにもなる
米麹の甘酒は、飲むだけでなく、料理の甘みにも使われてきました。秋田県のなた漬けは、なたで乱切りにした大根を塩で下漬けし、砂糖と甘酒で漬ける漬物で、麹の自然な甘みが特徴です。厳しい寒さの時期に、普段のおかずやお茶うけとして食べられてきました。石川県のかぶらずしは、塩漬けしたかぶらにぶりを挟み、米麹で作った甘酒に漬けて発酵させたすしで、家庭では、にしんと大根を同じように漬ける「大根ずし」が広く作られています。家でも、甘酒を砂糖の代わりに料理やデザートに入れて使えます。
選ぶときは、原材料の並びを見る
どの甘酒かは、原材料の並びを見れば分かります。原材料は使った重さの多い順に書く決まりなので、米麹だけの甘酒は米麹や米から始まり、酒粕も砂糖も入っていません。酒粕の甘酒には酒粕と砂糖が入っていて、酒粕と米麹の両方を使ったものもあります。砂糖を加えていない米麹の甘酒にも、コップ1杯(200mL)で約158kcalと、ごはんの茶碗1杯(150g・約234kcal)の7割ほどのエネルギーがあります。
飲み比べて、場面で選ぶ
2つの違いは、飲み比べると確かめられます。米麹だけの甘酒と酒粕入りの甘酒を1本ずつ用意し、同じくらいに温めて並べると、甘さの違いと、酒粕のこくを続けて味わえます。子どもと一緒に飲むときや、お酒に弱い人が飲むときは米麹だけの甘酒を、酒粕のこくを楽しみたいときは酒粕入りの甘酒を選んでみては如何でしょうか。
※参考資料
以下の公開資料をもとにNutriMapが構成・執筆しました。
- 東京都多摩府中保健所「食べもの暦 12月号 甘酒」(令和3年12月)
- 国税庁「『日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り』調査報告」第2章 日本酒の歴史
- 農林水産省「うちの郷土料理」粕汁(兵庫県)
- 農林水産省「うちの郷土料理」なた漬け(秋田県)
- 農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」かぶらずし、大根ずし
- 農林水産省「甘酒と白酒の違いについて教えてください。」
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」第3章 し好飲料類の留意点(甘酒)
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」第3章 調味料及び香辛料類の留意点(酒かす)
- 森永製菓「米麹甘酒1000ml」商品情報(原材料・アルコール分の表示)
- 森永製菓「甘酒190g」商品情報
- 森永製菓「森永甘酒」よくある質問
- 大阪府「加工食品の表示:原材料名」
- 出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」:甘酒、酒かす、ビール(淡色)、こめ[水稲めし]精白米(うるち米)