この研究は、インドの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Archives of Current Research International
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何のための調査か
インドで栽培される香り米「バスマティ」には、育成年数の短い新しい品種が次々と登場しています。ただし、試験場でよい成績を示した技術が、実際の農家の圃場でも同じように働くかどうかは別の問題です。土壌や水の条件、気象、農家ごとの栽培の進め方が試験場とは異なるためです。
この研究の著者らは、生育期間の短いバスマティ品種「Pusa Basmati 1847」を中心にした技術パッケージを、農家の圃場で実際に試すことを目的としました。比較の相手は、農家がふだん行っている栽培、すなわち「Pusa Basmati 1509」という品種を使う従来のやり方です。
ここで用いられた「フロントライン実証(FLD)」とは、研究機関が推奨する技術を農家の圃場に持ち込み、農家自身が参加する形で成績を確かめる仕組みです。論文は、この枠組みが改良技術を農家の条件下で評価する機会になると述べています。
どのように調べたか
調査が行われたのは、インド・ウッタラーカンド州にある7か所の農業科学センター(Krishi Vigyan Kendra、略してKVK)の管轄地域で、2025年のカリフ期(モンスーン期の作季)が対象です。各KVKで5件ずつ実証が組まれ、合計35件の農家参加型の実証となりました。
著者らは、作物の生育に関する形質、籾(もみ)の収量と稲わらの収量、栽培にかかった費用、そして金銭的な収益をとりまとめました。統計的な検定によって差を判定するのではなく、数値をまとめて示す記述的な整理という方法がとられています。
報告された主な結果
7県分の集計として、Pusa Basmati 1847を用いた実証では籾の収量が平均41.3クインタル/ヘクタール、稲わらの収量が平均47.0クインタル/ヘクタールだったと報告されています。一方、Pusa Basmati 1509による従来の農家栽培の集計値は、それぞれ37.3と42.5クインタル/ヘクタールでした。なおクインタルは100キログラムを指す単位です。籾収量の差を割合で示すと、実証側が10.6%上回っていたと記されています。
収益の面では、実証の純収益が平均で1ヘクタールあたり57,808ルピー、費用に対する収益の比(便益費用比)が平均2.33でした。従来の農家栽培ではそれぞれ49,053ルピー、2.11と報告されています。
ただし著者らは、県ごとの籾収量が24.9から50.9クインタル/ヘクタールまで幅を持っていたことも示し、圃場での成績には地域による大きなばらつきがあると述べています。
さらに重要な注意点として、この実証はPusa Basmati 1847という品種と推奨される栽培方法を組み合わせたものであるため、比較が示しているのは技術パッケージ全体の評価であり、品種だけを切り離した効果ではないと論文は明記しています。
この報告が示すこと
著者らは、この結果が、ウッタラーカンド州の多様な生産環境のもとで、複数の作季にわたる対応づけられた圃場評価をさらに進めることを支持するものだと結論づけています。
品種と栽培方法をひとまとめにした技術が農家の圃場でどう働くか、そしてその働きが場所によってどれだけ違うか。この報告は、その両方を同時に記録した記述的な一歩として読むことができます。
著者:Kanchan Nainwal(GBPUA&T- Krishi Vigyan Kendra, Jeolikote, Nainital-263127 (Uttarakhand), India)、J. Kwatra(GBPUA&T- Krishi Vigyan Kendra, Jeolikote, Nainital-263127 (Uttarakhand), India)、Sanjay Kumar(GBPUA&T- Krishi Vigyan Kendra, Jeolikote, Nainital-263127 (Uttarakhand), India)、Purushottam Kumar(GBPUA&T- Krishi Vigyan Kendra, Jeolikote, Nainital-263127 (Uttarakhand), India)、A. Prabhakar(GBPUA&T- Krishi Vigyan Kendra, Jeolikote, Nainital-263127 (Uttarakhand), India)、Alankar Singh(GBPUA&T- Krishi Vigyan Kendra, Jeolikote, Nainital-263127 (Uttarakhand), India)、Avikal Kumar(GBPUA&T- Krishi Vigyan Kendra, Jeolikote, Nainital-263127 (Uttarakhand), India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kanchan Nainwal, J. Kwatra, Sanjay Kumar, et al. On-farm Performance of Pusa Basmati 1847 under Frontline Demonstrations Compared with Farmer Practice Using Pusa Basmati 1509 across Seven Districts of Uttarakhand. Archives of Current Research International 2026-09-21. DOI: 10.9734/acri/2026/v26i102177. 原著ライセンス:CC BY.