閉経を迎えた女性の体では、女性ホルモンの減少とともに体内の慢性炎症がゆるやかに高まりやすくなると言われています。この慢性炎症は、加齢に伴うさまざまな健康課題との関わりが指摘されてきたテーマですが、では日々の食事のパターンは炎症マーカーとどう関係しているのでしょうか。また、閉経を迎える時期の早さ・遅さと食事パターンには何か関連があるのでしょうか。今回紹介する研究は、アメリカで行われている大規模な社会調査「健康と退職に関する調査(Health and Retirement Study、HRS)」のデータを使い、この疑問に取り組んだものです。

研究チームは、HRSに参加した閉経後の女性1,426人分の食事データ(2013年の栄養調査による40の食品グループの摂取量)を用いて分析を行いました。まず主成分分析という統計手法により、自然に存在する食事パターンを3つ抽出しました。そのうえで、血液中のC反応性タンパク(CRP)、インターロイキン6(IL-6)、可溶性腫瘍壊死因子受容体1(sTNFR1)という3つの炎症マーカーを指標として、縮小ランク回帰という手法を用い、「炎症と関連しやすい食事パターン」を新たに導き出し、スコア化しました。

研究でわかったこと

この「炎症志向型食事パターン」は、加工肉・加糖飲料・精製穀物の摂取が多く、逆にナッツ類・魚介類・果物・野菜・全粒穀物の摂取が少ないという特徴を持つことが示されました。そして、このスコアが高い女性ほど、CRP・IL-6・sTNFR1という3つの炎症マーカーの値(対数変換後)がいずれも高い傾向にあることが、多変量線形回帰分析によって確認されたと報告されています。

さらに研究チームは、探索的な分析として、閉経を迎えた時期と食事スコアの関係も調べています。その結果、早発閉経や早期閉経(通常より早く閉経を迎えたケース)を経験した女性は、この炎症志向型食事スコアが高く、あわせてIL-6の値も高い傾向がみられたと報告されています。ただし、閉経のタイミングと炎症マーカーそのものとの関連については結果が一貫しておらず、また閉経の時期が「食事スコアと炎症マーカーの関係の強さ」自体を変えるという明確な証拠は見られなかったとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、ある一時点のデータをもとにした横断的な分析であり、食事パターンが炎症マーカーを引き起こす、あるいは早期閉経の原因になるという因果関係を証明するものではありません。論文の著者らも、閉経のタイミングと食事スコアに関する知見については、今後、時間の経過を追う縦断研究や、異なる集団を対象とした外部コホートでの検証がさらに必要であると述べています。あくまで一つの研究による関連の報告であり、結論が確定したものではない点に留意して読むとよいでしょう。

また、ここで示された「炎症志向型食事パターン」は特定の食品を名指しで良い・悪いと評価するものではなく、あくまで統計的に導き出された食品摂取の組み合わせのパターンです。個々の食品の効果を単独で保証するものではない点にも注意が必要です。

まとめ

今回紹介した研究では、閉経後の女性を対象に、加工肉や加糖飲料、精製穀物が多く、ナッツ・魚介・野菜・果物・全粒穀物が少ない食事パターンが、複数の炎症マーカーの高さと関連していることが示唆されました。また早期に閉経を迎えた女性でこの食事スコアが高い傾向も観察されたとされています。いずれも「関連が示唆された」段階の知見であり、今後さらなる研究による検証が待たれるところです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:閉経後女性における炎症志向型食事パターンと閉経時期:健康と退職に関する調査(HRS)からのエビデンス(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年08月)