著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリア、ポーランドです。
掲載誌:African Journal of Agricultural Science and Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
傷んだトマトを食べる習慣と研究の目的
トマトは成熟すると約94%が水分です。水分が多いため細菌やカビが増えやすく、保存中に傷みが進みやすい作物です。カビの中には、人や動物に有害な「マイコトキシン(カビ毒)」を作るものがあり、その代表がアフラトキシンです。
著者らによると、ナイジェリアでは傷んだトマトはヨルバ語で「エシャ」と呼ばれています。購入を控えるよう公衆衛生上の注意が出ていても、料理の習慣から、低所得世帯や屋台、裕福な家庭でも広く食べられています。加工がトマトの品質に与える影響は多く研究されてきました。一方で、腐りかけたトマトを加工した場合の影響については情報が限られていました。
そこで研究チームは、イバダン市内の市場で入手した傷んだトマトを対象に、すりつぶし、加熱、冷蔵といった加工でカビの量とアフラトキシンの量がどう変わるかを調べました。あわせて、市場ごとの違い、品種ごとの違い、自然に傷んだものと人為的に傷ませたものの違いも比較しています。
調べた方法
研究チームは、イバダン市内のボディジャ、オジョ、オジャ・オバの3市場から、現地で「ロイヤル」「シザーズ」と呼ばれる2品種のトマトを集めました。集めたのは新鮮なものと傷んだものです。新鮮なトマトの一部は滅菌した刃で傷をつけて4日間置き、人為的に腐らせた試料としました。
加工は次の4通りです。ミキサーですりつぶす方法、すりつぶした後に100℃で10分間加熱する方法、すりつぶした後に冷蔵する方法、生の試料をそのまま冷蔵する方法です。加工した試料は、加工しない試料と比べられました。そのうえで、試料から生えるカビを分離して種類を同定しました。さらに、4種類のアフラトキシン(B1、B2、G1、G2)の濃度を、クロマトグラフィーと呼ばれる成分分離の手法で測定しました。
主な結果
論文によると、3市場すべてで、加工した試料は加工しない試料に比べてカビの量が統計的に有意に少なくなりました。加工しない試料のカビの量は1グラムあたり0.25〜0.90 cfu(生きたカビの数の目安)でした。加工後は0.01〜0.30 cfuに下がったと報告されています。試した方法の中では、すりつぶして冷蔵した試料でカビの量が最も少なくなりました。
アフラトキシンについても、加工後に濃度が大きく下がったと報告されています。傷んだトマトからは4種類のアフラトキシンがいずれも検出されましたが、加工後には検出できない量になった例もありました。たとえばオジャ・オバ市場の自然に傷んだロイヤル種では、アフラトキシンB2が1キログラムあたり0.03マイクログラムから、加工方法に応じて0.01〜0.02マイクログラムに下がりました。ただし、減り方は加工方法によって一様ではなく、方法の間に統計的に有意な差がみられたとされています。
分離されたカビには、アスペルギルス・テレウスやアスペルギルス・フラバスなどのアスペルギルス属のほか、ペニシリウム属やフザリウム属などが含まれていました。市場別の総カビ量は、ボディジャ市場が最も多く、オジョ市場が最も少なかったと報告されています。また、ロイヤル種の多くの試料でアフラトキシン濃度が高い結果でした。著者らはこの点について、果実の構造や保存条件が関係している可能性を挙げています。
研究が示すこと
著者らは、傷んだトマトにどのような加工を施すかがカビとアフラトキシンの減少に大きく影響すると結論づけています。とくに有効だったのは、すりつぶした後の加熱や冷蔵でした。同時に著者らは、加工によって汚染は減っても完全にはなくならないと指摘しています。傷んだトマトを食べることには、依然として健康上のリスクが残ると強調しています。
この研究は、傷んだトマトが料理に使われることのある地域で、市場のトマトを使った実測データを示しました。そのデータからは、加工が汚染を減らす手段になりうる一方で、加工だけで安全になるわけではないことがうかがえます。
原著論文の著者・所属:Hannah Oluwatoyin Yakubu(University of Ibadan, Department of Botany, Ibadan, Nigeria)、Sarah Oluwaseun Julius(University of Ibadan, Department of Microbiology, Ibadan, Nigeria)、Jummai Adeola Amuzat(Federal University Oye-Ekiti, Food Science and Technology, Oye-Ekiti, Nigeria)、Richard Oyewale Oyetunji(Obafemi Awolowo University, Agricultural and Environmental Engineering, Ile-Ife, Nigeria)、Anthony Afolabi Toluwase(Obafemi Awolowo University, Agricultural and Environmental Engineering, Ile-Ife, Nigeria)、Tope Julius Ojo(Poznan University of Life Sciences, Food technology and human nutrition, Poznań, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hannah Oluwatoyin Yakubu, Sarah Oluwaseun Julius, Jummai Adeola Amuzat, et al. Effects of Processing on Fungal and Aflatoxin Contaminations in Rotting Solanum lycopersicum l. (Tomato) Varieties. African Journal of Agricultural Science and Food Research 2026-08-07. DOI: 10.62154/ajasfr.2026.023.01024. 原著ライセンス:CC BY.