お菓子やシリアルバーなどの甘い食品では、砂糖(スクロース)が味だけでなく、食感や保存性にも大きく関わっています。近年、健康志向の高まりから「砂糖を減らしつつ、おいしさや品質は保ちたい」というニーズが広がっており、その解決策の一つとして注目されているのが食物繊維の活用です。食物繊維を砂糖と組み合わせることで、砂糖の働きを補いながら使用量を減らせるのではないか、という発想です。しかし、加熱調理などの過程で食物繊維と砂糖がどのように相互作用し、性質を変化させるのかについては、これまで十分に解明されていませんでした。今回紹介する研究は、ナツメヤシ(デーツ)の種子から作られた粉末(食物繊維源)とスクロースを組み合わせた「複合体」に着目し、その構造や機能がどう変化するのかを詳しく調べたものです。

研究でわかったこと

研究チームは、ナツメヤシ種子粉末(DC)とスクロース(SU)を混ぜ合わせ、40℃と70℃という2つの温度条件で加熱処理を行い、ナツメヤシ種子粉末の配合割合を段階的に変えたサンプル(40℃条件でM1〜M5、70℃条件でN1〜N5)を作製しました。そのうえで、物理化学的な性質、熱的な性質、そして微細な構造の変化を分析しています。

まず、ナツメヤシ種子粉末を増やしていくと、吸湿性(空気中の水分を吸い込む性質)が低下することが報告されています。具体的には、40℃条件で25.89から18.50g/100gへ、70℃条件で19.54g/100gへと数値が下がりました。同様に、水への溶けやすさ(溶解度)も、71.80から40℃条件で30.84g/L、70℃条件で31.97g/Lへと低下したとされています。一方で、水を吸って保持する力(保水力)はこれとは逆に増加し、25.90%から40℃条件で66.20%、70℃条件で64.91%まで高まったことが示されています。これは、ナツメヤシ種子粉末に含まれる繊維質のネットワーク構造が水分を抱え込みやすくしているためと考えられています。

さらに、示差走査熱量測定(DSC)という熱の出入りを調べる分析では、スクロースが溶ける際の挙動(融解挙動)が変化し、融解に伴うエネルギー量(融解エンタルピー)が小さくなることが確認されました。これは、スクロースが本来もつ結晶構造が、ナツメヤシ種子粉末との相互作用によって乱されたことを示唆しているとされています。また、赤外分光法(FTIR)による分析でも、水酸基やカルボニル基といった分子構造に関わる振動パターンに変化がみられ、水素結合の組み替えが起きていることと矛盾しない結果が得られたと報告されています。加えて、電子顕微鏡(FE-SEM)による観察では、スクロースの結晶がナツメヤシ種子粉末由来の繊維質マトリックスの中に徐々に取り込まれていく様子が確認され、特に70℃で加熱した場合には、40℃の場合よりも両者がより緊密に結びついている様子が観察されたとされています。

これらの結果から研究チームは、穏やかな加熱によってスクロースとナツメヤシ種子粉末の間で構造的な再編成が起こり、水分管理のしやすさや物理化学的な安定性が向上した複合材料が生まれる可能性がある、と結論づけています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、実験室レベルでの物理化学的・構造的な分析にもとづくものであり、ナツメヤシ種子粉末とスクロースを組み合わせた複合材料そのものの性質を明らかにすることに主眼が置かれています。要旨の中では、こうした複合材料が「お菓子類、シリアルバー、フィリング(詰め物)など、砂糖を含む食品において、砂糖の一部置き換えや製品安定性の向上が求められる場面での応用が期待される」と述べられていますが、これは応用の可能性を示したものであり、実際の食品での風味・食感・受容性や、健康面への効果を検証したものではない点には注意が必要です。あくまで一つの基礎研究の成果であり、今後さらなる検証が積み重ねられていく性質のものと捉えるのがよいでしょう。

まとめ

今回紹介した研究では、ナツメヤシ種子粉末とスクロースを加熱しながら組み合わせることで、吸湿性や溶解性が下がる一方で保水力が高まり、さらに分子・微細構造レベルでも両者が相互作用し合っている様子が示されました。減糖食品の開発という観点から、食物繊維素材と砂糖の組み合わせ方を考えるうえで、興味深い知見を提供する研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:熱処理によるナツメヤシ種子粉末-スクロース複合体の熱的・構造的・機能的相互作用(インターナショナル・ジャーナル・オブ・フード・サイエンス・アンド・テクノロジー・2026年08月)