骨折などで入院した高齢の患者さんが、急性期病院を退院するときにどのような食事形態だったかは、その後の回復にどう関わってくるのでしょうか。飲み込みの力が落ちている人向けに調整された「嚥下調整食」、いわゆる「やわらか食」や「きざみ食」などを食べていた場合、リハビリテーションの経過に何か違いが見られるのか。この点に着目した研究が、韓国静脈経腸栄養学会誌に2026年07月に掲載予定です。今回はこの論文の内容を、要旨に基づいてわかりやすく紹介します。
どんな研究か
この研究は、日本の1つの医療機関で行われた後ろ向きコホート研究です。2019年1月から2024年4月までに回復期リハビリテーション病棟に入院した65歳以上の整形外科患者を対象としました。なお、のど(咽頭)や食道に嚥下障害があると診断されていた患者は対象から除外されています。
着目したのは、急性期病院を退院する時点で嚥下調整食を食べていたかどうかという点です。そのうえで、回復期リハビリテーション病棟を退院する際の運動機能を表す指標「運動FIM(Functional Independence Measure)スコア」との関連を調べました。分析では、年齢や入院時点の運動FIMスコア、認知機能の違いによる影響を考慮した統計手法(多変量線形回帰分析)が用いられています。また、リハビリ病棟に入院した時点での栄養状態の指標を、嚥下調整食を食べていたグループと通常食のグループとで比較したほか、急性期の入院中に食事形態が変更された理由についてもまとめられています。
研究でわかったこと
対象となった300名のうち、74名(24.7%)が急性期病院の退院時点で嚥下調整食を摂取していました。
回復期リハビリテーション病棟への入院時点で比較すると、嚥下調整食を摂取していたグループは、通常食のグループに比べて栄養状態や筋肉に関連する状態が悪い傾向にあったと報告されています。
そして、年齢や入院時の運動機能、認知機能の影響を調整したうえでの分析では、急性期退院時に嚥下調整食を摂取していたことは、回復期リハビリ病棟退院時の運動FIMスコアが3.41点低いことと関連していたとされています。
さらに、食事形態が変更された理由としては「義歯(入れ歯)の不適合」が最も多く、全体の33.8%を占めていました。一方で、理由が明確に記録されていなかったケースも27.0%あったことが示されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
著者らは、この結果について「嚥下調整食の摂取そのものが悪い結果をもたらす証拠ではなく、あくまで臨床上のリスクの目印として捉えるべきだ」と述べています。つまり、医学的な必要があって嚥下調整食が選択されている場合に、それを避けるべきだという結論ではない点に注意が必要です。むしろ、食事形態の変更が本当に必要かどうかを早期に見直したり、入れ歯の不具合のように改善可能な口腔の問題を是正したりすることが、リハビリケアの向上につながる可能性がある、という方向性が示唆されています。
この研究は日本国内の単一の医療機関を対象とした後ろ向きの観察研究であり、のどや食道に嚥下障害がある患者は除外されています。1つの研究で得られた結果であり、これだけで因果関係や普遍的な結論が確定したわけではない点には留意する必要があります。
まとめ
今回紹介した研究では、高齢の整形外科患者において、急性期病院退院時の嚥下調整食摂取が、その後の回復期リハビリ病棟退院時の日常生活動作の低さと関連していたことが報告されました。また、食事形態変更の理由として義歯の不適合が多く見られた一方、理由が不明なケースも一定数あったとされています。食事形態の変更が本当に適切かを定期的に見直すことや、口腔状態のケアが、今後のリハビリテーション医療において注目されるポイントの一つといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:急性期退院時の嚥下調整食摂取と回復期リハビリテーション病棟退院時の日常生活動作との関連:日本における単施設後ろ向きコホート研究(韓国静脈経腸栄養学会誌・2026年07月)