牛乳を使わないヨーグルト代替食品は、乳糖不耐症やミルクアレルギーを持つ人、ヴィーガンの人々にとって選択肢を広げるものとして注目されています。ただし植物性ミルクは牛乳に比べてたんぱく質などの栄養価が低くなりやすいという課題があります。今回、トルコのアタチュルク大学農学部食品工学科の研究者らが、オーツミルクから作ったヴィーガンヨーグルトに、ムング豆(Vigna radiata L.)や黒豆(Phaseolus vulgaris L.)から作ったたんぱく質単離物を加え、栄養面や機能面にどのような変化が生じるかを調べました。

オーツミルクに豆のたんぱく質を足すとどうなるか

研究チームは、オーツミルクにスターチ(0.05%)だけを加えた対照群に加え、ムング豆たんぱく質単離物(MBPI)または黒豆たんぱく質単離物(BBPI)をそれぞれ2%・4%の濃度で加えた計5種類の試料を用意しました。たんぱく質単離物はアルカリ抽出・等電点沈殿という方法で調製され、ケルダール法で測定した純度はムング豆由来が90.43%、黒豆由来が80.16%でした。各試料には市販のプロビオティクスヨーグルト種菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus acidophilus)を加え、pHが4.6になるまで発酵させたのち4℃で24時間保存して分析に用いています。

分析の結果、豆たんぱく質を加えた試料は対照群に比べて、乾物量(11.57〜14.14%)、たんぱく質量(2.92〜5.20%)、灰分(0.22〜0.32%)、pH(4.49〜4.59)のいずれもが高くなりました。全体としてはムング豆たんぱく質単離物(特に添加量4%のMBPI-4)のほうが、たんぱく質量や遊離アミノ酸量の増加に黒豆由来より強く寄与する傾向が見られた一方、乾物量や灰分については黒豆たんぱく質単離物(BBPI-4)のほうが高い値を示しました。研究チームは、この違いの一因として、オーツ由来のたんぱく質はリジンなどが比較的少ないのに対し、豆類のたんぱく質がそれを補う形で組み合わさった可能性を指摘しています。

発酵にかかわる乳酸菌の生菌数にも変化が見られ、S. thermophilusは5.79〜6.38 log cfu/g、L. delbrueckii subsp. bulgaricusは5.72〜6.43 log cfu/gの範囲でした。興味深いことに、たんぱく質単離物を2%加えた試料では菌の増殖が促進される傾向があった一方、4%まで濃度を上げると逆に増殖がやや抑えられる結果となりました。論文では、この理由としてアミノ酸組成の違いが菌の代謝に影響した可能性や、豆類に含まれるアントシアニンなどのポリフェノール成分が一定の抗菌的な作用を及ぼした可能性が考察されています。また、抗酸化力の指標であるDPPHラジカル消去活性(10.29〜19.93%)とABTSラジカル消去活性(14.66〜28.48%)も、豆たんぱく質の添加によって対照群より高くなりました。ただし論文は、この抗酸化力の向上が単純にたんぱく質量に比例するわけではなく、含まれるアミノ酸やペプチドの種類・配列によって左右されると述べています。

発酵で生まれた小さなペプチドの「潜在的な機能」をコンピューター上で予測

この研究のもう一つの柱は、発酵によって生じたペプチド(アミノ酸が数個つながった小さな断片)の分析です。質量分析(Q-TOF LC/MS)を使って調べたところ、対照群では62種類、ムング豆2%添加群では67種類、ムング豆4%添加群では81種類、黒豆2%添加群では33種類、黒豆4%添加群では57種類のペプチド(いずれもアミノ酸2〜4個からなる短いもの)が検出されました。

これらのペプチドについて、研究チームはBIOPEP-UWMという既知の生理活性ペプチドのデータベースと配列を照合し、抗酸化作用やACE阻害(血圧に関わる酵素の働きを抑える作用)、DPP-IVやDPP-III阻害(血糖調節などに関わる酵素の働きを抑える作用)といった活性を持つ可能性のある配列と一致するかどうかを調べました。その結果、GPRR、GSKC、ILDV、KAIT、PSVI、VVW、WGLといった配列がすべての試料に共通して見つかり、このうちGPRR、KAIT、VVW、WGLは抗酸化作用に関連する配列と一致しました。一方、IRF、IRI、LIWY、PVWW、RHYW、WTYはムング豆を加えた試料だけで、DAYCは黒豆を加えた試料だけで見つかっており、使う豆の種類によって発酵で生まれるペプチドの顔ぶれが変わることが示されました。

ただし著者ら自身が明確に断っている通り、これはあくまでデータベース上の配列一致に基づく「予測」であり、実際にそのペプチドが体内で抗酸化作用などを発揮することを実験で確かめたものではありません。論文では、この結果を実験で証明された生理活性ではなく、あくまで「作用の分子的な裏付けとなりうる可能性」として位置づけるべきだと述べています。また、赤外分光(FTIR)による構造解析では、豆たんぱく質を加えても新しい化学結合の種類(吸収帯)が生じることはなく、既存の吸収帯の強さが変化するにとどまったことも報告されています。

この研究を読むうえで押さえておきたいこと

この研究は、乾物量・たんぱく質量・pH・乳酸菌数・抗酸化力・アミノ酸プロファイルのいずれについても、豆たんぱく質単離物の種類が統計的に非常に有意な差(危険率1%未満)をもたらしたと報告しています。ただし実験は2回の繰り返し(n=2)で行われたものであり、ペプチドの機能予測もデータベース照合による推定にとどまる点には注意が必要です。研究チームも、短いペプチド配列は由来するたんぱく質の特定が難しいことや、BIOPEPデータベースの検索では信頼度のしきい値などを細かく設定できなかったことを限界として挙げています。

とはいえ、オーツミルクという植物性の土台に、ムング豆や黒豆といった豆類のたんぱく質を組み合わせることで、乳製品を摂れない人やヴィーガンの人々に向けた栄養価の高い代替ヨーグルトを作れる可能性を示した点は、今後の製品開発を考えるうえで参考になる知見といえそうです。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Murat Emre Terzioğlu, Elif Ekiz. Oat-Based Vegan Yogurt Alternatives Enriched with Mung Bean and Black Bean Protein Isolates: Nutritional and In Silico Potential Bioactive Peptide Estimation. フーズ (2026). DOI: 10.3390/foods15162825. 原著ライセンス: cc-by.