非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、食生活や代謝の状態と深く関わっていると考えられています。プロバイオティクスを含むヨーグルトは、肝機能に関わる指標や代謝パラメーターの改善と関連づけられてきたことから、機能性食品としての応用が期待される食品の一つです。今回紹介する研究では、抗酸化性を持つとされる植物由来成分を組み合わせた新しいヨーグルト「THISAME」が開発され、その受容性(おいしさや好ましさ)と栄養成分が調べられました。

使われた植物は、シリマリンという成分を含むことで知られるミルクシスル(Silybum marianum)と、タンジン(紅参、Salvia属)です。どちらも抗酸化性を持つ生理活性成分を含むとされ、機能性食品への応用が期待される素材として選ばれました。

研究の方法

研究チームは、完全無作為化デザインという実験手法を用い、3種類の配合(処方)を3回ずつ繰り返して作製しました。ヨーグルトは、牛乳とヨーグルト用スターター菌(Streptococcus thermophilusとLactobacillus bulgaricus)、ミルクシスル抽出物、タンジン抽出物を使って作られています。

3種類の処方は、ミルクシスルとタンジンの濃度がそれぞれ異なり、T1(ミルクシスル1.9%・タンジン1.0%)、T2(ミルクシスル2.3%・タンジン1.2%)、T3(ミルクシスル2.7%・タンジン1.4%)と設定されました。

官能評価には30名の半訓練パネリスト(ある程度訓練を受けた評価者)が参加し、色、香り、味、食感、総合的な好ましさの5項目を評価しました。得られたデータはフリードマン検定とウィルコクソンの符号順位検定という統計手法を用い、有意水準5%で解析されています。さらに、選ばれた処方については、栄養成分、pH、可溶性固形分、DPPH法という手法による抗酸化活性が調べられました。

わかったこと

色(p=0.007)、香り(p<0.001)、食感(p=0.009)、総合的な好ましさ(p<0.001)について、3つの処方の間に統計的に意味のある差が見られたと報告されています。中でもT2(ミルクシスル2.3%・タンジン1.2%)は総合的な好ましさが最も高く、パネリストの56.7%が「好き」または「とても好き」と評価したとされています。

選ばれたT2処方は、クリーム色がかった白色で、ハーブ特有の香りは目立たず、タンジンとシリマリンによるかすかな後味が感じられ、食感はやや濃厚でなめらかだったと記述されています。

実験室での分析では、たんぱく質2.02g、脂質3.20g、炭水化物19.30g(いずれも100gあたり)という組成が示され、pHは5.0、可溶性固形分は17°Brixだったとされています。また、DPPH法による分析では、溶液の色が紫色から黄色へと変化する様子が確認され、これはラジカル消去活性(抗酸化作用の一種)が存在することを示す定性的な証拠だと説明されています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

著者らは、今回の結果はシリマリンやフラボノイドの含有量そのものを数値として定量したものではなく、DPPH法による色の変化という定性的な証拠にとどまると述べています。そのため、今後はシリマリンやフラボノイドの濃度、抗酸化能力を定量的に測定し、実際の生体への作用(肝臓保護に関する具体的な効果など)を検証する研究が必要だとしており、現時点で肝臓保護などの具体的な健康効果を主張できる段階ではないと結論づけています。

まとめ

この研究では、ミルクシスルとタンジンを配合した機能性ヨーグルト「THISAME」が開発され、ミルクシスル2.3%・タンジン1.2%を含む処方が最も受容性の高い組み合わせだったと報告されています。栄養成分の分析や抗酸化活性の定性的な確認も行われましたが、著者ら自身が指摘するとおり、これは一つの研究段階の結果であり、健康効果を断定するものではありません。今後、成分の定量的な分析や生体への影響を調べる研究が続くことが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:機能性食品としての「THISAME」ヨーグルトの受容性とフラボノイド含量に対するミルクシスルとタンジンの添加効果(ゼノド(欧州原子核研究機構)・2026年08月)