著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
魚の加工で出る皮を活かせるか
ゼラチンは、動物の皮や骨に含まれるたんぱく質のコラーゲンを熱で変化させて得られる素材です。食品に加えて医療分野でも使われています。著者らによると、市場に出回るゼラチンの9割以上は豚や牛の皮・じん帯から作られています。ただ、哺乳類由来のゼラチンは宗教上の理由でハラールやコーシャの食品規定に合わない場合があります。牛海綿状脳症などへの懸念もあり、魚由来のゼラチンが注目されています。
一方、魚の加工では皮・骨・頭などの副産物が大量に出ます。その多くは価値の低い用途に回されるか、廃棄されています。論文によると、地中海で養殖が盛んなヨーロッパスズキでは、皮が加工廃棄物の最大3割を占めます。研究チームは、このスズキの皮からゼラチンを取り出し、性質を詳しく調べることを目的としました。さらに、そのゼラチンで食べられる包装用フィルムを作り、市販の牛皮ゼラチンや冷水魚の皮ゼラチンと直接比べました。
どのように調べたか
研究チームは、トルコ・アダナの市場で購入したスズキの皮を使いました。皮は35℃の水中でかき混ぜて洗う工程を、表面に油が見えなくなるまで繰り返し、脂を取り除きました。そのうえで既存の方法を改良してゼラチンを抽出しました。
比較対象には、市販の牛皮ゼラチンと冷水魚の皮ゼラチンを用いました。牛皮ゼラチンは強度の基準として、冷水魚ゼラチンは海産由来ゼラチンの基準として選ばれています。調べた項目は、成分組成、ゲルの強さ、固まる温度と溶ける温度、水や油を抱え込む力などです。ゼラチンから作ったフィルムについては、厚さ、引っ張ったときの強さ、赤外線を使った化学構造の分析、電子顕微鏡による表面と断面の観察などを行いました。
主な結果
スズキの皮から得られたゼラチンの収率は7.88%でした。論文は、これまで報告されたスズキやタイの皮からの収率より高いとしています。ゼラチンのたんぱく質含量は90.93%で、牛皮ゼラチン(90.41%)と同程度、冷水魚ゼラチン(89.31%)より高い値でした。水分は8.11%、脂質は0.13%と低く抑えられていました。赤外線分析では、たんぱく質の骨格に関わる部分の特徴が、市販の魚・牛のゼラチンとよく似ていました。
ゲルの強さは、市販の2種類より低い結果でした。固まり始める温度は18.02℃で、論文が海産ゼラチンの最適範囲とする11〜28℃に収まっていました。特に目立ったのは油を抱え込む力で、346.95%と比較した2種類をいずれも上回りました。著者らは、この性質が、ひき肉を使った加工食品で脂を減らしたり、肉汁の流出を防いだりする用途に役立つ可能性を示しています。
フィルムの厚さはいずれも約0.14ミリでした。これは、食べられる包装として業界で目安とされる0.25ミリ未満を満たしています。引っ張り強さは、スズキのゼラチンフィルムが6.53メガパスカルで、牛皮ゼラチンフィルムの8.77メガパスカルより低い値でした。ただし電子顕微鏡で観察すると、スズキのゼラチンフィルムは表面も断面も滑らかで均一で、目立つ欠陥は見られませんでした。また、水に溶けやすいことも報告されています。
研究が示すこと
この研究は、廃棄物と見なされがちなスズキの加工副産物が、成分や化学構造の面で市販品に近いゼラチンの原料になり得ることを示しました。ゲルの強さやフィルムの引っ張り強さでは牛皮ゼラチンに及ばない一方、油を抱え込む力やフィルムの均一さでは特徴的な性質が見られました。著者らは、魚由来のゼラチンが、環境負荷の軽減に加えて、ハラールやコーシャに対応しやすい牛由来資源の代替になり得ると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Mehmet Gokcin(Department of Seafood Processing Technology Faculty of Fisheries, Cukurova University Adana Turkey)、Yasemen Yanar(Department of Seafood Processing Technology Faculty of Fisheries, Cukurova University Adana Turkey)、Cigdem Dikel(Department of Biotechnology Cukurova University Adana Turkey)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mehmet Gokcin, Yasemen Yanar, Cigdem Dikel. Unlocking the Potential of Sea Bass Skin: Characterization of Gelatin and Edible Gelatin Films. Food Science & Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.1002/fsn3.72333. 原著ライセンス:CC BY.