この研究は、サウジアラビアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref
研究の目的
植物性の素材をプロバイオティクス(体によい働きが期待される生きた微生物)で発酵させたものには、細菌の増殖を抑える働きや腸の健康に関わる働きがあると報告されてきました。しかし研究チームは、ピーナッツの発酵と、そこから生まれるペプチド(タンパク質が分解されてできた短いアミノ酸のつながり)とプロバイオティクスの組み合わせ効果、消化を経ても残るかどうか、腸内細菌の構成をどう変えるかといった点について、数量的な関係がまだはっきりしていないと述べています。
そこで著者らは、乳酸菌の一種であるラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum ATCC 14917)でピーナッツバターを発酵させ、生理活性をもつペプチドの生産条件を調べることを目的としました。対象としたのは脂肪を減らしたタイプ(脂肪33%)と通常のタイプ(脂肪50%)の2種類のピーナッツバターで、発酵時間は0〜72時間の範囲で、要因を組み合わせて比較する実験計画(完全要因計画)を用いています。
調べ方と主な報告結果
研究チームは、発酵で得られたもののうち分子量3キロダルトン未満の小さなペプチド画分を取り出し、これをラクトバチルス・アシドフィルスとビフィドバクテリウム・ビフィダムという2種類のプロバイオティクスと、単独では菌の増殖を抑えきらない低い濃度で組み合わせました。この組み合わせが、食中毒などに関わるサルモネラ(Salmonella enterica serovar Typhimurium)、リステリア(Listeria monocytogenes)、クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)に対してどう働くかを、複数の試験法で評価しています。さらに、国際的に標準化された消化模擬手順(INFOGEST)で胃や小腸を通過する状況を再現し、健康な提供者3名の便を用いた大腸発酵の模擬実験で、腸内細菌の変化と短鎖脂肪酸(腸内細菌が食物繊維などを分解してつくる物質)の量を追跡しました。
報告された結果として、発酵72時間の時点で、脂肪を減らしたピーナッツバターは加水分解率61.3%、菌数9.45 log10 CFU/mLに達し、これは通常の脂肪量のものより16%高い値だったとされています。ペプチド5 mg/mLとプロバイオティクス4.5×10⁴ CFU/mLを組み合わせた処理では、リステリアに対する最小発育阻止濃度が75%下がって1.25 mg/mLとなり、相互作用の指標であるFIC指数は0.50で、単独の効果を足し合わせた以上の働き(相乗効果)を示したと報告されています。
消化を模した条件では、この組み合わせは細菌の生存率87.1%、ペプチドの残存率85.8%を保ったとされます。大腸発酵の模擬実験では、ビフィドバクテリウムが8.93 log10 CFU/mL、ラクチプランチバチルスが8.71 log10 CFU/mLまで増え、クロストリジウムは3.31 log10 CFU/mLまで下がり、両者の比(B/C比)は2.70に上昇しました。短鎖脂肪酸の総量は467%増えて46.5 μmol/mLに達したと報告されています。
この報告が示すこと
著者らは、脂肪を減らしたピーナッツをL. plantarumで発酵させると、プロバイオティクスと合わさって細菌の増殖を抑える相乗的な働きを示し、消化管を模した条件でも安定し、短鎖脂肪酸が増える方向に腸内細菌の構成が変わるペプチドが生まれると結論づけています。この結果は、ピーナッツを素材としたシンバイオティクス食品(有用な菌とその働きを助ける成分を組み合わせた食品)という考え方を支えるものだと述べられています。
ここで紹介したのは、この研究チームが実験室での試験と消化・大腸の模擬条件で観察した内容です。身近な食品素材の発酵条件を変えることが、そこから得られる成分の性質や腸内細菌への影響と結びついていることを、数値とともに示した報告といえます。
著者:Mansour Alblaji(Department of Basic Health Sciences, College of Applied Medical Sciences, Qassim University, Buraydah, Saudi Arabia)、Shaaban H. Moussa(Department of Biological Sciences, Faculty of Science and Humanities, Shaqra University, Ad-Dawadimi, Saudi Arabia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mansour Alblaji, Shaaban H. Moussa. Lactiplantibacillus plantarum peptides and probiotics from peanut butter enhance antimicrobial activity and gut microbiota modulation. Frontiers in Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.3389/fnut.2026.1927533. 原著ライセンス:CC BY.